2005年3月4日金曜日

ニルスのふしぎな旅

 NHKで『ニルスのふしぎな旅』が始まったのは、私が小学校の一年生だった頃で、仲間内で大人気を博しました。クラスの名簿の一番が赤山というやつで、その名前からアッカ隊長とあだ名されていたのを思い出します。

アッカ隊長というのは、ニルスがガチョウのモルテンとともにお世話になった雁の群れのリーダーです。毅然とした態度で群れを率いる、生粋の姉御肌でした。恰好いいんですよ。もう、アッカ隊長がいれば物語がぐっとしまりますからね。常に冷静で、時に大胆な我らがキャプテン。あの厳しさを保ちつつも、落ち着いた穏やかな声が忘れられません。

『ニルスのふしぎな旅』は、小人の呪いで小さくされたいたずら好きの少年が、これまでずっといじめていたガチョウのモルテンと支え合い助け合いながら、信頼を築き、友情を育んでいくという感動のストーリーなのですよ。実は私には、あらすじを説明しながら感極まって泣くという特技があるのですが、ニルスもまさにそんな感じ。苦しくもまた楽しくもあった長い旅を終えたニルスが、再び家に帰ってきたときのあの光景、そしてそのふるまい。ああ、駄目だ、泣きそうだ。ニルスはアニメ史どころか、テレビ史に残る永遠の名作といって、私は恥じません。

脇役に、オーサとマッツという姉弟があるのですが、父親を探して旅する彼らの苦難に満ちた旅路もまた涙を誘います。ただ二人の姉弟が、助けあいながら、時にはニルスたちの影の助力も借りて、危機を乗り越える。そして彼らを待ち受けるひとつの結末。これは屈指の名シーンでした。それまでの描かれ方があまりに切なかった分、きっと見ていた皆は彼らの仕合せを祈ったことかと思います。

やっぱり駄目だ、泣きそうだ。

DVDは前後編それぞれが三万円ほどと高くて、残念ながら私には手が出るような値段ではありません。いや、価格相応の価値はある作品であることはわかっています。それでも、もっと安ければ私は欲しかったのに。もっと安ければ、きっと私は買ったろうにと、ちょっと悔しいのです。

一度、ゆっくり、一年くらいかけて見直してみたいなあ。

  • ラーゲルレーヴ・セルマ『ニルスのふしぎな旅』第1巻 香川鉄蔵,香川節訳 (偕成社文庫) 東京:偕成社,1982年。
  • ラーゲルレーヴ・セルマ『ニルスのふしぎな旅』第2巻 香川鉄蔵,香川節訳 (偕成社文庫) 東京:偕成社,1982年。
  • ラーゲルレーヴ・セルマ『ニルスのふしぎな旅』第3巻 香川鉄蔵,香川節訳 (偕成社文庫) 東京:偕成社,1982年。
  • ラーゲルレーヴ・セルマ『ニルスのふしぎな旅』第4巻 香川鉄蔵,香川節訳 (偕成社文庫) 東京:偕成社,1982年。
  • ラーゲルレーヴ・セルマ『ニルスのふしぎな旅』山室静,井江栄訳 (青い鳥文庫) 東京:講談社,1995年。

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