2007年8月5日日曜日

コブラ

  この土日は『コブラ』を読んで終わったような、そんな気がします。『コブラ』というのは、漫画読みには説明不要でしょう、寺沢武一のデビュー作にして出世作。1977年に週刊少年ジャンプにて連載が開始され、すなわち今年で三十周年。これだけでもう驚きですが、さらに驚くべきは、この漫画がまだ終わっていないということ。今もなお新作が描き続けられているのだそうですね。驚異的な息の長さは、それだけ『コブラ』という作品が愛されているという証拠なのだと思います。作者に、そして読者に愛されて、その結果、判型を変え出版社も変え、膨大な数の単行本がリリース。もちろん、今だって新品で購入可能ときています。本当、これはすごいことだと思います。出版され続けることもそうなら、読者に愛され続けているという、そこが本当にすごいと思います。

今回は、私にしては珍しく古書で購入してしまいました。なんとなく『コブラ』を読みたいなあ、なんて思ってて、ってのは『ぱにぽに』でベッキーがサイコガンつけたりしてたのがきっかけだったりするんですけど、買おうかなどうしようかななんて思ってたら、商店街の古書店の店先に、『コブラ』全巻とかいってどんと置かれていたものだから、迷ったんですけどね、買ってしまったんですよ。ちょっと傷みも激しかったけれど、そのわりに高いかななんて思ったりもしたけれど、とにかく読めることが重要です。どーんと、十冊まとめて買ったのです。ええと、1988年刊のジャンプコミックスデラックスですね。これ、残念ながら少年ジャンプ掲載のエピソードしか収録されていない(なんか、ジャンプコミックスの最終巻に書き下ろしエピソードがあったみたい)らしいのですが、まあ今はいいです。どうしても読みたければ、メディアファクトリー版を買えばいいのですから。

しかし、『コブラ』を読んでみて、昔は週刊少年ジャンプにこれが掲載されていたのかと、驚く思いでした。いや、エロが強いということであれば、後の八九十年代のほうが激しいかも知れません。けど、どうよあの女性キャラクターのダイナマイトさ。エロは控えめなのに、恐ろしくセクシーときています。ストーリーもわりに硬派で、今なら間違いなく青年誌だろうなと。あるいは青年誌であっても、もっとやわい印象のものが掲載されているように思える今、『コブラ』は異色と映るかも知れない。それぐらいにタフな漫画であると思います。

正直なところをいいますと、子供の頃は、『コブラ』みたいな漫画はあんまり好きじゃなかったのでした。それこそ『プレイボーイ』誌のグラビアを飾るようなグラマラスな女性キャラクター、ああいうの苦手でして、だから今の今まで敬遠してきたんですね。でも、読んでみたらすごいですね。ああいったダイナマイトな女性は今も苦手には違いないんですが、けれど強烈に魅力的で魅惑的で、そしてかっこいい。当時のSF的センスを反映してか、みんなボディラインがはっきりするスーツやレオタード、そしてきわどいビキニなんて着てるんですが、それで大立ち回り演ずるというのが本当にクールで、敵であっても味方であっても、格好良さには変わりがないと思いましたね。

けれど、そうした女性以上にかっこいいのが主人公コブラで、私はあのちょっととぼけたコブラの造形が昔はあんまり好かんかったんですが、けれど今見れば、それがまあかっこいい。シリアスも決まるし、冗談めかしたそぶりやなんかもしっくりとして、ニヒルできざで冗談好きでそしてタフと、ちょっと日本的ヒーローではない、アメコミにでも出てきそうなそんな頑強な男。鍛えられた肉体にサイコガンを身につけて、悪党をばっさばっさと始末する爽快さがあるかと思えば、女にはやさしく迫ってみせるという、タフさとやさしさを兼ね備えた一見完璧な男、それがコブラ。しかしその生き方のために、大切なものを次々と失っていくという悲しさも背負っているのがたまらないところかなと思います。心をずたずたにされ、自分自身を呪い、悲しみをともに復讐を成し遂げる。ただ痛快というにはあまりに心に悲哀が残ってしまう、そういうところも味なんじゃないかという感じです。

そういえば、こないだ『コブラ』はP. K. ディックの『追憶売ります』を下敷きにしているんじゃないかなんていってましたが、他にも他のSFのエッセンスを持ち込んでるみたいですね。『ダーティペア』にも出てきたメタライトが『コブラ』にも出てきて、これはA. E. ヴァン・ヴォークトの『宇宙船ビーグル号の冒険』が出典と聞いています。こんな風に、他作品の要素を借用しながら、世界を広げるということがSFでは普通にされてたんですね。今では権利云々でむつかしいかも知れないけれど、実際にこうした世界の広がり、あるいはお遊びといってもいいのかもを見ると、面白いなあと、そんな風に思います。

  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第1巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2005年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第2巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2005年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第3巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2005年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第4巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2005年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第5巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2005年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第6巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2005年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第7巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2006年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第8巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2006年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第9巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2006年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第10巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2006年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第11巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2006年。
  • 寺沢武一『コブラ』完全版 第12巻 (MFコミックス) 東京:メディアファクトリー,2006年。
  • 寺沢武一『COBRA』第1巻 (SHUEISHA JUMP REMIX) 東京:集英社,2003年。
  • 寺沢武一『COBRA』第2巻 (SHUEISHA JUMP REMIX) 東京:集英社,2003年。
  • 寺沢武一『COBRA』第3巻 (SHUEISHA JUMP REMIX) 東京:集英社,2003年。
  • 寺沢武一『COBRA』第4巻 (SHUEISHA JUMP REMIX) 東京:集英社,2003年。
  • 寺沢武一『COBRA』第5巻 (SHUEISHA JUMP REMIX) 東京:集英社,2003年。
  • 寺沢武一『COBRA』第6巻 (SHUEISHA JUMP REMIX) 東京:集英社,2003年。
  • 寺沢武一『COBRA』第7巻 (SHUEISHA JUMP REMIX) 東京:集英社,2003年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第1巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第2巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第3巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第4巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第5巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第6巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第7巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第8巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第9巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第10巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『SPACE ADVENTURE COBRA』第11巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2002年。
  • 寺沢武一『COBRA GIRLS』東京:集英社,1997年。
  • 寺沢武一『COBRA WONDER』東京:集英社,1997年。
  • 寺沢武一『COBRA』第1巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1996年。
  • 寺沢武一『COBRA』第2巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1996年。
  • 寺沢武一『COBRA』第3巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1996年。
  • 寺沢武一『COBRA』第4巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1996年。
  • 寺沢武一『COBRA』第5巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1997年。
  • 寺沢武一『COBRA』第6巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1997年。
  • 寺沢武一『COBRA』第7巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1997年。
  • 寺沢武一『COBRA』第8巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1998年。
  • 寺沢武一『COBRA』第9巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1999年。
  • 寺沢武一『COBRA』第10巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,2001年。
  • 寺沢武一『コブラ』第1巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1994年。
  • 寺沢武一『コブラ』第2巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1994年。
  • 寺沢武一『コブラ』第3巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1994年。
  • 寺沢武一『コブラ』第4巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1994年。
  • 寺沢武一『コブラ』第5巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1994年。
  • 寺沢武一『コブラ』第6巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1994年。
  • 寺沢武一『コブラ』第7巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1994年。
  • 寺沢武一『コブラ』第8巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1994年。
  • 寺沢武一『コブラ』第9巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1994年。
  • 寺沢武一『コブラ』第10巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1994年。
  • 寺沢武一『コブラ』第11巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1995年。
  • 寺沢武一『コブラ』第12巻 (創美社コミックス) 東京:創美社,1995年。
  • 寺沢武一『コブラ』第1巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1988年。
  • 寺沢武一『コブラ』第2巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1988年。
  • 寺沢武一『コブラ』第3巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1988年。
  • 寺沢武一『コブラ』第4巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1988年。
  • 寺沢武一『コブラ』第5巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1988年。
  • 寺沢武一『コブラ』第6巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1988年。
  • 寺沢武一『コブラ』第7巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1988年。
  • 寺沢武一『コブラ』第8巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1988年。
  • 寺沢武一『コブラ』第9巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1988年。
  • 寺沢武一『コブラ』第10巻 (ジャンプコミックスデラックス) 東京:集英社,1988年。
  • 寺沢武一『コブラ』第1巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1979年。
  • 寺沢武一『コブラ』第2巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1979年。
  • 寺沢武一『コブラ』第3巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1980年。
  • 寺沢武一『コブラ』第4巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1980年。
  • 寺沢武一『コブラ』第5巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1980年。
  • 寺沢武一『コブラ』第6巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1980年。
  • 寺沢武一『コブラ』第7巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1981年。
  • 寺沢武一『コブラ』第8巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1981年。
  • 寺沢武一『コブラ』第9巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1981年。
  • 寺沢武一『コブラ』第10巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1982年。
  • 寺沢武一『コブラ』第11巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1982年。
  • 寺沢武一『コブラ』第12巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1982年。
  • 寺沢武一『コブラ』第13巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1983年。
  • 寺沢武一『コブラ』第14巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1983年。
  • 寺沢武一『コブラ』第15巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1984年。
  • 寺沢武一『コブラ』第16巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1984年。
  • 寺沢武一『コブラ』第17巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1985年。
  • 寺沢武一『コブラ』第18巻 (少年ジャンプコミックス) 東京:集英社,1985年。

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