2008年12月5日金曜日

とらぶるクリック!!

 つい最近、『とらぶるクリック!!』についてなんか書いたような気もするけど、気にせず今日も『とらぶるクリック!!』です。いやね、あんまりに大貧民に偏った内容だったので、いかがなものかと思いまして。そして、今回書こうと思うのは、前回少しだけ触れた桃乃についてです。

杏珠たち下級生グループとは一線を引いているようにも見える桃乃。彼女の距離がもっと縮まったらなあ。なんか今の、ひとり、輪から離れることを選んだような状態だと、ちょっとさみしそうで、そうかだからあんな惨事が……。

これを書いたあと、ずっと考えていたんです。ひとりひとりが、各々のポジションを確立していくなか、桃乃についてだけは、なにか異質と感じられてならない。その異質と感じる理由ってなんだろうって思っていたんです。

第2巻でメンバーに入ったなつメロ、榎本棗は、なにかと割を食う、運の悪い、そういったどこか報われない印象のある役どころでありましたが、第3巻中盤あたりとなると、すっかり溶け込んで、ついには杏珠と一緒になって無茶をしてしまう、そんな娘になってしまいました。いや、私はそれが嬉しいのですよ。どことなく人に距離を置いていた彼女が、今ではすっかり仲良しさんだ。いやいや、本当によかったなあ。

なつメロがあそこまで溶け込めたのは、杏珠の人好きのするキャラクターあってのことだろうと思うのですが、同時に部長、皇藤乃の存在も大きかったのかなと思ったのでした。ほら、正月初詣での回なんかですね。どことなくかたいなつメロに、もっと大らかにいこうよといいたげな藤乃、杏珠ペアのアプローチはちょっと沁みました。こうした出来事を重ねることで、棗は自分の居場所、ポジションを確固たるものにしていったのかなと。あるいは、友人との距離をつかむにいたったのかなと、そんな風に思い、そしてより素直さを増していった彼女のらしさに、ちょっとした幸いを感じるのですね。

そして、本題。桃乃であります。この人は唯一の上級生、一年生四人とは立場が違うゆえか、少し距離を保っています。この距離について、私は当初、桃乃の超越的な立場を演出するものであると思っていたのですね。一年生たちのトラブルを眺めて楽しむようなところのある人です。また積極的に、トラブルないしは騒動を演出しようという人です。その能力は高く、策謀に長け、人に有無をいわせずいうことを聞かせることのできる押しの強さを持った人。けれど、そうした特権的キャラクターであると思われたこの人は、特権的ポジションをとるがゆえにどこかさみしいと、そんな風に思えるようになってきてしまったんですね。

この人は、ほとんど参加していない、そんな風に感じられたからかと思われます。罰ゲームを設けてのゲーム大会、大貧民もそうですが、テストでの対決、PCゲームでの対戦、その他もろもろあったけれど、そのどれもに彼女は参加していない。果たしてそれは、特権位置から見下ろして楽しむがゆえ、そのようにとるか、あるいは高みから降りて輪の中に入っていく術を知らないがため、そのようにとるか、そのとりようでずいぶん印象が変わってきます。そう、私は今は、彼女のありようは後者である、そのように捉えています。

あの温泉での惨劇。あれは、結局は、先頭に立ってはしゃぐ杏珠、そして姉、藤乃に着いていくことのできなかった、彼女の引っ込み思案の裏返しであったのかな、そんな風に思えてならないのですね。第3巻描き下ろしで語られた藤乃と桃乃のエピソードですが、あの約束が結果的に姉藤乃に桃乃をロックさせてしまうことになったのだとしたら、少々皮肉です。独りぼっちのさみしさゆえに人を求めて、そして温かみを与えたのが藤乃であったとしても、それが桃乃にとってのすべてになってしまったのではちょっと浮かばれない。実際、桃乃の行動は徹頭徹尾そのように描かれて、藤乃大事、藤乃だけを見続けています。第3巻末尾のエピソード、PC部の過去、あの話はちょっと私も好きな話なのですけれど、藤乃はほうっておけない妹桃乃を守るため、部長としての存在を残した。しかしそのためか、それともそうでなくともそうだったのか、桃乃にとってPC部は部長のPC部であり続けることになってしまったのかも知れない、そう思います。

下級生たちにとってPC部は、ほかならぬ彼女たちのPC部で、藤乃もそれはわきまえています。彼女は現在はOGであり、卒業生としての立場で、現役部員たちの中に飛び込んでいっている。しかし、現在のPC部に桃乃はいないんですね。桃乃は、過去の、藤乃が部長であった時代にひとり留まっています。PC部を守るのは藤乃のPC部だから。PC部に在籍するのは、藤乃とのつながりが最も強い場だから、そう思えてなりません。

桃乃は、素直になる方法を知らないのかなあ。一歩踏み出せば、まさしく今のPC部の、濃厚で豊かな人の輪に連なることもできるのに。けれど、桃乃にとってのすべては藤乃であるから、桃乃は目の前にある温かな人たちの場を見過ごしにしてしまって、それが時に彼女を孤立的に見せてしまう。それが、私にはひたすらさみしいと感じられます。

これから先、桃乃にまつわるエピソードがどのように描かれるか、それとも描かれないまま進むのか、それはわかりません。ですが、もし桃乃が姉への執着から自由になって、自分の一歩を踏み出すことができたら、きっと彼女の世界はいっときに色を変える、そんな風に思わないではおられません。これは結局は私の願望でしかないことはわかっています。けれど、そうした思いを持ってしまうほどに、彼女らの存在は豊かに迫ってきます。たかだか漫画の、架空の人物に過ぎないのにね。けれど、それがたかだかではもうすまされない感じで、それはやっぱり彼女らの存在感の近しさ、雰囲気の温かさがためであると思うのです。

ところでだ、私は昔、よく菓子を作ったものなのですが、スコーン、あれはちょっと不評じゃった。ジャムを切らしたのが失敗でした。プレーンとココアのミックスクッキー、あれも作ったことありますよ。棒状にした生地を冷やし固めてから、ナイフで切っていくんですよね、結構手軽で簡単なんです。混ぜて、伸ばして、切って、焼くだけだから。なんの話してるかわからないという人は、『Webクリ!!』第20回をご覧ください。うん、コーヒーだっておいしーよ。

引用

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