2010年2月20日土曜日

グレン・グールドとの対話

 昨日発売の『まんがタイムきららMAX』に掲載のボウリング漫画『ラッキーストライク!』に、緊張のあまり普段どうやって投げているかわからなくなってしまったキャラクターがいましてね、まったくもってのスランプってやつですよ。ああ、あるある、そういうことってあるよ。いつもなんということもなくできていることに限って、土壇場でわけわからなくなってしまったりするんですよね。そうなったら最悪。考える程にわけわからなくなって、もう手がつけられないんだ。なんて思って、えらく気にいってしまったのか、風呂につかっていた時のこと、グレン・グールドの逸話思い出してしまいました。

グールドの逸話というのは、こういうのです。難しい箇所を練習している時、妙に焦って突っ込んでしまうような状態になってしまったことがあるとかいうのですが、それを克服するためにラジオを2台持ってきて、そいつをガンガン鳴らしながら練習することで克服したとかいうエピソードです。ノイズでピアノの音をかき消してしまう話は他にもあって、掃除機の騒音の話ですね。ピアノの音が掃除機の騒音によってかき消されてしまったことで、想像のうちに響く理想の音を発見したのだ、みたいな話。これ、うかつにやるとただ弾けた気になってるだけ、むしろ悪影響、なんてことになりそうですが、グールドは音に気持ちを移すことなく、ピアノを弾く指の感触をクリアに感じ取ろうとしていた。結果、理想的なタッチ、指使い、弾き方を追求することができた、というような話なんですね。

この話は、ジョナサン・コットの『グレン・グールドとの対話』に載ってたのだと思います。また類似の話は他にもいろいろあったはずで、なんせこの人に関してはエキセントリックな振る舞いが目立ったものだから、あることないこと? いろいろ書かれていたみたいですし、また本人もいろいろ書いたりしゃべったりするのが好きだったようですから、伝説じみた話やら、本当にたくさんあるんです。もちろんこの人はピアニストだから、ピアノやまたレコーディングに関するエピソードが多いのですけど、着眼点が独特とでもいったらいいのかな、そのため音楽にそんなに詳しくなくても面白く読めたりするんじゃないだろうか、なんて感じがあるんです。特に日本で人気の高いというこの人、その人気の理由は、これらエピソードの面白さがあったからなんじゃないかななどと思っているのです。

でもって、話をボウリングに戻すけれど、自然な投げ方、いつもどおりの投げ方がわからなくなった時はどうしたらいいんでしょうかね? どうも掃除機やラジオでは解決できなさそうです。というところでまたグールドの逸話思い出して、それはテル・アヴィヴでの話なのですが、そこで出会ったピアノのタッチが最悪だったらしく、どのように弾いたものかわからなくなってしまったんだそうです。で、彼はどうやって克服したかというと、沙漠に出掛けていって、自分の慣れ親しんだピアノのタッチを想像の中で取り戻したとかいうんですね。イメージトレーニングですよね。ええ、なにに関してもイメージトレーニングは大切だといいます。実際の動作の中ではすべてに意識を張り巡らせることは難しい。そういった時にイメージトレーニングが効果を発揮して、イメージの中で意識と身体を繋ぎあわせることで、実際の身体の動きが整えられる。ええ、私もなにかわけわからなくなった時には、こういうことやったものでしたよ。

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