2007年2月1日木曜日

となりの801ちゃん

 地上三十階の書店にて、えらくプッシュされているのを見たのはもうずいぶん前のことでした。『となりの801ちゃん』というタイトル、またあおりその他から察するに、おたく少女、腐女子と呼ばれるような人たちを扱った漫画なんだろうと思われたのですが、正直なところ申しますと、このところその手の漫画やらなんやら、ちょっと出過ぎで食傷気味。そんな具合だから、興味ひかれつつもぐっと我慢したんです。ところがこの本なんだかあちこちで評判のようで、新聞かなんかに書評のってなかったっけ? あれ? 無料で配ってる雑誌だったかな? まあ、なんだかちょっとした話題書であるのは間違いないようで、そして今日、ちょいと所用で立ち寄った地上三十階書店にて購入。なんというか、今日は興味を抑えられない日であった模様です。

読んでみての感想。基本は四コマ漫画なんですが、いつも読んでいる類いとは違って、一ページに一本という贅沢仕様。そのため、驚くほどすらすらと読むことができて、ちょっと物足りなさを感じるのは正直しかたのないことでしょう。けれど、おたく系知識に作者視点の解説が付されていたりして、読ませる工夫、楽しませようという工夫がたくさんあるから、内容が薄すぎるというような感じはありません。むしろ、もっと読めたらきっと嬉しいなあと思う、そういう感じの物足りなさなんだと思います。

さて、801ちゃんというのはなにかといいますと、京都の商店街のマスコットキャラクターなんですってね。私はまったく知らなかったのですが、商店街のマスコットというにはあまりにまがまがしいというか毒々しいというか、ええと、カフカの小説で主人公が変身したのってこういうのんじゃないのかなあと思うようなそういうデザインが秀逸なキャラクターでして、なんかネットで話題になったそうですよ。で、そのお祭り騒ぎのなか生まれたたくさんの創作物のひとつが『となりの801ちゃん』であるとのこと。この奇怪にしてインパクトのある801ちゃんを、自分の彼女の内面にうごめくやおい少女に重ね合わせて表現したという、そのクロスオーバーの妙。確かに、漫画アニメゲームのみならず生身の少年たちを見て萌えてもだえているような人を見れば、その内面に一般の理解を越えた異形がひそんでいるのではないかと感じる人があっても、あながちおかしくないかもなあ、そんな風に思わせてくれた本でありました。

でも、まあ私をよく知っている人には周知のことなんですが、私はそうした異形として表現されてしまうようなおたく少女が好きなんです。即売会会場にて、自分のブースに戻る途中、まるでレーダーでもついているように好みの同人誌を発見するその高性能さ、発見するや否やかくっと曲がった鉄砲玉のように方向転換してしまうその反応力。満面に笑みをたたえて戦利品報告をするそういう人を見ていると、なんだか心が豊かになるような気がします。以前、ニュートラムのホームに見つけた中学生男子三人組に萌え死にそうになっていたお嬢さんも素晴らしかった。偉大なりや妄想力。みんな、見た目はそれこそ普通一般のお嬢さんなんだけれど、萌えのスイッチが入ったとき、そう、この本でいうところの背中のチャックが開いて801ちゃんが出てきたときのそのはしゃぎっぷりが、せっかくの擬装を台無しにしてる。でも、その台無しっぷり、落差がいいんですよ。そうだ、以前つとめていた職場にいた人もそんなだった。仮面ライダーの変身前の写真集を買ってらして、やっぱり萌えるらしい。旦那には内緒らしい。昔の集めた同人誌は実家に隠してあるらしい。そして私はそういうところに萌えるのです。

こんな奇特な性向を持っているもんだから、私には『となりの801ちゃん』は、なんだかうらやましいカップルよねという感じで読めて、なんつうか、作者勝ち組じゃんか!

以上、ああ腐女子はすばらしい、というお話でした。

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