2008年2月2日土曜日

Recht — レヒト

 『Recht』は『まんがタイムきららフォワード』にて連載中の漫画、誌名からするとなんだか四コマ誌みたいでありますが、四コマメインではありません。といったわけで、『Recht』もコマ割り漫画であります。中央管理局にすべての情報が集約されている世界、すなわち超管理社会を舞台に繰り広げられる刑事ものです。Rechtというのは、この世界における中央警察、主人公の少年カイが所属する組織であります。けど、カイはRechtにおいては階級が低く、権限もなければ、経験も不足していて、でも情熱が義憤が彼を走らせるのさ! こんな感じの熱血新人刑事ものであります。

さて、カイには相棒がおるのです。アリス。ヒロインです。けど人間じゃない。この世界にはCSと呼ばれるセキュリティシステムがあって、それはマスターに寄り添うパートナー、電子的な生命体なのかな? それとも命とかはないのかな? しかし、かなりの独立性を持っていることは確かで、それが人型ともなれば、実際人と違うところはほとんどないように描かれています。そう、ここであえて人型という表現を使うのは、中央から付与されるCSには様々な形態があって、大抵は動物の姿をしている模様。だから人型はレアなんですね。そのレアをもらっていながら、獣がよかったなどというカイ。貴様、贅沢ものめ。

『Recht』はストーリーの要請上、熱血主人公カイが暴走気味にもがきあがきながら、徐々に世界の中核=管理局中枢に踏み込んでいくことになる、すなわち管理と自由が対立する最前線に立たされることになるのではないかと思うのですが、もしそうなったらアリスとカイはどうなるんだろう。もしかしたら今表に現れているちょいほのぼの感、アリスとカイのほほ笑ましいボーイ・ミーツ・ガール的雰囲気などは吹っ飛んでしまうほどの、ハードな展開におちいるのではないか、そんなこと心配しています。

なぜかっていいますとね、アリスたちCSとは個人情報や生活面での管理を目的に中央管理局から渡されるものであるんですよね。これをカイの父はセキュリティといっていましたが、このセキュリティという言葉、CSの与えられている個人を守るものであるのか、あるいは社会を守るためのものであるのか、そのどちらであるかでずいぶん意味合いは変わってきます。つまり、個人情報や生活の管理とは、カイをはじめとする市民がよりよく生活できるようお世話することを指しているのではなく、社会の円滑運用のために市民を監視するという意味でしかないとしたら、アリスたちCSは中央管理局から送られてきた監視エージェントにほかならないわけです。

まあ、普通に考えたらそうでしょうね。そして、管理と自由の対立する局面において、カイはアリスの真実を知る。CSの役割、監視エージェントとしての機能を持つアリスは、これまでカイの側にあってその関係を育んできたアリスと引き裂かれるわけですよ。不信や失望渦巻く中、カイ、アリスは離反しかねないという状況、しかしこれまでに築きあげられた信頼が彼らを繋ぎ止めた! みたいな展開が予想されるんですが、果たしてこんな感じに運ぶのでしょうか。私の予想などものともせぬ、それ以上の展開があったら理想的ですね。そうなったらもううはうは。なのでぜひそうであって欲しいところです。

今回この文章書いて、『Recht』っていわゆるセカイ系にあたるのかな、そんな風に思っています。普通ならカイの様な新米が中枢にアクセスすることなど容易でないし、けれどそんなカイが世界の変革に立ち会う可能性をつかんでいる、それはやっぱりずいぶんな下駄履かされた状況で、私の乏しいセカイ系の理解からすると、充分にセカイ系の条件を満たしています。けど、そんなカテゴライズはどうでもいいですね。楽しんで読めるかどうかが大切なんですから、というわけで私はこの漫画を充分楽しんで読んでいます。ええ、結構楽しみにしている漫画であるんです。

ところで、微妙にパンチラの多いと感じる『Recht』ですが、個人的にはパンチラはなくてかまいません。というか、あんまそういうの好きじゃないので、むしろないほうが嬉しいです……。布を、もっと布を!

  • 寺本薫『Recht — レヒト』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 以下続刊

引用

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