2007年10月2日火曜日

こどものじかん

  時間は10月1日の昼に遡ります。職場にて、どうにも体調が悪くて仕方がない、はなが止まらない、くしゃみが出る、鼻の奥がひりひりと痛いからどうも熱が出てる模様だと、だから明日休むかも知れませんという諒解を上司にとっていたときのこと。上司曰く、ヴイックス・ヴェポラッブ使いたまえよ。ていうか、あれってコマーシャルなんかではよく見ますけど、実際に使ってる人って身近に一人もいなかったんですが、効くんですか? さあ、上司はにやにやして、なんだあんたも使ってないんじゃんか。そういえば、最近読んだ漫画でヴイックス・ヴェポラッブ使うシーンの出てくるのがあって、『こどものじかん』第4巻、それは一体どんなシーンだったかといいますと……。

風邪をひいて苦しそうなりんを見て、レイジがヴェポラップを塗るというんです、いやがるりんを押し切るかたちで。それ見て、うわあ無茶するなあなんて、ああ無茶というのはレイジがじゃなくて、作者の方。ちょっと過激な描写を売りにしてるところもある漫画ですけど、ちょっとあざとさが過ぎやしないかなんて思うところもあって、どうだろうと思ったら、次のページ、レイジの方がもっとやばかったから、そのへんのもろもろは払拭されてしまいました。

第4巻に入って、これまで以上に教師側の事情などが明らかになって、とりあえず役者は揃ったかという頃だと思います。りんに対しては青木とレイジ、黒に対しては白井、宇佐にはレイジといった、それぞれ対になるような関係が見えてきて、それぞれが欠けているところを互いに埋め合わせるかたちで収束させようとしているのだろうかと思われます。とはいっても、ちょっと大人側が欠けすぎてやしないか。欠けているところがあるのは仕方がない、誰もがどこかに不充分さを抱えているものなんだから、けれどその欠けていることに振り回されすぎているように思えて、特にレイジそして白井。むしろ青木なんかは普通だなあと、生真面目ないい兄さんじゃないか。りんを巡る二人の大人を見て、これは青木が積極介入しないことには救われなさそうだという匂いをぷんぷんとさせて、けれど教師と生徒、大人と小学生というハードルをどう越えるんだろう。りんに対して光源氏計画を発動させている育ての親レイジに対し、あと数年で関係が切れてしまう青木。残り三年というタイムリミットでなんとかできるもんなんだろうかと、微妙に嫌展開も予感させながら、物語はまだ核心に踏み込まず周辺にとどまるばかり、じらせてくれます。

大人側が欠けているなら子供側はどうかというと、りん、黒、宇佐それぞれにやっぱり危ういところがあって、けど宇佐や黒のはそれなりに自己解消しそうかななんて感じもするんだけど、やっぱり極め付けはりんだと思う。ってのは、やっぱり環境が悪いよ。表向きには円満だけど、その裏側にしっかりと策略があって、そしてりんはその策略、違和感に気付いているんじゃないか。あの不安定さ、愛情を過激に求める態度の裏には、それら危機に対する気付きがあって、助けを求める心が青木にゆがんだかたちで向かっているんじゃないか。そうしたぎりぎりの綱渡り的状況を見せられて生じるサスペンドされた感覚、これが『こどものじかん』の読後感を決定づけていると感じます。

ところで、青木はレイジのことをロリコンだと思って敵視していて、けれど自分はそうじゃないなんて思ってるみたいですけど、そのような気付きをするということは、自分自身にそういうことに対する受容体があるってことなんだから、多かれ少なかれ青木もロリコンなんだってことだと思うよ。だからもう認めちゃえばいいのにね、ってそんなこと思ってる私はというと……、アー、アー、きこえなーい。

  • 私屋カヲル『こどものじかん』第1巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2005年。
  • 私屋カヲル『こどものじかん』第2巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2006年。
  • 私屋カヲル『こどものじかん』第3巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2007年。
  • 私屋カヲル『こどものじかん』第3巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2007年;特別限定版,2007年。
  • 私屋カヲル『こどものじかん』第4巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2007年。
  • 私屋カヲル『こどものじかん』第4巻 (アクションコミックス) 東京:双葉社,2007年;特別限定版,2007年。
  • 以下続刊

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