2009年2月16日月曜日

オリジナル・リガチャー Tシリーズ

リガチャーを買うことに決めました。ソプラノサックス用。今使っているのはバンドーレンのマスターラッカーなのですが、これは決してこれがいいと思ったから買ったのではなく、当座、これしか選択肢がなかったから、なんです。もし私がセルマーのマウスピースを選んでいたなら、選択肢は多様にあったのですが、残念なことに私の好みはバンドーレンでしてね、そうなると驚くほどに選択肢が狭まります。バンドーレンはセルマーよりも若干外径が大きいため、セルマー用にデザインされているリガチャーは使えないと考えた方がいい。実際、セルマーのリガチャーは駄目、最有力候補だったハリソンも駄目、試奏しようと思ったリガチャーのことごとくが使えず、純正以外で唯一使えたのがロブナー。しかし、これ重くって、私には到底無理。といったわけで、純正品を買いました。オプティマムでなくマスターなのは、オプティマムが在庫してなかったから。冗談抜きで、選ぶ余地などなかったのです。

けれど、実はもう一種類、候補に入れてもよかったろうリガチャーがあったのでした。それは、Tシリーズ。広島交響楽団のクラリネット奏者、高尾哲也氏の作っているバネ状のリガチャーで、一般にはくるくるという呼び名でも知られているといいます。しかし、なぜこれを選ばなかったのか。それも、店員おすすめの品であったというのに。

簡単な理由です。見るからに華奢で繊細なリガチャーです。それを無理に径の大きなマウスピースにはめて、ゆがめてしまったら一大事じゃないですか。買ってからなら、それでもいいでしょう。でも買う前から無茶はできない。なので、もうしわけ程度に合わせてはみたけれど、おっかなびっくりの試奏、その真価を知るまでいかず、結果最もオーソドックスな、言い換えれば無難でつまらない選択をしたのでした。

実際のところ、Tシリーズは価格がかなり安く、金メッキ、ピンクゴールドメッキで2500円、ロジウムで3000円と、他製品と比べてもコストパフォーマンスに優れています。だから、ひとつ試しに買っておいてもよかったかも知れないけれど、私はあんまりいろいろ小物を揃えるのは好きじゃないんですよ。これと決めたら、それを使い続ければいいじゃないか。って、それは思考停止っていうんじゃないのか? いや、ここは一途と思っていただきたい。脇目も振らぬ(視野が狭い)。それが私という人間です。

なのに、ここでTシリーズ リガチャーを買おうというのは、つまりマスターラッカーがあまり気に入っていないってことです。高音も低音もわりとまんべんなく出るんだけど、もうちょっと高音の抜けはよくなって欲しいし、低音も楽に出て欲しい。リガチャーを替えたら解決するのかといわれれば、替えてみんことにはわからんと答えるしかありません。けれどおそらくは改善するはず。というのはですね、経験上、接点の少なく軽いリガチャーになるほどに音の出はよくなるとわかっているからで、例えばセルマー純正(旧モデル)のリガチャーとハリソンを比べるとその差はかなり大きいのですよ。先日の試奏にしても、慣れている分を差し引いても、ハリソンは優秀でした。セルマーのマウスピースにセルマー純正のリガチャー、さらには他のモデル、逆絞めも含めて試して、ハリソンが高音の出に優位と感じられたものでした。リードを締め付けず、ソフトに、しかししっかりと押さえるからなのか。それはわかりません。ですが、これが愛用される理由は確かにある。そう思わせるリガチャーです。

ですが、もしかしたら、Tシリーズは、そのハリソンを置き替えるものになるかも知れない。

そうした期待もあったものですから、アルト用も注文してしまいました。散財ですね。けれど、それで発音やレスポンス、響きの問題が改善するなら、安いものです。

というわけで、今はリガチャーの到着する日が楽しみで、けれどかつてこれほどにサックスを吹くことが楽しいと思ったことはあったろうか。吹いていれば、思うようにならず、惨めな気持ちになることもあるけれど、でも今はただ吹けるというそのことが嬉しい。数年のブランクは無駄といえば無駄であったけれど、こうして新たな気持ちで向き合えるようになった、それを思えば意味のある期間であったのかも知れません。

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