2007年6月8日金曜日

ボクの社長サマ

  ちょっと年のいきかけた漫画読みにはおなじみだろう漫画家、あろひろしが四コマ誌にて連載している『ボクの社長サマ』。この漫画が始まったとき、私には実に意外と思われて、いや別にあろひろしが四コマ誌で書いちゃいかんという話はないのですが、しかし昔の馴染みの、結構好きだった漫画家が今読んでいる、どちらかといえばマイナーよりの雑誌にくるだなんて。本当に意外でした。けれど意外である以上に、その当初のぎこちなさには戸惑いばかりが感じられた、というのは以前にもいいましたとおりです。

けど、今やすっかり往年の雰囲気、勢いを取り戻したというか、実にあろひろしらしいと思えるのりになっていまして、読んでいてすごく楽しいのです。萌え要素を盛り込もうとしていた頃とは違って、ネタのいろいろがよく回転してる、機能しているという感じでしょうか。あろひろしに独特な、常軌を逸した設定の数々。以前の漫画でいえば、『優&魅衣』なんて、ヒロインの一方が幽霊なのはまだしも、板金鎧着用一家の娘にいたってはもうとんでもどころの話じゃないし、それに主人公が眼鏡はずれて獣人化だもの。学校は無駄にロボットに変形する。マンホールと戦ってる人がいる。残念ながら、こうした変態設定は『ボクの社長サマ』には出てこなくって、……と思っていたら、やっぱり出てくるんですよね。

幽体離脱して小学生社長を見守るメイドであるとか、根性努力勝利で主人公を無駄にしごく秘書課主任だとか、空間を超えるほどの方向音痴ぶりを見せる後輩女子社員であるとか。こういうあり得ない設定のキャラクターを動かして、ネタとしてはべたかも知れないけれど、勢い、のりで突き進むその推進力はやっぱりあろひろしのそれだなあと思うのです。際限なくエスカレートする悪乗りぶりはあろひろし健在と思わせて、無駄に大風呂敷広げるところや空騒ぎの大騒ぎのしっちゃかめっちゃかな展開なんかも実にいきている感じ。さすがに社屋がロボに変形したりはしないけれど、非常識物件は普通に現れてきて、この非常識を楽しませてくれるところ、実にいい正統派のギャグ四コマであると思います。

しかし、萌えにチャレンジしようとして、どたばたのギャグになってしまったと思われた『ボクの社長サマ』ですが、第2巻の最後の最後に萌えキャラがバーンと出てきて、実に良い感じであったではありませんか。ええ、ひな人形のおヒナちゃんです。この前後編で展開されたひな祭りエピソードは、無駄に大げさな舞台を用意してのどたばた大暴れものにして、端々に現れるギャグも切れ味鋭く、また珍しい乙女主任を見ることもできて、実によい回でありました。爆発落ちなぞは今や古典であるけれど、古典すなわちオーソドックス。久々に見る最高の爆発落ちであったと思います。

蛇足

板見先生の造形は非常に素晴らしいものがあると思います。凛々しいボブ、最高です。キャラクターはあれですが……。

  • あろひろし『ボクの社長サマ』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社.2006年。
  • あろひろし『ボクの社長サマ』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社.2007年。
  • 以下続刊

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