2007年3月27日火曜日

ふおんコネクト!

 今日職場にて『ひだまりスケッチ』の話題をふってきた人がいはりまして、アニメがなんかすごかったらしいって話ですか? ってところから、原作に話題がシフト。ひととおり話した後に、ああいう系統の四コマを読まれるのなら本日発売の『ふおんコネクト!』はお薦めですよと大プッシュ。絵がきれいにまとまっているだけでなく、アニメ特撮ゲームといったサブカル系小ネタのラッシュが小気味よく、けどだからといって小ネタだけが持ち味じゃない。小ネタをあちこちにちりばめながら、四コマの流れをうまくあしらって、小落ち、中落ち、ブリッジから大落ちへとつなげる構成の妙。今面白い漫画をピックアップせよといわれたら、間違いなくこの漫画は選び取りますよと文字通り熱弁したのでした。果たしてその人が買うかどうかはわからないけれど、でもこの人はコアな特撮の人だから、きっと面白く読めると思う。まさしく渾身の推薦でありました。

と、こんな風に書いたら、小ネタがわからないと楽しめない漫画なのか、それこそコアなマニア仕様なんだろみたいに受け取られてしまいそうですね。いやいや、違うんですよ。確かに小ネタはたくさんあります。登場人物の名前に始まり、身に付けている衣服、小物、四コマに付されたサブタイトルから場合によれば構図、タッチにいたるまで、いろんなところにネタが仕込まれていて、おいおいこりゃ作者からの挑戦かよ、参ったなあー、みたいに口ではいいながら、顔はちっとも困ってなんかいりゃしない。おお、ここにこんなのを突っ込んでくるなんて、作者は実にできるのう、とかゆうてにやにやしてしまう。うん、残念だけど私もマニアだから。やっぱり小ネタの密度の濃さにはうはうはしてしまうんです。

でも、このぎょうさん詰め込まれた小ネタというのが、漫画のメインストリームには基本関係しないといったらどうでしょう。各四コマを読み、全体の流れを楽しむ分にはマニアックな知識は特に必要ない。一般に生活するうえで自然身に付いているだろう知識があれば充分読み解いて理解できる、そしてそれで充分面白い。この基本性能の高さが私のこの漫画を推す理由になっているのだと思います。

多様な面白さが層をなしてるといったらいいのかな。最前面には漫画のベーシックな面白さ、小ネタやマニア知識に寄るのではない、作者の創出する面白さが骨太に表現されています。そして、そこにキャラクターの魅力という肉付けがなされて、いわばこれが第二層でしょうか。漫画らしいちょい迷惑キャラだったり、完璧お姉さんだったり、いろいろなキャラクターが魅力的に動くという、そこを見るだけでも楽しくて、こんな感じにキャラクターの魅力が強いかと思えば時には社会派であったり、もう本当に重層的。そして、かなり奥の方に小ネタの面白さが光るというのですね。

最前面に配置されていたギャグが、その背面に小ネタを抱えていたりすることも多々あって、踏み込めば踏み込むほどに面白さが増してくるように思います。その深さ足るや、たったひとりでその全てを読み解くのはもはや不可能といってもいいほどで、高密度、多彩という形容が実にぴったりときます。私なんぞは、これら小ネタ群を自分の理解の及ぶ範囲だけで受け取って、それで充分以上に楽しいというのですから、その質の高さはかなりものであると肯います。

弱点があるとすれば、その高密度さでしょう。人によっては読み疲れてしまうかも知れません。だって、私はこの漫画を毎月の雑誌で読むときに、十分から十五分はかけて読みます。難しいとか、わかりにくいからじゃないです。その内容を十全に楽しみたいという思いが、私をそこにとどまらせるのです。四コマを楽しみ、ストーリーを楽しみ、小ネタを楽しみ、十五分なら十五分、しっかりと楽しんで、けれどこうした濃密さよりもさらっと流れるようなあっさり風味を好む人もいるはずで、そういう人にこの漫画はちょっとたくさんすぎるかも知れません。けど、こういうたくさんさが好きという人にはまさにご馳走で、小ネタ大ネタ時事ネタ社会ネタ、そういうことってよくあるネタからちょっと心がほろりとほぐれるようなネタまでいろんな要素が次々と現れて積み重なっていって — 、そういう感覚が好きな人にはたまらないと思います。ドライブ感っていったらいいのかな。すごく小気味よくて、大好き。単行本なんか、一通り読むのに二時間とか三時間かかってるんだけど、その充実度合といったらもうほれぼれするほど。きっと、私はこれからも何十回と(あるいはそれ以上)この漫画を読み返しては、にまにましてしまうことだろうと思います。

蛇足

最初はそれほどでもなかったはずの通果みちかが気付けば結構好きな感じで、思い返せばV2仕様エプロン、あれが驚異の破壊力を見せたのでした(ああ、カラー収録でないのが惜しいです)。

そんなわけで、まんがタイムきららWebにて連載中の『みちかアクセス!』も見てください。『みちかアクセス!』がいい感じだと思ったら、『ふおんコネクト!』も是非!

(ご購入の際には『看板娘はさしおさえ』の2巻も併せてお買い求めになられますと、より面白さが増すのではないかと思います。)

  • ざら『ふおんコネクト!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 以下続刊

0 件のコメント: