2005年9月2日金曜日

恐竜のひみつ

 科学というものは着々と進歩して、私が子供の頃には常識として理解されていたものが、今では誤りとされることもしばしば。こうした変化を実感するのは、私の場合でいえば、恐竜に関することでしょうか。私が子供だった時分の恐竜は、ゴジラよろしく直立姿勢でもって尾を引きずり引きずり歩く鈍重な爬虫類どもという描写が普通だったのですが、『ジュラシックパーク』そして『恐竜惑星』を経験した私たちは、もはや恐竜たちをそのようにはとらえなくなりました。今私たちが恐竜に持つイメージといえば、さながらエメリッヒの『ゴジラ』のようです。

イグアノドンの親指は、かつて鼻の先についた角として復元されたという逸話がありますが、私の恐竜に関する知識の今昔は、イグアノドンの親指を彷彿とさせるほどに違っていて、私はここにある種の感慨を感じないではいられません。

と、このように恐竜に関する常識が様変わりして、『恐竜のひみつ』も大幅に書き換えられてしまいました。この新たな版には、私が愛したエースマンの居場所はもはやなく、こうしたところにも時代の移り変わりを感じないではおられないのが私です。

知識が変わったんだ、版改訂も仕方がない、当然のことだと私も頭では理解しながら、けれど一抹のさみしさも感じて、こういう人はきっとたくさんいるのではないかと思います。

『恐竜のひみつ』は、漫画の部分も思い出深く、私はそれこそ何度も読み返し、各ページ柱の豆知識まで網羅するほどに読み込んで、そして最後には色刷りの恐竜図鑑のページを眺めてうっとりするのが常で、あの濃密な総天然色的イラストレーションは、子供心に恐竜の存在感をひしひしと刷り込むのに充分でした。もちろん最近の研究が反映された今のスマートな恐竜像も格好よくて素敵なのですが、昔のあの泥臭く鈍重でそしておどろおどろしささえ漂わせた恐竜の存在を忘れることはできなさそうです。

そういや、変わったといえば、ブロントサウルスもそうですね。ブロントサウルスという種が消えて、アパトサウルスに統一されたのは1903年のこと。ですが私が子供だった頃は、まだブロントサウルスの方がとおりがよかった。

ですが、今はアパトサウルスの方がずっと一般的なんですから、時代の変遷はこんなところからも感じられます。

  • 川崎てつお『恐竜のひみつ』(学研まんがひみつシリーズ) 東京:学習研究社,1972年。
  • たかや健二『恐竜のひみつ』(学研まんがひみつシリーズ) 東京:学習研究社,1972年;新訂版:1993年。

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