2006年10月1日日曜日

スズナリ!

 単行本を買って驚きました。いや、本当、こんなに面白い漫画だとは思っていなかったのです。もちろん私は雑誌掲載時から読んではいたのですが、この認識の誤りは一体どうしたことでしょう。これは、きっと、私が四コマ誌に疲れていた時期にはじまったんだ。目まぐるしく連載陣の入れ替わりがおこなわれた頃、せっかく面白くなってきたと思ったところで打ち切り? というような終わりかた、そして新連載。げんなり。はあ、こんどは猫耳美少女ですか。おたくまっしぐらですね。だなんて思っていたに違いがありません。で、こんなにも不満たらたらなあんたがなんで単行本買ってるの? といわれたら、だって割りと漫画が面白かったんですもの。ところが単行本で読んでみれば、私の思っていた以上に面白くて驚いた、とそういうわけなのです。

漫画としてはオーソドックスなスタイルです。ヒロインが常識人、まわりにはどこか常識からずれた人が集まって、掲載誌がマニア向けですから、おのずとマニア好みの常識外れが出てくるわけなのですが、こうした人たちがヒロインを振り回すわけなんですね(ヒロインが周囲につっこみ入れまくると言い換えてもいいかも知れない)。こうした基本形に加えられたこの漫画固有のものはといえば、突如現れた猫耳の妹でしょう。いや、猫耳が独特なんじゃなくて、この妹がとにかくおねいちゃん大好きとくる、そのべたべたぶりが独特なんです。最初はなんだかなあ、べただなあ、なんて思っていた私ですが、高村姉が高村妹のべったりを受け入れる頃には、なんだかその雰囲気空気もいいもんだなあと思うようになっていて、割合に面白いなあなんて思うようになっていたのです。

ところが、単行本になるとより以上に面白かったのです。これ、きっと、他に似たような傾向の漫画がある中に埋もれているときには気付かなかったような要素が濃厚に出てきたからなんじゃないかと思います。特に私には、あの教師のインパクトがよかった。他にも委員長や友人夏実もいい味出していて、とにかくみんな自分の興味や欲望にまっすぐで、わがままといえばわがままなんだけど、いやな感じのわがままじゃないのがいいんですよね。いい具合に棲み分けができていて、なんだかみんなさっぱりとしたいいやつばかりだぞ。てなわけで、こういう人間関係って結構理想的だよななんて思ったりしながら読んでしまいました。面白いだけじゃなくて、なんか落ち着ける感じといったらいいんでしょうか。いや、本当に悪くない感じなんです。

そんなわけで、単行本を買って以来、すっかりお気に入りの漫画になってしまいました。次号からはきっと、他に埋もれることのない、特別なタイトルになることだろうと思います。

  • 石見翔子『スズナリ!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 以下続刊

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