2010年1月3日日曜日

Aチャンネル

 『Aチャンネル』、冒頭らへんを久しぶりに読んでみて、今よりもなおアグレッシブなトオルにちょっと驚きました。確かに最初のころは、こんなだったなあ。金属バットひっさげて、るんちゃんにまとわりつく悪い虫を、男といわず女といわず排除していく。けど、これ、るんちゃんにとっては迷惑なんじゃないか? といわれたら、そうでもないっていうのが味噌でして、るんちゃん、なんかいろいろ危うい娘さん。トオルがいないと、もしかしたら大変なことになるんじゃないかっていう、そんな娘さんだから、トオルが危機を排除している状況にむしろ安心してしまう。不思議と微笑ましい共生関係が成立しているのであります。

でも、最初はとげとげしかったトオルも次第に丸くなっていって、るんちゃんの友人、ユー子やナギに対しても懐いた様子を見せるようになって、なんじゃ、このトオルって子は可愛いなあと、いや最初から可愛かったんですけど、なおさらそう思うようになったのでした。といった具合に、キャラクターの可愛さ、絵の魅力に参ってしまっているところ大でありまして、さらに加えて、あからさまには描かれない色っぽさとかなんかも魅力であろうと思うのですが、けれどもちろんそうした要素だけで面白いとはならないわけです。

つまり、キャラクターの個性と彼女らの関係が描かれて面白くなるのですね。るんちゃんに関することとなるといつも必死で、過激な行動も辞さないっていうトオル。そのわりに微妙にコンプレックス抱えていそうなところとかね、そういうのが面白いんです。私の気にいっているのはユー子ですが、この人のなんでかいつも割を食わされてしまうところとか、それでもくじけたりひがんだりしない明るさや、困ってる人がいると助けずにはいられない人のよさとか、ああ、なんていい子なんだろう。もう、めろめろなわけですが、そのユー子には、なんでかちょっといじわるするトオル、そういうところもいいなって。別にいじめられたりしてるわけじゃないよ。むしろ仲のよさを感じたりするような関係で、こうしたじゃれあうような様子を見てると、自然とよいなと思えてくるのです。

この漫画では、るんちゃんが強烈な個性を発揮していて、ゆえに一番目立つのはるんちゃんとトオルであると思うのですが、けれどトオルは誰と組ませても味が出る、そんなキャラクターになっているのもまたよさになっています。ひとり学年の違うトオルですが、いつものメンバーとはまた違う同級生との関係の中で、困らされたり、けど無愛想に見えるこの子が意外に面倒見よかったり、そうした多様な顔の見えることでキャラクターが生き生きと息づくように感じられるようになってくるのです。それはトオルに限った話ではありません。彼女らのやること、思っていること、それらがたとえ突飛に見えても、過激に見えても、取って付けたような不自然さは感じられない。だから、ああ、この子はこういう人なんだって、自然と受け入れて、それで好きになれる。この人好きのよさ、親しみやすさが読んでいる私をとらえてしまっているのでした。

と、ここで、この漫画の魅力となる要素ってなんだろう、改めて問い直せば、最初にいったキャラクターの可愛さや絵の魅力に戻ってしまうように思えてしまいます。けれどその可愛さ、魅力、それらを読み手にしっかりと伝える見せ方のうまさがあるからこそなのだ。魅力的な人たちが、思って考えて動いて関わっている、そうした様がありありと見せられることで、魅力はより一層のものとなり、そして面白さも生み出されている。漫画の総体としてのたくみさというのは、確かにあると感じています。

  • 黒田bb『Aチャンネル』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 以下続刊

0 件のコメント: