2008年8月28日木曜日

アットホーム・ロマンス

  アットホーム・ロマンス』の第2巻が発売されて、もちろん私は当然のように買って、読んで、そしてたまらない気持ちになって — 、それはこの漫画にあふれている熱い思いに触れたからなのではないかと、そんな風に思います。熱い思い。主人公竜太朗がママに向ける過剰な愛であるのか、あるいは姉暁子の弟への暴走する愛であるのか、いやけれどそれだけじゃありません。この漫画に出てくる人は、端的にいえば、多かれ少なかれみんな変態で、向かいどころがどことなく間違っている、そんな愛を胸いっぱいに湛えているのですが、その溢れんばかりの愛はあふれて、家族に、友人に、惜しみなく注がれるのですね。その助け、支え合うかのような関係が素晴らしい。読めば、胸に熱いものが注がれるような、そんな気持ちになるのです。

その熱さはもちろん2巻でも健在、というか、1巻を上回る高まりを見せて、読み進むほどに息苦しさを感じるほど。強烈に濃密な漫画なのです。巻頭のカラー描き下ろしもたいがいなんですが、本編開始してからも異様に濃厚、息つく暇もないというか、息継ぎする余裕がないというか、怒濤のように押し寄せてきて、有無をいわさずさらっていく、その勢い、そのテンションは特筆すべきものがあります。そして私はこの漫画に描かれる世界、ちょっといびつな愛の支配する世界に、参ってしまっているのですね。その参り方具合は、ちょっと尋常でないほど。流れる涙を拭いもせずに、登場人物、彼らの交わす情に没入して読む。いや、これが冗談でないからまずいんです。一見すると馬鹿で異常で、変態そのものでしかない少年少女の物語が、胸を打つ、心を捉えて離さない。むしろ彼らが過激な愛を貫くがゆえに、目が離せなくなっている。ええ、私はこの漫画に参っています。

そして私は、彼らの今いる地点に立ち止まることを潔しとしない、そんな姿勢にこそ共感するといっていました。2巻でやってくれたのは、親父でしたね。元プロレスラー、ガスマスクマン。メインストリームはあくまでも竜太朗でそして暁子であるのですが、この父親がついに吹っ切った。この回は本当に渾身のできであった、そのように思っています。息子との関係、夢に見た息子との対戦を通して、自分自身に向き合った。そんな父親の思いがひしひしと伝わるような回で、本当に素晴らしいと思ったものでした。連載で読んだ時もそうなら、単行本においても同様。あの親父さんはきっと立ち直れるな、そうした予感に満ちた締めに、この漫画の行く末を思ったのでした。今は母と姉と長瀬奈津子の間で揺れている竜太朗だけど、この父、勇の息子なのだから、必ずや変わることができる。そしてその変化とは、母を捨てることでなく、姉と離れることでなく、愛を胸いっぱいに抱きつつも、愛にとらわれ迷走することのない、そんな強さを得るということなのだろうなと思ったのでした。

しかし、こんなにも強烈な個性を発揮する漫画なのに、変にすっきりとして、さわやか? な読後感が得られるというのは、不思議なものだと思います。心の奥のもやもやが押し流されたみたいな、そんな気分にさえなれて、ああいい漫画だ、本当にいい漫画です。そして、多分、こうした気持ちになれるのは、この漫画に満ちている、人間が好きという、そんな思いのためなのだろうと思っています。弱くとも、今はくじけてしまっていても、きっと大丈夫、そういう応援の声が聞こえてくるような漫画です。自分もがんばろう、読めばきっとそう思えるような、不思議と健やかな漫画であります。

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