2008年10月31日金曜日

ドボガン天国

真田ぽーりんの『ドボガン天国』の2巻が出ています。私はこの人の漫画好きだから、当然のごとく買っているのですが、ちょっと2巻はペンギンの出番が少なかったなあ、なんて思っていたら後半に追い上げがあって、よかった、ペンギンの火は消えない! さて、『ドボガン王国』は、ペットショップドボガンを舞台とした動物四コマであります。ヒロインとんびを筆頭に、動物好きの店員がそろったこの店は、お客様より売り上げよりも、買われていく動物の仕合わせの方が大事ときた。いや、実際ペットショップで働こうなんていう人は、もともとから動物好きであるのが大抵でしょうから、現実のペットショップ店員も内心は彼らと同じなのだろうな、そんな風に思って、ですがペットショップ店員の話を聞くと、現実は決して甘くはない、厳しくつらいことも多いのだということを実感させられたりするからたまりません。

『ドボガン王国』においては、そうしたペットショップの裏側とでも申しますか、そうした部分は描かれず、やはり漫画ですからね、読んで楽しいものに仕上がっています。店長は売り上げ第一で、やたらシビアなことばかり口にするけれど、それこそ非人道的というか、動物愛護の観点から見ると信じられないことをいう人だけれど、でもいわばこの人はペットショップで働くということ、その現実を体現するキャラクターなのだと思います。きれいごとではない。育ちすぎて売れなくなった動物の行く末、どこのペットショップでも同じとは限りませんけど、なかなかにハードな話もあって、あんまりだから引き取って自分で飼ってるんだけど、これ以上はもう無理ですみたいなことも聞いたことがあります。まあ、でも、この漫画にはそうした描写は出てきません。育ちすぎて売れ残ったヨウムがいても、店で面倒みるかなんて話になって、こういうところはほのぼのなのでしょう。

しかし、それでも動物を飼うということ、動物に関わるということの責任、意味を突きつけるようなエピソードも出てくるから、決してやさしい、甘いだけの漫画ではありません。人間の都合で捨てられる動物たち。彼らの行く末は、決して仕合わせにはならない。それは誰もが知っていることであるのだけれども、それでも捨てられる動物は絶えることなく、そして真田ぽーりんはそうした現実を描いて、感傷を多少は交えつつも、そこに人の責任を、なすべきこと、考えなければならないことを提示するのですね。その時に際立つのが、普段はなんだか嫌な人に感じてしまう店長で、あの人のシビアさは現実に一番近いゆえのものなのだ、そう思わせます。これは漫画で、夢のようなこと、あって欲しいと望むことを描くことは可能だけど、現実に起こっている問題はそうはいかない。そうした現実に対する解を担うのがほかならぬ店長で、時に残酷であったり、時に酷薄だったりする彼の態度こそは、この漫画の天国的な状況をより一層尊いものにさせるように思います。

さて、『ドボガン』2巻ではちょっと恋愛にまつわるエピソードが出てきて、趣味がすごく合う異性との出会い。ある種、マニアには夢のようなエピソードであるのですが、深く踏み込んだ二人であるがゆえの悲劇! いや、詳しくはいえねえよ。知りたかったら読んで下されい。でも、趣味である、こだわりである、そうしたものが近ければそれだけ、ゆずれないポイント、見過ごせないポイントが、致命的に存在するのは避けられない。これは、実際にあってもおかしくない。コミカルに描かれていますけどね、うまく運びそうな気配さえ感じさせますけどね、でも現実だったらどうだろう。あるいは私だったら? いろいろ思ってしまうのは、なんかほっとけない、そんな気持ちにさせられてしまうからなんだと思うんですね。

けど、悪いけど、応援はしねえよ。理由はいわないけれど、応援はしないよ。ああもう、絶対するもんか。

  • 真田ぽーりん『ドボガン天国』第1巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2007年。
  • 真田ぽーりん『ドボガン天国』第2巻 (ヤングキングコミックス) 東京:少年画報社,2008年。
  • 以下続刊

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