2008年11月17日月曜日

脅迫

ちょっと前に、はじめたっていってましたけど、クリアしましたよ、『脅迫』。PC-9800時代のゲーム、プラットフォームはDOSで、ハードウェアの制約からカラーは16色しか使えないんだけど、プレイしてみると、そんなことちっとも感じさせない充実ぶりでした。もし私がこのゲームで表現されている内容を苦にしないなら、きっと充分に楽しめたろう、そう思うのですが、いかんせん、私には刺激が強すぎました。なんというのだろう、ヒロインが脅迫され、関係を強要されるのですが、私はことこの強要というのがあわないらしく、かわいそうでかわいそうで仕方がなかった。ルートはいくつかあるけれど、ベストと思われるものでも、決して仕合わせな結末だったとは思わない。いや、このゲームの楽しみは、いかにヒロインが救われないかという、そこにあるのでしょうから、やっぱり私には向かないゲームであったと、そのように思います。

しかし構造はというと、ヒロイン=プレイヤーキャラであるわけですから、ちょっと倒錯的といえばそのような気がします。プレイヤーはあくまで男性であるわけだけど、男性が女性の視点で、性的にひどい目に遭わされるという状況を眺める、あるいはそうした方向に進ませるという仕組みなんですよね。果たしてそうしたシーンでプレイヤーが感情移入するのは、行為を強要する相手方の男であるのか、それとも望まぬ行為を強いられているヒロインの側なのか、そのどちらかでずいぶん楽しみの質は変わってくるように思います。

単純に、この清楚なお嬢さんがどんなひどい目に遭わされるのだろうか、という期待でもってプレイすると、それはやっぱり強要側の楽しみにのっかっているように思うのですが、もしプレイヤーがヒロインの立場に立つというのなら、それは少々被虐的な要素が見えてくるように思います。今ヒロインは、すなわち私は、こんなひどい目に遭わされてる! そこに喜びを見出すわけですが、多分こういうプレイヤーはまれだろうと思うのですね。じゃあ、やっぱり強要側に立つしかないのかといえば、そうではなく、もう一人、ヒロインに告白した男性、ヒロインの恋人である良介の立場というのもあるかと思うのですね。

このゲームは結局のところ、良介のために一線を防衛するという、その一点に集約されるのですが、これ制作者にいわせればゲームにするための苦肉の策だったというのだそうですが、ともあれ、ヒロインを強要者の好きにさせるのではなく、可能な限り逃げる、というか、かわすことが要求されます。いわば良介のために操を立てるわけですが、この良介的視点をとることで、このゲームは恋人を望まぬ相手から守る、あるいは守り切れずに奪われてしまうといった展開を期待することができるのです。この構造を一言で言い表すなら、そう、寝取られということになると思うのですが — 、私、この手のジャンルもよくわからんのです……。なんで、好いた、惚れた相手を、見知らぬ、いや知ってればなおさらか、誰かに奪われないといけないのよ。そう思う私には、このみっつ目の視点もつらいことには変わりなく、ええ、『脅迫』を楽しめる可能性はもう皆無といってもいいくらいでした。

それでもクリアできたのは、偉大なるヒント機能のおかげです。このゲームにはヒント機能があって、どの選択肢が正解なのかを教えてくれるのですね。もちろん、オンにしておかないといけませんよ。そして私は正解機能をオンにしたものだから、どの選択肢を選んだら、どのエンディングに向かうかを、余すことなく知ることができたのです。って、ゲーマーの風上にも置けねえな、こいつ。ええ、ごめんなさい。でも、テキスト追いたくなくて常時スキップだったから、これがないと進むに進めません。でも、テキストすっ飛ばしてるものだから、突然妹が巻き込まれてたりして、ええーっ、いったいなにがあったんだ!? 驚いている間に、姉妹でひどい目に遭って終わり。うー、爽快感がないよう。一応、自分たちの力で困難を克服するエンドもあるのですが、それにしても支払った代償が大きすぎるだろうと、そんな風に思う私はやっぱり向いていないのだと思います。

あ、そうだよ。校門で良介にあって、この件を相談し、翌朝一緒に張り込んでもらうエンドがあるじゃんか。これだと、誰も不幸にならない、だって脅迫は成立せず、もみ消されてしまうんだもの。いや、駄目だ。一人不幸なままだ。むー。つらいゲームだなあ。

でも、ヒロインやその友人、家族の身に及ぶ不幸に、たまらない喜びを感じるという人にはきっと楽しいゲームです。あるいは、そうした不幸に身を切られるような思いをするのがもうたまらんという人にもきっとおすすめ。

……私はヒロインが仕合わせなのが好きです。

さて、『脅迫』は『遊べる!!美少女ゲームクロニクル《PC98編》』に収録されていたゲームでした。この雑誌には、あと七本のゲームが収録されているから、そこから次にプレイするものを選ぶとするなら — 、PILの『女郎蜘蛛』かなあ。って、よりによって縛り! いやね、苦手なジャンルからプレイしていかないと、絶対中座するから。だから、おそらく次は『女郎蜘蛛』でお会いすることになるかと思います。

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