2008年2月4日月曜日

Rusty bloom — ラスティブルーム

まんがタイムきららフォワード』がお世辞にも安定していたとはいえなかった頃、こんなこといったら申し訳ないんだけど、いつなくなるか、いつ撤退するかと思いながら毎月読んでいまして、けどそれ以上に問題だったのは雑誌の撤退する前に私自身が購読を撤退しそうだったことなんですね。正直、いろいろ厳しいなあと思いながら読んでいました。それが今では、ひと月に単行本が二冊出るような、そんなくらいに成長しまして、ある程度安定もしているのでしょう、そこそこ売れているタイトルもあるようだし、ずいぶん状況は違ったものだ、そんな風に感じます。フォワード発の単行本が店頭に並ぶ様子を見れば、ちょっと感慨めいたものが兆すようにも思います。けれどその思いの底には少し複雑なものがわだかまっていて、未練でしょうか。なにか引っかかるものがある、捨て切れないものがあるのです。

未練、それは思い出すタイトルがあるからなんですね。『Rusty bloom — ラスティブルーム』。『フォワード』の初期連載作であるのですが、実は私はこの漫画が好きでした。もちろん楽しみに読んだのがこれだけということはありません。『サイコスタッフ』、『Recht — レヒト』、『キミとボクをつなぐもの』、楽しみだったといえば、このあたりをあげることができるでしょうか。けれどこれらは、『エンジェルお悩み相談所』の水上悟志、『ちびでびっ!』の寺本薫、『三者三葉』の荒井チェリー、私の中ではすでに評価の定まった人たちで、だからある意味、誤解を怖れずにいえば、既作の延長としてのおつきあいで読んでいたともいえるわけです。けれど『Rusty bloom — ラスティブルーム』に関してはそうではありませんでした。

『Rusty bloom — ラスティブルーム』の作者、こよかよしの、私はこの人のことを知りませんでした。今もよく知りません。私とこの人のあいだには『Rusty bloom』しかない。錆花という、金属を蝕み人を襲うように変化させるのはびこる世界を旅する黒衣の看護師ソフィ。連盟の貴婦人コンテッサとも呼び称される彼女は、謎をその身にはらみつつ、錆花との戦いの最前線に身を置いている。助手としてソフィに同行するユッカは、錆花とそれを生み出すこととなった事件の真相に踏み込んでゆく — 。こうしたストーリーが、繊細で少々神経質といえなくもない独特のタッチでつづられていくのですが、私にはこれが非常によく馴染んだのですね。面白かったのでしょう。多少粗削りかも知れない、そうは思ったけど、初期『フォワード』で粗削りでないものってあったっけか? どれも多少の粗を持って展開していた中、私にもっとも触れたのが『Rusty bloom』であったということ。先を楽しみにしていました。毎号の描かれる内容に、絵の醸し出す雰囲気に引きつけられていました。『Rusty bloom』と私の接点は『フォワード』だけであった、そのことが、『フォワード』といえば『Rusty bloom』を思わせるほどに雑誌に密接に重なって、けれど客観的な評価としては、私のような読者は少なかったと、そういわざるを得ないのかと思います。

もし今その可能性があるなら、単行本で読みたいと思う、しつこいですか、しつこいですね、けど好きだったものは仕方がない。少なくとも、この漫画があったから私は初期『フォワード』にしがみつき続けたんだもの。連載の終盤は雑誌の最後尾を定席として、もしかして打ち切りもあるのではないか、その可能性を怖れてアンケートにはとにかく『Rusty bloom』が好きなのだと書いて、もしよかったら単行本を出しておくれと。けど、時期が早かった? 時が満たなかった? それとも単に単行本の出せるラインにたどり着かなかった? 残念です。ただただ残念です。なら、いつまでも残念がっていればいいさ。だって、いまだに忘れちゃいない、これからも容易に忘れることなどできそうにないのですから。

幸いといえるのは、それでもラストまではこぎ着けたこと。そしてやはり私は、あの少し甘めのラスト、好きであるんですね。ええ、好きなんですよ。おそらくは、どこかに影のさすように陰鬱で捨て鉢なソフィ、明るさとにぎやかさの向こうにセンチメンタルな心情を隠していたユッカ、彼女らから感じられるメランコリックな情感、それが好きだったのだと思います。最後にそれらは拭われた、けどそれでもどこかにセンチメンタルな匂いは残って、そうしたところが好きでした。ええ、好きだったのです。

  • こよかよしの『Rusty bloom — ラスティブルーム』

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