2005年3月13日日曜日

さおだけ屋はなぜ潰れないのか?

 タイトルが秀逸です。『さおだけ屋はなぜ潰れないのか?』。さおだけ屋というのは、さおやーさおだけー、十年前の価格で出ていますーとかいって軽トラで住宅地を回っている、皆さんもよくご存じのあのさおだけ売りのことです。確かに、あの値段じゃ売れてもどれくらいペイするもんだろうか、みたいに私も思っていました。人にあれはもうかるものなんって聞いてみたら、二本で千円っていってるけど実際にはもっと高く売りつける商売なんだよ。はあ、屋根の診断みたいなものかあって納得していたのですが、この本を読めば真相は違っていたんですね。

この本は、さおだけ屋を始めとして様々な謎の職業、謎の商売を取り上げては、見るからに流行っていない店の裏事情や、あるいは一見不条理に見えるからくりを解説してくれて、しかもそれがすごくわかりやすく面白いんですね。本屋で手に取って、軽く立ち読みで半分ほど読んだところで、この本は買っておかないと駄目だと思ってそのままレジにいったくらい。これは立ち読みじゃ駄目だ、買うべきだと思える本だったんですね。

私を捉えた言葉があったんですよ。私は実に小市民であるので、お金はチリも積もれば山となるというがごとくに、小銭を始末してお金を貯めようと思う性質であるんですが、それがですね、この本によるとチリが積もっても山にはならない。小銭を十円百円とけちるよりも、大きい買い物で一万二万を始末するほうが圧倒的に効果的。節約というものは割合パーセンテージで考えるんじゃなくて、具体的にいくら得しているかという絶対額で考えるべきだとゆわはる。

これを聞いて、ああほんまにそうじゃねえと、目からうろこが落ちました。ちんまい損得に一喜一憂するんじゃなくて、大きく節約すべきだとおおいに納得いったのですね。

この本のよいところというのは、なにをおいてもわかりやすいというところにつきます。至れり尽くせりなのですよ。本を読んで、重要なところに傍線を引っ張る人っていますよね(私は死んでもやりませんが)。この本は大変親切なことに、そういう大切な要点要所を最初から太字にしてくれていて、だからざっと目を通すだけでも大切なところは目に留まるようになっている、ざっくりと内容を把握するのがすごく楽なんです。

加えて、例の出し方、説明のかみ砕き方が絶妙です。例を例としてぼんっと投げるんじゃなくて、ちょっとずつ、まるで著者と読者が一緒に発見していくみたいにして、例の読み解きをしていきます。そうして仕組みを明らかにしてから、実は別のこういう商売も同じことをやってるんですよ、みたいに具体例を広げるんです。そうした説明の際に使われる言葉もすごく簡単で普段耳に馴染んだようなものが使われてる。さらには図や式、計算なんかも整理されてて見やすい。つまり、わかりやすい

こんな風に至れり尽くせりな本書は、さらに各章の最後にその章のまとめも用意していて、すごい。これは充分教科書にできるような内容を持ちながらも、読者の心をつかんでしまうエンターテイメント性にあふれる良書だと思いました。著者は公認会計士だそうですが、話を面白く膨らませる才能もある、実にマルチな才能ある人だと思いましたよ。

私はお金のことには結構無頓着に生きてきて、なんというか金のことをぐちゃぐちゃゆうのは恰好悪い。払わなあかんにゃったらバーンとォ!払ったらええねん、とか思っています。けど、そんな反面、普段はじっと我慢の子であった作戦をやっている。

先生、それではあかんのですね。全体的なお金の出入り(キャッシュフロー)を把握して、会計の大局をつかんでおくべきなのだと、私、この本を読んで反省しました。

引用

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