2008年9月3日水曜日

ひだまりスケッチアンソロジーコミック

  ひだまりスケッチ』はアニメ化もされて、人気も上々のようですね。第二期も出たらしいですし、見てないんで、どんなのかわからないんですけど。アニメを見ないのは、アニメみたいなくだらないもの見てられるか! という理由ではなくて、原作こそが最高、アニメは駄目だ、というような理由でもなくて、単純に時間がないんです。いや、情熱もないのかも知れません。私のアニメに、あるいはテレビに向ける情熱は、もう何年も前に枯渇してしまったようなのです。さて、『ひだまりスケッチアンソロジーコミック』もついに第3巻が発売されて、へー、人気あるんだなあ。他人事みたいにいっていますが、ちゃんと2巻も買ってます。

アンソロジーに関しては、好き嫌いがわかれるジャンルというのでしょうか、受け付けない! っていう人があれば、好き! っていう人もあるようで、私はといいますと、割と好きなほうです。なにが好きかといえば、参加している人たちのスタンスといいますか、個性といいますかが、いつもと違うように現れてくるという、そんなところがいいみたいです。いつもと違うなんていってますが、それこそいつもどおりの作風で突っ切るみたいな人もいて、けど面白ければそういうのもありですよね。そうかと思えば、すごく遠慮して、普段のらしさを出さない人、原作の雰囲気を壊さないように丁寧に作り上げるような人もあって、そういうのにももちろんいいなと思うものがあって、結局は与えられた舞台、与えられたキャラクター、条件でもって、よいものを作り上げる人が正しいってことなんだと思います。

そして、こうしたアンソロジー本の効用なんですが、どうも好きな作家を再認識させてくれるという効果があるみたいですよ。ってのはですね、カバーをはがしたところに三上小又の絵があって、うわあ、この人の絵、好きだなあ、単純にそう思った。『ゆゆ式』を連載している人なのですが、ええと、なんかテーマを決めて、調べる漫画? なんか緩さの中に不思議な魅力があって好きなのですが、その好きさの理由には絵の持つ雰囲気が大きく関わっていると気付かされた、そんな気がするのですね。で、掲載されている漫画はというと、ものすごく自由にやっていて、ああ、あの段ボールのだるま落としはそういうことだったのか。表紙の絵の意味はわかったけど、漫画はよくわからない雰囲気に満たされていて、原作の作風に寄るのではなく、自分の得意で描くタイプの方なんでしょうね。けど、好き。でも『ひだまりスケッチ』である理由はないような、けどすでに提示済みのキャラクターだから成立するネタでもあるような。わかりません! わからないので、次。

原作に寄り添おう寄り添おうとしていた、そういう姿勢が一番顕著に感じられたのは、冒頭の鈴城芹だったように思います。『看板娘はさしおさえ』の人ですね。登場人物の個性、台詞の言い回しも原作のらしさを感じさせるもので、しかもそれが無理なくこなれているというところに漫画のうまさというものを思います。けれどそれでもこの人のらしさは、ネタの取り回しなど、端々に現れてくるのですね。こういうものが個性って奴なのかなって思って、ちょっと嬉しくなる。ええ、こうした感じを得るというのも、アンソロジーの楽しみのひとつであると思います。

そして、私の気に入ったのは、カザマアヤミの「ヒロさんとゆの」でした。モノローグ的展開の序盤。しかしあくまでもモノローグ、独り言であったはずのものが、繋がっていくんですね。それは見ていてほほ笑ましく、そして心と心の繋がる感覚といったらいいでしょうか、思いやる人がいれば、そうした気持ちもわかったうえで包み込んでくれる、おおらかなやさしさを持った人もいる。その互いの気持ちの触れた後に残す感触。よかった。嬉しさに、涙ぐむ思いでしたよ。

ええ、このカザマアヤミという人は、調べると『まんがタイムきららフォワード』で『なきむしステップ』を描いている人。ううう、どんな漫画だっけ? ……、ああ、うさぎの漫画か! あれ、好きだよ。説得力ない? けど、好きなのは本当です。

アンソロジーにはギャグ系があれば、こうした情緒に傾きを見せるものもあって、私はこと情緒、感情の面に深く沈もうとするかのような漫画が好きです。しんみりとさせるような、ちょっと辛気臭いような、けれど静かに心に触れてくるような、そんな漫画が好きなのだと思います。だから「ヒロさんとゆの」に魅かれてしまうのも当然なのでしょう。ええ、いい漫画であったと思います。ヒロさんのお姉さんっぷり、その余裕も感じさせる表情、しぐさに、くらっときてしまったのは内緒です。

最後に。巻末のコメント、ああいうの好きなのですが、むねきちのイラスト、面白かった。あれは3Dモデルを起こされたのでしょうか。ラフな絵で、けど変にハイテクで、そのギャップも含めてなんか笑みを起こさせるような、そんな面白さがあったように思います。あ、むねきちという人は『まーぶるインスパイア』の人、『プクポン — みんなのはじまり』の人です。『プクポン』、好きだったんだけどな……。いやいや、ここでいうことじゃありませんな。

ともあれ、面白かった。好きな感じの漫画、好きな人の漫画、イラスト、いろいろ見られて、私にとってはお得感の強い一冊でありました。

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