2007年5月28日月曜日

雅さんちの戦闘事情

 後書きにて著者曰く、連載当初はあまり評判よろしくなかったのだそうです。実をいいますと、私も最初はそんなに好きな漫画じゃありませんでした。なんでかといわれると、ダイレクトすぎるエロ表現かなあと思うんですが、まあ一言でいいますとパンツで始まり露出で終わるというような、そういうところを苦手にしていたんです。あともう一点苦手があるとすれば、あの妙に出来過ぎた設定群かなあなんて思うんですが、なんかエヴァンゲリオンを思い出したり、あるいはダイコンフィルムあたり。パロディとかもじりの類いは嫌いじゃないんですが、この人のテイストは自分にはあってないなあと思って、一言でいうと直球すぎたんだと思います。でも、今となっては楽しみに読んでいるというのは例のごとくで、これは著者のいう試行錯誤が功を奏したということなのでしょう。確かに、途中から面白さが増してきて、いつごろだったかなあ、「悪の首魁」から「胎動する闇」のあたりだと思うのですが、『きららキャラット』既刊をひっくり返して頭から読み返しをやっています。その少し前から徐々に高まりつつあった読み返したい欲求が、既刊を引っ張り出す面倒に打ち勝ったのがその時分ということなんだと思います。

それにしても、四コマ漫画らしくない四コマ漫画だと思います。落ちがあるとかないとかではなく、その設定の緻密さに四コマらしくなさが感じられるように思うんですが、マニア臭の強いきらら誌連載の漫画の中でも飛び抜けてマニアっぽさが強いと感じられて、例えばそれは(ほぼ)毎回現れる敵に味方側の変身パワードスーツ、必殺技等々。お約束といえばお約束の数々をこれでもかとこなしていく様、情熱は、様式へのこだわりというにはあまりにも異質と私には感じられて、四コマらしくないなあ、むしろストーリー漫画みたいな印象がある、いや四コマ漫画では持て余しちゃうんじゃないかなと思ったりしていました。

けど、途中から持て余してしまう部分は持て余したままギャグとして処理してしまったり、お約束として成立しているパターンを搦め手で使ってきたりと、当初思っていたよりも多様な見せ方が出てきて、このへんからこの漫画の面白さ、楽しみ方がわかってきたような気がします。お決まりのパターンを外すうまさといえば『火星ロボ大決戦!』が思い出されますけど、『雅さんちの戦闘事情』は『火星ロボ』とは違った外し方があって、またどちらもエロ方面に振れやすいところがありますが、やっぱり『雅さん』は『火星ロボ』とは違った表現があって、それぞれにそれぞれの楽しみ方があると感じています。

私にとって『雅さん』が面白いと感じられるようになってきたのは、父そして妹月子らに振り回されるばかりだった花子が、だんだんと対等に対処できるになってきてからでした。最初は、なんだ花子ばっかりひどい目に遭わされて! みたいな風に思っていたんですが、父に対しては容赦なく殴打するようになるし、妹に対しても弱みを見付けてみたいな、そういうところが出てくる。いや、逆か。父や妹の花子に対する万能性が薄れて、弱みが描かれるようになったことで、キャラクターの幅が広がって親しみやすくなったのだと思います。特に月子。姉には冷酷、父にはデレだったはずの月子が、姉たちにからかわれて余裕なくしてみたり、好きなアニメのためには目的を見失ってみたり。花子の友達たちも、ベタをあえてベタとして持ってきたようなキャラクターだけど、ベタに徹することでただベタというだけではない面白さが出ていて、こうしたキャラクターの面白さ、わいわいとやってる楽しさが私は好きです。あと、あからさまな父の変態性。どうも私は、ダイレクトな露出は苦手だけど、変質者的言動は楽しめるたちのようですよ。

変身ヒロインものという見かけが強い漫画ですが、読んでみると思いのほかほのぼの(?)家族ものであったりするところ、こういう意外性が悪くないと思います。それに、なんだか読んでるうちに、花子も月子もかなたも由香理も可愛く思えてくるんですよね。そうしたキャラクターがごちゃごちゃやってるだけで楽しくて仕方なくて、その傾向は連載を追っている今、なお一層強まっているように感じます。だから、2巻以降も出てくれないことには困ります。

蛇足

月子、一択です。というか、この漫画、月子フォーカスがあまりに多すぎませんか? それとも私が偏向しているせいで、そう感じるだけなのか。ともあれ、月子が一番だと思います。ほんと、ベタで申し訳ない。

おまけ

The doll "Kuidaore"

くいだおれ

  • 鬼八頭かかし『雅さんちの戦闘事情』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 以下続刊

引用

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