2008年5月30日金曜日

きつねさんに化かされたい!

  きつねさんに化かされたい!』は実に私のお気に入りの漫画で、それこそ急所をぐさりと突くようなところがあるのです。絵柄、キャラクターの異常性、そして変にドライなところ。もちろんそのドライさは意図されたもので、わあわあと異様な盛り上がりを見せる局面に、冷たく乾いたきつい一言が投下される、その思い切りのよさがよいのですね。しかし、そうした言葉、表現が効果的に響くのは、ある種読者のつっこみを代弁するものであるからでしょう。あからさまな偏りを見せる人たちが、その偏りをむしろ王道と強弁するその際に、そんなわけないだろうと対立する陣営からつっこみが入る。そしてそのつっこみから派生する暴走に、今度は第三者から切り捨てるがごとき勢いでつっこみが入る。変態とは仲良くしない。おおお、なんとひどい一言でありましょう。

それをひどいというのは、以前、こんなこと書いたことがあったからです。

えっと、私が好きなのはこくりさんだけじゃありませんで……、甘ロリ服もいいけど和服もねってやつでして、見た目キツ目の子供で中身は年増って、実は最高なんじゃありませんか!?

ああ、ほんと、もう駄目だ。変態だ。変態とは仲良くしない

きつい一言が飛び交うこともある『きつねさん』ですが、それでもそれがぎすぎすした感じにならないのは、その変態変わり者たちが筋金入りで、ちょっとやそっとじゃへこたれない強さを持っているからかも知れません。それと、そうしたきつさを緩和する要素、あまりに素直で、あまりに無垢、純粋なこくりさんの存在でしょうか。でもここに私は、なんのかんのいって仲が良かったり、相手のこと思いやったりしてるって、そんな要素があるってことをいいたい。特に先生の田中に対する態度などがそうで、どれほど好きだ好きだ愛してると言い寄られようと、無下にあしらう態度は一貫してぶれがなく、でもそれはあくまでも教育者の立場を崩そうとしないためであって、本心では気に入ってるし、憎からず思ってるんじゃないの!? と私は思いたい(すんません、妄想です)。でも、多分、これが本当だと思うんだけどなあ。思いたいだけかなあ。ていうか、もういい加減、愛してるっていってあげたらいいじゃないですか。

ともあれ、仲が悪いのではなく、仲が良いからこそのきつい一言なんだと思うんですね。そして、そういう仲の良いと感じさせる雰囲気、変わり者をも受け入れる懐の深さが、あの保健室の繁盛を生み出している最大の要素なのかもなと、そんなことを思います。入り浸るきっかけこそは眼鏡やらなんやらであったかも知れないけれど、しまいには打ち解けた人のいる場所になったように、獣耳やキュートな美少年が目的の人たちも、いつかはそこが大切な場所になるのかな、なったらいいなと思っています。

というわけで、第3巻でも新規の人たちが出てきて、鷹尾望と山村祐樹。山村祐樹は男だからか、話の中心をとることは本当に少ないけれど、鷹尾に関してはもうかなりの勢いで中央に躍り出て、派手なキャラクター、魅力的な台詞回し、そしてどことなく歪んだ認知が素晴らしく、そしてあんずとのからみ。思想の敵であるにも関わらず、こんなにも惹かれるなんて — 。一種のロミオとジュリエット的展開には、村田先生ならずともわくわくとさせられて、本当によい盛り上がりを見せています。そして、不遇な片思いの連鎖。常に現実が希望願望理想から外れている鷹尾の嘆きには、小生も思わず落涙でありました。けれど思い掛けない内心の発露、普段の態度の裏に隠された本心がぽろりとあらわにされる描写は、鷹尾のみならずすべてのキャラクターにおいてその魅力を増大させて、共感もあらば、人という存在への愛おしささえ感じさせるようで、うまいなあ。ほんと、そういうふとこぼれる人の気持ちの綾に、私はひかれます。

ところで、よくよく考えたら、変態とは仲良くしないは、初対面での台詞じゃないか。いや、でも、まあいいや。彼が変態なのは間違いなさそうだし。ということか、やはり私も変態か……。

蛇足

変態ついでだ。眼鏡の田中さんもべらぼうにかわいかったけれど、機能性重視型こくりさんは、普段よりも数倍素敵であったと思います。それと、これはどうでもいいんだけれども、バレンタイン仕様のあんずはすごくかわいかったし、制服鷹尾さんも結構好みだ。

ところで、山村祐樹ですが、自分の興味の対象を前にして、その関係に参加することなく傍観者であることに徹している彼は、ある意味悟ってるなあと、感心してしまいます。彼は自分が、自らの人生の主人公になることを妄想しない。実に超越的であります。

さらに、ところで。そういうゲームが出るというのなら、予約してでも買います。面白かった。そんだけです。

どうでもいいこと

忘れるところだった。

Amazon.co.jpできつねさんにをキーワードにして検索してみたところ、検索結果第二位に『ごんぎつね』が! ちょっとうなぎが食べたくなりましたの関係ですか?

Searching with the keyword "きつねさんに" on Amazon.co.jp

それはそうと、リストマニア!に紹介されているひよさん。こちら、作者の桑原ひひひさんご本人であります。

引用

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