2006年4月18日火曜日

うちの大家族

  なんかここのところ重野なおきづいているといいますか、『Good Morning ティーチャー』がいいといっていたら今度は『うちの大家族』ですよ。そう、私はこれまで何度もいってきたように重野なおきの漫画が好きで、そしてたくさんの重野漫画のなかでどれが好きかといわれたら『うちの大家族』を外すことはできません。重野なおきの静と動、静が『ひまじん』なら動は『うちの大家族』。内野家せましと個性豊かな姉弟たちが生き生き暮らすその様がすごく楽しく感じられるのは、まさに彼らが千葉のどこかに生きて生活していると思えるほどに存在感をあふれさせているからなのでしょうか。

第三巻の主役は次男の大吾なんじゃないかと思います。大吾というのは、表紙にもでている坊主頭の少年で高校球児。野球に打ち込み、練習に労をいとうことのないストイックな一面も見せる好青年であった彼なのに、いつの間にか末の妹リンの見ているアニメ『魔女っ娘めもりん』にはまってしまって……。重野の漫画においては、男は総じて報われない傾向にあるのですが、それにしても大吾に関してはあんまりだ! とはいって見せていますが、だんだんと深みにはまっていく少年の姿を見る私の視線はきっと他の誰に向けられるものよりもあたたかであるのではないかと思っています。家族(特に長女愛子)から、そして読者からもその将来の向かう先を案じられている大吾ですが、けれどそんな彼が仕合せになってくれると嬉しいなと思っている読者はきっと多いだろうと思うのです。なにを隠そう私もそうした読者のひとりでありまして、ああ大吾が報われる日がきてくれたらなあ、そんなことを思わないではいられないのです。

けど、大吾みたいな人っているよね。隠れおたくといったらいいのか、アニメやら漫画やらにはまってるんだけど、それをどうしてもカムアウトできなくってさ、ひた隠しにして、なんの気もないそぶりをしてみせてって、こうした覚えのある人間はきっと『うちの大家族』の読者にも多いんじゃないだろうかと思って、そして私もそうしたひとりであって、だからそうした人からしたら大吾は他人事じゃない。ただ、歩んできた道が少し違うだけなんだ。うん、少しね。実際のところ、私と彼にはそんなに違うところはないと思う。

そんな報われない大吾でありますが、実際報われないのは本当で、第2巻でさ、私を号泣させた長男音也メインの回なんかでは、音也は格好良かったと思うんですよ。ところが、待望の第3巻、大吾メインの回において、やっぱり彼には花がないんだ。なんかぱっとしなくってさ、格好良さよりも人のよさばかりが表に出ちゃってさ、格好良かったのって結局次女のキリカじゃんかよ(私はキリカのファンだから、これはこれで嬉しい)。でも、こういうぱっとしないところが大吾の愛されるゆえんなのかも知れないなあとも思って、だからいつか大吾に一発奇跡の大逆転が訪れてくれたらよいなあなんて思うのです。本気です。

  • 重野なおき『うちの大家族』第1巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2004年。
  • 重野なおき『うちの大家族』第2巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2005年。
  • 重野なおき『うちの大家族』第3巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2006年。
  • 以下続刊

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