2008年3月17日月曜日

ああっ御主人様!!

ずいぶん前にもいったことがありますが、私は渡辺純子の漫画が好きなのです。代表作はというと、『まゆかのダーリン』がありますね。それから『ことはの王子様』もありますね。どちらも少々恋愛絡めて、どたばたとしつつも、どこかしら温かみの感じられる作風。温かみに関しては、『ことは』のほうが優位かな? 『まゆか』は、当初は姪のまゆかちゃんに迫られてあたふたするりょうさんを見て楽しむ漫画だったのが、今や家族公認両者ラブラブという甘々状況をにまにまとみんなして見守る、そんな漫画になって、そのどれも好きだったなあ。いや、過去形じゃない。今もやっぱり好きなんですよ。なんというんだろう、こんな書き方したらどう思われるかわからないけれど、渡辺純子という人に関しては、心の奥にきちんとその領域が確保されている、そんな感じであるんですね。

私は以前『5-A(ごのえぃ)』について触れた時、渡辺純子の漫画をさして、あざとさを読者と共有する共犯感覚が魅力だと、そんな風なことをいっていました。タイトルによってあざとさのあからさまにされる度合いは違うけれど、どこかに、こんなのが好きなんでしょ? というような要素があるというか、はい、好きです……、って思ってしまうところがあるというか。けどもちろんそれだけでなくて、そうしたけれんの要素、目を引き、くすぐりを入れてくるネタの引いたあとに残る、落ち着いた色合い。漫画の登場人物でしかないというのに、彼彼女らの気持ちと気持ちが確かに触れあった瞬間があったと思う、そういう実感。それがきっと優しさを感じさせる源泉になっているんではないかと思っているんです。

『ああっ御主人様!!』は、渡辺純子さんが機械の体でいらっしゃった頃の漫画。きっちり成年コミックの表示があるのですが、エロ大規制吹き荒れていたころの作、つまり1996年基準ですね。今の成年コミックを基準に考えると、おとなしい部類に入るかと思われます。とはいえ、間違いなくエロ漫画なので、そういうのが嫌いという人は手を出さないにこしたことないでしょう。

さて、ここで『5-A』の記事で触れた好きな順、見直してみましょう。

  1. 『5-A』
  2. 『ことはの王子様』
  3. 『ああっ御主人様!!』
  4. 『まゆかのダーリン』
  5. 『無敵のファニー・ドール』

これ見るとずいぶん『まゆかのダーリン』の評価が低いように思えますけど、それは読み違いというやつでして、だってそもそもが『まゆかのダーリン』いいじゃん! 他のも買ってみよう、という流れだったことかんがみても、『まゆか』時点で結構なプラス評価であったことは間違いない。そして、後発のタイトルが上位に着けているというのは、新しいものに触れるたびにもっと好きになっていったということなんですね。さて、『ああっ御主人様!!』に戻りましょう。この人のエロはあんまり肌に合わない感じといっていたはずなのに、なぜか『まゆかのダーリン』より『ああっ御主人様!!』の方が上位につけているという不思議。なんでだ!? それはですね、やっぱりね、キャラクターの好きというものがあると思うんですよ。

『ああっ御主人様!!』で好きなキャラクター。褐色肌で貧相な胸(を喜んでいる主人公も主人公だ)の魔道士エリスも好きだったのですが、それ以上にはまったのが、主人公に女ができたことを信じられない友人神下が呼びつけた、姉にして超常現象オタクの、え、えーと、名前わからないな、ま、とにかくお姉さんです。

キャラクター造形が素晴らしかったのですよ。オタクであることはおいておくとしても、おかたいスーツに眼鏡、ロングヘア、ちょっときつめで、美人系つり目で、眉の高さで揃えられた髪も素敵、全体に真面目というか奥手という雰囲気漂わせて、華やかさや柔らかさよりも、凛々しさかたくなさ感じさせるそこが実に好みだったというか、ああそうさ、好みだったんです。綺麗だと思ったんです、かわいかったんです。堅物装ってる割に興味は人並みにあるところとか、気丈なそぶりみせているくせに実は結構あかんたれなところとか、本当最高じゃないですか。でもまあ、主人公にやられちゃうんですけどね、エロ漫画だから仕方ないんだけどさ……。

『ああっ御主人様!!』の面白いところは、エロ漫画であるんだけど、最初割と無理矢理だったりするんだけど、主人公とヒロインである妖精? 精霊? 魔人? のメイルがなんだかえらくラブラブで、いやバカップルなのか? とにかくちょっと馬鹿なのりで突き進んでしまうというコメディ展開も楽しくってさ、だからというわけでもないんですけど、好きだなあって思ったんですね。私は残念ながら単行本でしか読んだことがないのですが、これにはまだ続きがあったはずで、それを知ることができないっていうのはちょっと、というかかなり残念で、この後どんな風に話は進んだんだろう。お姉さんの再登場はあったの? いろいろ思うところあるんですが、残念ですね。ほんと、こういう時はたのみこむとか復刊ドットコムで呼びかけたりしたらいいのかなあ。でも、ビブロスは廃業しちゃってるから、復刊は難しいだろうなあ。新装で愛蔵で出たりしないかなあ。

などと夢想するほどに好きだったりします。

さて、なぜ今日という日に『ああっ御主人様!!』を思い出したのかと申しますと、ひょんなことでそのお姉さんと再会することができまして、それがあんまりに嬉しかったからなんです。ちょっと挑戦的ないでたちで、眼鏡にスーツも凛々しいんだけど、胸元のフリルに女性らしさ感じさせて、ああやっぱり素敵だ! とそんな風に嬉しかった、それはそれは嬉しかったんですよ。

  • 渡辺純子『まゆかのダーリン』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • 渡辺純子『まゆかのダーリン』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2005年。
  • 渡辺純子『まゆかのダーリン』第3巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 以下続刊
  • 渡辺純子『ことはの王子様』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2006年。
  • 渡辺純子『ことはの王子様』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 以下続刊

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