2005年6月1日水曜日

A Night with Strings Vol. 2

 日本にもよいジャズプレイヤーはたくさんいるのですが、中でも私が好きな人といえば、サクソフォンプレイヤーの渡辺貞夫氏。艶のあるトーン、演奏は実に軽やかであるというのに、その土台はどっしりとして揺るぎがありません。聴いていて不安に感じることなんてまったくないから、リラックスしてゆったり聴いていられるのです。

『A Night with Strings』は、そんな氏のクリスマスライブアルバム、Vol. 3まででています。私が持っているのはVol. 2なのですが、弦楽が加わった豪華でシックなステージは、すごく大人びてリッチ。ライブアルバムとは思えない完成度の高さにも驚かされます。

(画像は『A Night with Strings』)

1993年の『A Night with Strings』は、ブラジルのナンバーを中心に構成されていて、楽曲のクレジットを見ればアントニオ・カルロス・ジョビンやジルベルト・ジルといった、ラテンミュージックのビッグネームがぞろぞろと並んでいて壮観です。しかし、ラテンミュージックというのは、そのリズムの多彩さ、独特の高揚を見せながらも、すごくおしゃれな響きがあって素敵ですね。こうしたラテンナンバーの軽やかであだっぽいという特性はもちろんこのアルバムにおいても発揮されていて、けれどどこまでも洒脱でゴージャスというのは編曲の妙もあるのでしょう。やっぱり弦が加わると、特別な感じがします。あの静かに湧き上がってくるような響き、ハーモニーの広がりは、他では得られない弦独自の世界であります。

ですが、やはりこのアルバムは渡辺貞夫率いるプレイヤーの世界でしょう。皆、素晴らしくうまい。本当にこれがライブ盤なのかと思ってしまうほどに完成された演奏で、音楽の求めるところを知った人間が、そのなすべきことをきっちりと果たしています。そして、完成度が高いということは、膠着しているということとはまったく違うということがわかる。アルバムからはライブらしい高まりも感じられて、なんと豊かなんだろうかと嘆息します。技量の高さ、音楽性の高さを頼みに、弦楽を背負ってともに舞い上がる確かさと強さ。

— 私が、音楽ってよいよなあと思うのは、こんな瞬間です。

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