2005年1月28日金曜日

スパニッシュ・コネクション

 私はどうも限定とか特別とかそういう文句に弱くて、それと同じくらいに一期一会に弱い。ついこの間、友人と一緒に大阪のジュンク堂いったときの話なのですが、突然背後から拍手が沸き起こったと思うと芳崎せいむさんのサイン会が始まりました。一期一会に弱い私です。もうなんだかわけもわからずうずうずして、ずっと参加したくて仕方ありませんでした。

だったら参加すりゃいいじゃんかという話もあるかも知れませんが、私芳崎せいむさんを知らないんですね。いや、金魚屋古書店は知ってますよ。行く本屋行く本屋で平積みになってて、その表紙がなんだかすごく魅力的じゃないですか。買おうかと思ったりして、けどなんでか買わなかった。とまあ、こんな具合ですから、のうのうとサイン会に参加して、お好きなキャラクター描きますよっていわれてさ、すんません読んだことないんですって謝ることを考えると、申し訳なくってどうにも参加できなかったんです。いや、本心ではちょっと残念なことしたなと思ってるんですよ。

スパニッシュ・コネクションとの出会いもそんな感じだったんですね。大阪のディスクピア(お初天神の向かいにあったやつ)にいったら、なんだか店の入り口がざわざわしてて、いつもは商品が並んでるところにスピーカーやらが並べられてて、いったいどうしたんだろう。見覚えのある店員さんがチラシを配っていて、もらってみればインストアライブというやつじゃないですか。ヴァイオリンとギター、タブラのトリオだということで、これはぜひ聴いておきたいなあと思ったのでした。

この、聴いておきたいというのが運の分かれ目、聴けばそれだけで済むはずがないのが私です。買っちゃいましたね、アルバム。サイン入りで、お名前はって聞かれて、いや名前はいいですと断ってしまった、妙に中途半端なサイン入りアルバムがあるのですよ。このときはまだギターを弾いていなくって、しかもフラメンコギターに興味を持つだなんて夢にも思わなかったのだから、これはもう不思議な縁というしかないでしょう。

フラメンコギターとタブラは基本的にバッキングをやっているのですが、時に前面に出てくるギターのひらめくような輝かしい音色、パッセージの妙味が印象深くて素敵です。私はジプシー・キングスとかが好きなので、もともとそういう受容体があったからだと思うのですが、ギターの魅力にやられっぱなしですよ。

それにタブラも面白いですね。これ、インドの太鼓なんですが、叩き方でいろんな色を使い分けることができるんですよ。ヨーロッパにはない表現だと思います。まるで話すみたいに、歌うみたいにしてリズムを引き締めましてね、だからこれを聴いて、これくらい小さなユニットでやるなら、ドラムセットみたいのはいらないと思いましたよ。ドラムセットに負けない、またラテンパーカッションとも違う独特の雰囲気を醸し出して、実にいいフュージョンの感じを作り上げています。

さて、メロディはヴァイオリンが受け持つことが多いのですが、このアルバムでのヴァイオリンはちょっと真面目にきっちり弾こうとしすぎているようで、拍節がそのまま勘定できそうな感じがするんです。クラシック育ちの端正な雰囲気とでもいったらいいんでしょうか、そこが私にはちょっと物足りないところだったりします。

けれど、サインを貰うとき、ちょっと話した感じでは、きっともっといろいろ出てくるものがあるはずという、そんな感じのする人だったんですね。多分、ライブとかだともっとずっと面白い演奏が期待できると思います。残念ながらその日のインストアライブでは、機器の不調があって、伸び伸びとした演奏にはなっていなかった。無理して鳴らそうとしている、そういう窮屈さが傍目にもわかったんですね。だから私はヴァイオリニストの真価を知らないままでいるんです。残念なことだと思います。

スパニッシュ・コネクションはその後も順調にアルバムをリリースしていますから、これ以外のものを聴いたら、きっともっといろいろな表情が見えるだろうと思います。数年越しの再開みたいな感じで聴いてみたら、きっとすごい変化があって面白いぞ、とちょっとわくわくしてしまいますね。

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