2008年12月2日火曜日

こどもすまいる!

 『こどもすまいる!』は、見た目子供の保育士さんが、保育の仕事に奮闘する様を描いた四コマ漫画。掲載誌は『まんがタイムきらら』、ゆえにD☆V系となるのでしょうが、いやいや、見場は確かに可愛いし、萌えといっていいのか、そうした感情に訴える作りになっているのですけれど、工夫を持って保育の仕事に取り組む保育士三人の頑張る様もなかなかのものだと思うのですよ。毎回の作りは、ひとつのテーマを軸に緩やかに四コマを繋げていくという、最近の主流といえるようなものであるのですが、毎回の一番最後に添えられるおつかれさまの言葉がですね、すごくしっくりとしていい感じ、効果的に働いてほっとするのですね。漫画だから、面白く、楽しく、大げさに物事を描いて、そのせいか仕事をしているというより、一緒に遊んでいるというテイストが強く感じられるのですが、最後の一日をねぎらう言葉に触れれば、、ちょっと大人の世界に戻ってきたように感じて、ああ、お仕事ようお頑張りやしたと、そんな気持ちになるのですね。

けれど、これはカテゴリーとしてはお仕事四コマとはならない、そんな感じもして、それはいったいなぜなんだろう。職業もので保育士といったら『ゆずりは!』を思い出しますが、これは断然保育士側に視点が置かれていて(特に後半)、保育という仕事の現実を感じさせるようなところも多々あって、職業ものとしてのリアルが感じられたものでした。対して『こどもすまいる!』はというと、ずっとファンタジーに寄っていると感じられます。現実的な要素を減じ、漫画としての表現を強めているといったらいいでしょうか。本当ならあり得ない仕事ぶり、お酒とかね、そうした要素を絡めつつ、ギャグにしつつ、やり取りのおかしみを追求して、リアル路線ではない面白さを演出しています。

こうしたリアル路線から外れたところが、職業ものとしての雰囲気よりも、保育園コメディとしての色合いを強めさせているのだと思います。そして、これがなにより重要なことだと考えるのですが、そうしたコメディが面白いんですね。この漫画は、割にくっきりと四コマ単位で落ちを付けていくタイプであるのですが、その落ちのついたという感じが心地いい。そして、そのネタがよく練られているなと感じられます。おそらくはサービス精神の旺盛な作者です。特筆すべきは欄外に描かれる登場人物紹介、一回として出来合いですまされたことはなく、設問に対する答でもって、その人となりを表現しようという凝ったものです。そうした、読者を面白がらせよう、喜ばせよう、よりよいものを作ろうという工夫が、当然本編にもあってしかるべくあるのですね。そうしてできあがるのが、D☆V的華麗さを持った、萌え心をよく喚起するコメディ、土台はというと割と正統派っぽい四コマらしさがあったりして、そのハイブリッド感、芯の強さはそのままこの漫画の魅力であるといっていいかも知れません。

そして、作者の旺盛なサービス精神、工夫の心は、主人公の保育士たちにも受け継がれていると思うのですね。その傾向は特に初期の、連載化するまでの回に顕著であったと思います。ああした誰かを楽しませようという精神、大切だなあって思います。できないことがあったとしても、できることを精一杯にがんばる。そうした奮闘が、最後のコマの、おつかれさまでむくわれる。ほっとするのですよ。

  • 娘太丸『こどもすまいる!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 以下続刊

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