2006年1月16日月曜日

正法眼蔵

   旅に出ていました。行き先は福井県。温泉がメインの旅行でしたが、東尋坊にも寄り、そして曹洞宗大本山である永平寺にも詣でました。永平寺については私はまったくといっていいほど知らず、禅宗で有名な寺だと聞いて、それでもピンとこなかったのですが、寺内に展示された木版の古本を見てようやく思い出しました。その本というのは『正法眼蔵』。私は読んだことはないのですが、かつて図書館にて整理の仕事をしていたときに、私の前をこの本が流れていたのははっきりと記憶に残っていて、著者は道元。日本曹洞宗の開祖であります。

残念ながら私はこの本を読んでいません。図書館の整理の業務においては、本の内容を知るのも仕事のうちですから、ざっと目を通して、拾い読みして、私とこの本のつきあいとはその程度のものでしかないのですね。ですが、おそらく『正法眼蔵』をルーツとした考え方には触れていて、少なからず影響されていると、永平寺を詣でてみて思ったのでした。参詣者に向けて展示されるパネルやなにかを見れば、その考えは私にとって新しいものではなく、かつて幾度も聞いたことのあるようなもので、それはやはり聞いたのでしょう。法話によってなのか、本によってなのか。いずれにせよ、『正法眼蔵』の考え方は、知らず私の生活にも流れているのだなと思ったのでした。

例えばですね、私がよくいう、なにをするかではなく、いかにおこなうかが重要なのだというのがそうでして、いずれすべて失うということや、足ることを知ることの大切さ、そして知るとわかるは違うということ、これらもすべて道元禅師の言葉に見えるのですね。上に挙げたようなことはいずれ私一人の頭から出たものではなく、過去からの流れの中で、私のうちに残ったもので、そのように考えれば、私の考えにはどれほど禅の影響があるのか。私という人間にとって、禅的な考え方というのは知らず重要なものになっているのです。

私はこれまで『正法眼蔵』をただタイトルで覚えていた程度でしたが、これをすべて読み通してみれば、なにかまた知れることもあるかも知れないと思います。それでもって実践する。そうした行為のうちにはじめてわかるがあるのでしょう。

私は私の生きている間にどれだけのことをわかることができるでしょう。途方もないことのように思えますが、わかろうということをあきらめてしまえばそれは生きるということをあきらめるのと同じなのではないかと思うのです。だから、私はいつかこの本を読み、わかるための行為をはじめることができればよいなと思っています。

  • 道元『現代文訳 正法眼蔵』第1巻 石井恭二訳 (河出文庫) 東京:河出書房新社,2004年。
  • 道元『現代文訳 正法眼蔵』第2巻 石井恭二訳 (河出文庫) 東京:河出書房新社,2004年。
  • 道元『現代文訳 正法眼蔵』第3巻 石井恭二訳 (河出文庫) 東京:河出書房新社,2004年。
  • 道元『現代文訳 正法眼蔵』第4巻 石井恭二訳 (河出文庫) 東京:河出書房新社,2004年。
  • 道元『現代文訳 正法眼蔵』第5巻 石井恭二訳 (河出文庫) 東京:河出書房新社,2000年。
  • 道元『正法眼蔵』第1巻 増谷文雄訳 (講談社学術文庫) 東京:講談社,2004年。
  • 道元『正法眼蔵』第2巻 増谷文雄訳 (講談社学術文庫) 東京:講談社,2004年。
  • 道元『正法眼蔵』第3巻 増谷文雄訳 (講談社学術文庫) 東京:講談社,2004年。
  • 道元『正法眼蔵』第4巻 増谷文雄訳 (講談社学術文庫) 東京:講談社,2004年。
  • 道元『正法眼蔵』第5巻 増谷文雄訳 (講談社学術文庫) 東京:講談社,2005年。
  • 道元『正法眼蔵』第6巻 増谷文雄訳 (講談社学術文庫) 東京:講談社,2005年。
  • 道元『正法眼蔵』第7巻 増谷文雄訳 (講談社学術文庫) 東京:講談社,2005年。
  • 道元『正法眼蔵』第8巻 増谷文雄訳 (講談社学術文庫) 東京:講談社,2005年。
  • 道元『正法眼蔵』第1巻 水野弥穂子訳 (岩波文庫) 東京:岩波書店,1990年。
  • 道元『正法眼蔵』第2巻 水野弥穂子訳 (岩波文庫) 東京:岩波書店,1990年。
  • 道元『正法眼蔵』第3巻 水野弥穂子訳 (岩波文庫) 東京:岩波書店,1991年。
  • 道元『正法眼蔵』第4巻 水野弥穂子訳 (岩波文庫) 東京:岩波書店,1993年。
  • 道元『正法眼蔵』第1巻 水野弥穂子訳 (ワイド版岩波文庫) 東京:岩波書店,1993年。
  • 道元『正法眼蔵』第2巻 水野弥穂子訳 (ワイド版岩波文庫) 東京:岩波書店,1993年。
  • 道元『正法眼蔵』第3巻 水野弥穂子訳 (ワイド版岩波文庫) 東京:岩波書店,1993年。
  • 道元『正法眼蔵』第4巻 水野弥穂子訳 (ワイド版岩波文庫) 東京:岩波書店,1993年。
  • 道元『正法眼蔵』上 衛藤即応校注 (名著/古典籍文庫 — 岩波文庫復刻版) 東京:2005年。
  • 道元『正法眼蔵』中 衛藤即応校注 (名著/古典籍文庫 — 岩波文庫復刻版) 東京:2005年。
  • 道元『正法眼蔵』下 衛藤即応校注 (名著/古典籍文庫 — 岩波文庫復刻版) 東京:2005年。
  • 道元『正法眼蔵』第1巻 石井恭二訳 東京:河出書房新社,1996年。
  • 道元『正法眼蔵』第2巻 石井恭二訳 東京:河出書房新社,1996年。
  • 道元『正法眼蔵』第3巻 石井恭二訳 東京:河出書房新社,1996年。
  • 道元『正法眼蔵』第4巻 石井恭二訳 東京:河出書房新社,1996年。
  • 道元『正法眼蔵』別巻 石井恭二訳 東京:河出書房新社,1998年。

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