2005年4月13日水曜日

スプリガン

  桜のよい季節がやってきましたので、ちょいと桜にまつわるタイトルを取り上げたいと思います。というわけで『スプリガン』。世界各地に眠る古代遺跡を守る特殊エージェント、スプリガンの活躍を描く冒険活劇で、私が『ARMS』面白いねっていったら、『スプリガン』もおすすめですよ! って貸してもらえたのでした。

面白かったかって? ええ、もう抜群に面白かったですよ。『ARMS』ほど重いテーマは扱わないので、楽しんで読めます。人はやっぱりいっぱい死んだりしますが、それでも『ARMS』みたいな救われない感じはありません。安心して読めるよい漫画でありましたよ。

今回の目録を作成するために調べてみて知ったのですが、めちゃくちゃ種類が多いですね。一番最初に刊行された大判コミックに、愛蔵版といっていいのでしょうか、A5版のコミック。コンビニ展開されたと思しいシリーズ、そして現在刊行中のMy First WIDEとかいうやつ。うーむ、なんというべきなんでしょうか。それだけ人気があるとして喜んでよいのか、それとも小学館やりすぎとつっこんでみるところなのか。正直、少々迷うところです。

私が持ってるのは、愛蔵版みたいにしてリリースされたA5版のShonen sunday booksなのですが、今から買うのならこれがいいんじゃないかと思います。第一巻には第0話とでもいったらいいのか、主人公御神苗優の日本における初ミッション話が収録されていて、これって書き下ろしなんでしょうかね。それでもって、最終第八巻には連載終了後に二号連続読み切り(変な表現?)で発表された御神苗優のその後話が収録されています。

けれど、それを差し置いてもおすすめできる理由がありまして、それは紙がいいんです。白色度が高く、全然日に焼けない。これは大変なことですよ。最近の漫画は紙でコストを落としているのか、気がつくと茶色く焼けて、日陰に置くよう心がけてもそれでも焼けて、がっかりすることが多いんですが、このシリーズに関してはそれがない。ええ、長年手元に置きたい人は、ちょっとくらい高くっても、この版を揃えることをおすすめします。

私がこの漫画を好きなのは、主人公御神苗が秘密のヒーローをやってるところに魅かれてのことなんですね。世界に名を知られる凄腕エージェントでありながらも、普段はそんな顔を隠してましてね、普通の高校生をやっていたりするんです。そのギャップ、そして事件に関わった人間だけが御神苗の正体を知っているというその秘密の共有感がたまりませんでした。

あの御神苗優が実は! というのは第一話の山菱理恵教授(私にとっての主たるヒロインですな)話からありましたが、その感覚が加速するのは第二話の初穂・香穂姉妹編からですね。普段のおちゃらけた学生としての御神苗しか知らなかった二人が、御神苗の真実の顔をかいま見るわけです。駄目だとばかり思ってたこの人が! というしてやったり感。そして御神苗の心からの願いを知ったふたりが、御神苗を支えるよき理解者になっていくというプロセス。ええ、この話は、『スプリガン』というシリーズを通して理解するには欠かせない話であります。この話があってはじめて、超人御神苗優の大切にする世界と、それをともに守ろうとする人の思いが鮮烈に表れるのではないかと私は思っているのですから。

私が一番好きな話は、御神苗が修学旅行で京都に来るという真田柊編。一般には「修学旅行」というタイトルで知られています。

この話は前後編と短く、また敵もあんまり巨大ではなく、伴って壮大さも期待できないという、どちらかといえば箸休めみたいな趣がある小編なのですが、ですがその小編がすごくぐっとくるんですね。

他の、国家レベルでの遺跡争奪戦に巻き込まれたり、巨大軍需産業との対決があったりする話とは違う、また違う彩りが嬉しいんです。修学旅行中に起こる事件だから、出て来る人たちというのは御神苗のクラスメートというわけで、御神苗が秘密にしていることがばれそうになる。それどころか、御神苗の日常が脅かされてしまう。そこで御神苗が陰に回って活躍するという秘密のヒーロー的性質が表れてくるんですが、私がこの話を好きという理由はこれだけではありません。私がこの話を特に好きというのは — 、御神苗のささやかな願いというのが一番よく出ているから、御神苗に近くある人たちが御神苗をどれほど大切に思っているかというのがよくわかるから、なんですね。ええ、すごくいい話ですよ。読むと、私、泣けてきます。

しかしこんだけしゃべって、染井芳乃に一言も触れてないとはどういう料簡でしょうか。

染井芳乃、もちろん大好きですよ。無茶をする強いヒロインは大好物です。

  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第1巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1991年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第2巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1991年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第3巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1992年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第4巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1993年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第5巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1993年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第6巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1994年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第7巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1994年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第8巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1995年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第9巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1995年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第10巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1996年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第11巻 (少年サンデーコミックススペシャル) 東京:小学館,1996年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第1巻 (Shonen sunday books) 東京:小学館,2001年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第2巻 (Shonen sunday books) 東京:小学館,2001年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第3巻 (Shonen sunday books) 東京:小学館,2001年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第4巻 (Shonen sunday books) 東京:小学館,2001年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第5巻 (Shonen sunday books) 東京:小学館,2001年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第6巻 (Shonen sunday books) 東京:小学館,2002年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第7巻 (Shonen sunday books) 東京:小学館,2002年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第8巻 (Shonen sunday books) 東京:小学館,2002年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第1巻 (My First WIDE) 東京:小学館,2005年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第2巻 (My First WIDE) 東京:小学館,2005年。
  • たかしげ宙,皆川亮二『スプリガン』第3巻 (My First WIDE) 東京:小学館,2005年。
  • 以下続刊

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