2008年5月31日土曜日

ようこそ。若葉荘へ

  眼鏡ヒロイン三連続。なんてことはどうでもいいとして、『ようこそ。若葉荘へ』がめでたく完結いたしました。はじまった頃は確かに東宮院華憐がヒロインだったのに、気付けば荒井アラシがメインヒロイン位置に着けていたという漫画です。あまりに意外すぎた展開に、え、今どうなってるの!? とまどいながら読んだのも懐かしい。けれどその戸惑いに再びまみえる日がこようとは思いもしませんでした。ラストに向けての急展開、なんらの心の準備もなく、主人公もヒロイン(荒井の方)もラストステージに放り込まれて、私はついていけなくて目が点。こ、これは終わるな! そう思いはしたけれど、急転直下の大団円、本当になにがなんだかわからんうちに終わりました。

けど、その怒濤の激流に揉まれ、振り回されるのもまた楽しかったかもなあ。先がまったく予想できない、なんてったって、予兆がないんだもん。新たな展開、新たな前提がどしどし現れる中、えっと、これいったいどこに繋がってんだろう、なにぶん月刊連載ですから、前回を忘れてしまっているということはよくあることです。思い出そうとするも思い出せず、確認すれば新事実。でも、第2巻読んでると、明かされなかった新事実はまだあったようで、そうかあ、もっと振り回される可能性があったわけだ。それが実現しなかったのはつくづく残念ですが、けどラストの展開で充分かも知れません。それくらい激動でした。

男主人公がハーレム的シチュエーションに置かれる、そうした舞台を設定する場合、どうしても主人公は優柔不断にならざるを得ないのか、『ようこそ。若葉荘へ』主人公沢井健太郎もそんな具合です。平凡、優柔不断、そんなお前がなぜモテる!? でも、こいつを決断力ある魅力的な男にしたら、早い段階で東宮院に突進して、ものすごい勢いでケリがついちゃうから駄目なんでしょうね。そうしたら、荒井がヒロインの位置に躍り出ることもなかったわけで、だから沢井はそれでいい。むしろそうでないといかんかったのです。

すんません、荒井が好きなもので。

東宮院、荒井二人を筆頭にして、若葉荘住人のどたばたコメディ繰り広げられたわけですが、加藤メインエピソードがなかったのはちょっと残念。というか、他のキャラクターにしてもまだまだ掘り下げの余地、広げられる余裕があったと思うものだから残念です。深く心情を掘り下げていくタイプの漫画ではなかったとは思うのだけれども、それでも主に荒井の気持ちの揺れる様子はよかった。表向きは強気で粗雑で荒っぽいのに、実はプライドと自己否定との狭間に迷っていたというところなんてのは絶品で、沢井の中にあるしーちゃんのイメージと今の自分とのギャップに怯え、しかし今の自分を見てくれるようでないといやだという。だからこの話が荒井シナリオでもって決着した(した?)のはよかったなあ。なんて思うんですが、けどあの沢井はあんまりにも失礼だ。しーちゃんとしての荒井が好きなんでなく、今の荒井が、眼鏡の荒井が好きなんだといってやれ。それを沢井はあんな言い方をして、だからもう二三発殴られるくらいで丁度いい。というか、あんな娘に殴られるだなんて、むしろご褒美だと思います。

あとがきに、面白くなるのはむしろこれからじゃないのかみたいなことがありましたが、実際私もそう思います。私は多分、地の東宮院の方が気に入るはずで、しかしそれがなぜあの沢井を奪いあう!? というのはどうでもいいとして、けど本当にまだまだ広がる余地があった。そんなところで終わったものだからちょっともったいないですね。けれど終わるには終わるだけの理由があるのでしょうから、まだこの人たちの話を読みたいぞと、そう思えるところで終わったことがむしろよかったのだと思うことにします。

  • 阿倍野ちゃこ『ようこそ。若葉荘へ』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2007年。
  • 阿倍野ちゃこ『ようこそ。若葉荘へ』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。

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