2008年7月10日木曜日

ろりぽ∞

  人間っていうのは、いくらでも変わりゆくものなんだなということを実感しました。というのは、『ろりぽ∞』、最新刊である第5巻を読みまして、そうしたらこれがまあべらぼうに面白いわけです。こんなことをいうと申し訳ないけど、この漫画は私にとってはちょっと微妙な位置にある漫画でありまして、それこそ最初の頃は面白がりようがわからないでいたのでした。好きか嫌いかでいえば、好きです。けれどこうして取り上げようとなると、どうにもこうにも書けなくて、だから第4巻で設定の種明かしがされるまで、ずっと沈黙していたのですね。でも、第5巻はべらぼうに面白かった。それは、漫画が熟したということもあるのでしょうが、同様に読者である私も熟したということなのだと思います。設定が出そろい、キャラクターを把握して、漫画の動きに目が追いつくようになった。遅れずついていけるようになった。どうもそのように感じています。

『ろりぽ∞』は、メイド喫茶が星を巡って格付け決定戦、通称メイドコンペを繰り広げる、そんな架空の日本を舞台とする漫画であるのですが、当初、必殺技を駆使してのメイドコンペにどうもついていかれなかった、そういう話は以前にもしていました。けれど、思いもしない展開が私を打ちのめして、うわー、そういう仕掛けだったんか。そして、今、あの悪夢を再びもくろもうという勢力が、着々と準備を済ませて、さあ、どうなる? これが前巻までのあらすじ、というか、私の把握状況。ですが、第5巻読んでさらに驚いたのが、第4巻でのぶちかましはとりあえず置いておいての、大洋、クヌギフォーカス。そしてメイド仙人の下での特訓に明け暮れるというその破天荒ぶりでした。ええーっ! けどこれがべらぼうに面白かったというのですね。

メイド喫茶の最高峰、アンリミテッドのトップウェイトレスである元山クヌギ。同じくアンリミテッドのトップウェイターである鎌ケ谷大洋が火花を散らす! 前代未聞の同店舗メイドvs. 執事コンペ、しかしそれは敵意ましてや憎しみに発するものではなく、笑顔を失ったクヌギを守ろうという、大洋のいじらしくも懸命な愛の表明であるというのが泣かせるではありませんか。けど、コンペにいたるまでのじらしっぷり。大洋はあからさまにクヌギが好きなのにツンデレ、一方クヌギは絶望的に鈍くて、もう報われない報われない。してその関係はコンペ本番にまで持ち越され、三連大告白展開に結実するにいたっては、もう転げ回らん勢いです。というか、まさかの二回不発。普通なら通じるところが通じない。そんなわけで、どんどん直球になっていく告白、ボルテージは上がりっぱなしですがな。面白かった。笑った、笑った。そして、ちょっと泣いた。

ちょっと泣いたといえば、大洋の姉、鎌ケ谷みさきの特訓風景。徹底してのギャグ展開、シリアスよりもコメディ色が強い、そんな描写にて描かれるクライマックスは、いわばお約束、ジャンルに対するパロディとでもいうべきものであったというのに、それがむやみやたらと効きました。私、ちょっと疲れてるのかも知れませんね。災害に巻き込まれた弟を助けるべく、単身荒れた川を渡るみさき。いよいよ危機というその時、自身の得意とするターンを最大限に駆使して、苦境を乗り切ってみせる — 。

冷静な側の私は、これは笑いどころだろうというんです。どう考えても、悪乗りのギャグだろうっていうんです。けれど、情の私が泣いてしまう。そして、みさきに差し伸べられた手の確かさに、ああもう、決壊ですよ。泣いて笑って、笑って泣いて。きっと、今1巻から読み直したら、これまでの評価ががらりと変わるだろうと思われて、ええ、重ねた巻数、読んできた時間が私に働き掛けて、すっかり変化させてしまったのでしょう。だから私は、今自信を持って、『ろりぽ∞』は面白いといえます。距離の取りよう、関わりようがわからず、少し遠巻きにしていた昔が嘘みたいに感じています。

  • 仏さんじょ『ろりぽ∞』第1巻 (REXコミックス) 東京:一迅社,2006年。
  • 仏さんじょ『ろりぽ∞』第2巻 (REXコミックス) 東京:一迅社,2006年。
  • 仏さんじょ『ろりぽ∞』第3巻 (REXコミックス) 東京:一迅社,2007年。
  • 仏さんじょ『ろりぽ∞』第4巻 (REXコミックス) 東京:一迅社,2007年。
  • 仏さんじょ『ろりぽ∞』第5巻 (REXコミックス) 東京:一迅社,2008年。
  • 以下続刊

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