2009年2月27日金曜日

けいおん!

 音楽を題材とした漫画のブーム、その波は四コマ漫画にもやってきて、『けいおん!』、『うらバン!』、そして来月には『ひかるファンファーレ』もひかえていて、もう、なんだか嬉しいなあ。喜んでいるわけですが、しかしそのうちのひとつ『けいおん!』がアニメ化されるいうのですから、驚きです。いやね、長く四コマ漫画読んできたわけですが、こんなにも次々アニメ化される日がくるだなんてこと、夢にも思っていませんでした。私は今は脱テレビしてしまったので、きっと見ることはないでしょうが、でもすなおにうれしいことであるなあ。喜んでいるのであります。

さて、その『けいおん!』は、第2巻に入って皆さん進級しまして、そして新入生も迎えることとなりまして、ひとりは平沢唯の妹、憂。この人は軽音楽部には入ってません。そしてもうひとり、中野梓、軽音楽部に新しく入った一年生でギター。使うギターはフェンダー・ムスタング? なんか、メジャーどころを避けている? そんな風に感じないでもない選択は、わりと私の好みであったりします。いやね、私もエレキギター持ってるんですよ。全然弾いてないけど。ひとつはエピフォン・ジャパンのレス・ポール。もうひとつは、ZO-3の7弦ギター。これもまた全然弾いてないけど。弦もしっかり錆びちゃってるし、いかんよなあ、なんとかしないと。

梓のムスタングを選んだ理由というのは、手が小さいからというもの。ネックが細くないと、といっていたけど、多分、スケールの問題もあるんだろうな、なんて思ったりして、スケールってのはなにかというと、この場合はネックの長さないしはフレットの幅のことです。この漫画に出てくるギターでいえば、唯の弾いているレス・ポールはミディアムスケール、そして梓のムスタングはショートスケールでありまして、ミディアムスケールはネック長(正確にはナットから12フレットまでの長さ)が628mm、ショートは610mmです。そして、フェンダー・ストラトキャスターなどはロングスケール(レギュラースケール)で648mm。この数センチの差から生じるフレットの間隔の違い、それを梓は考慮に入れて、指が短くても弾きやすいショートスケールを選択したのかも知れないなどと思ったりなんぞしましてね、ちょっと面白かった。で、こうした演奏しやすさを考える梓に対し、徹底的に感性の人である唯は見た目の可愛さからレス・ポールを選んだ。あの重いギター(ストラップかけたら、鎖骨が折れるんじゃないかと思うほど重い)。それをこの人は、また感性で、気のおもむくままに弾いているようで、こうしたアプローチの違いみたいなのが出てくるところも面白く、そして梓(理論派なの?)が理屈抜きの唯に感じるもやもや、すごくよくわかるような気がします。ってのは、私もどうやら理屈派であるようでして、けど音楽ってのは理屈なんてどうでもいいから、音が出りゃいいって面もあるわけですよ。指がばたばたでも、コードの押え方が人と違っていても出りゃいいんです。スタンダードでないことを恥じるのではなく、それが個性だ、オリジナリティだっていいはればいい。唯はまさにオリジナリティ志向としてデザインされているようで、で、本番になると輝いて見せるタイプに設定されていて、ああ、ちょっともやもやする。このもやもやは、ちゃんと言葉にすると嫉妬になるんではないかなと思います。

連載で追っていたときには、1巻同様に、やっぱり音楽については薄めかな、なんて思っていたのですが、こうして単行本になって、まとめて読めばやっぱり印象は違ってきて、これくらいでちょうどいいんじゃない? と思える濃さに仕上がっているように感じます。私なんかは、もうちょっと濃くてもいいかなって思うけど、そりゃ自分も音楽やってる人間の言い分で、音楽は聴くだけって人には、これぐらいじゃないと重いでしょう。音楽がほどほどにあって、けれどそれと同じくらい、学生としての日常や遊びたい気持ちが描かれる、そういうバランスが、楽しみとして音楽に取り組む人の温度をうまく表現しています。バンドってのも楽しそうだなあ、そう感じさせるのは、音楽や楽器の魅力もさることながら、仲間たちとわいわいとやる、そうした場がしっかりと描かれているからなのかも知れません。

ところで、作者もギターを弾く人、しかもレフティであるんだそうですが、著者近影の代わりに掲載されたギター三本、みごとにギブソン系で、レス・ポール、同DC、そしてSG。ハム好き? けどこういうの見ると、なんかまたエレキギターが欲しくなるなあ。買いませんけど。バンドなんかもやってみたくなるなあ、友達いないから無理だけど。なんて思ってふらふらしてしまうのは、ちょっと感化されてるのかも知れませんね。正直なところ、楽器店で貼り付いてしまう澪の気持ちはよくわかる。わかるからこそ、ちょっと危険な漫画であるんです。

欲しくて買えない澪の気持ちはよくわかる、といったわけでもないのですが、私のちょっと欲しいと思っていたギター、Les Paul Standard RAW POWER EMGってやつなんですが、どうやら市場から払底してしまってるみたいです……。馴染みの楽器屋のサイトにいったら、消えていました……。ううう、残念。まあ、買えないから、どっちでもいいんですけど。

  • かきふらい『けいおん!』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • かきふらい『けいおん!』第2巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 以下続刊

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