2010年7月12日月曜日

わたしたちは皆おっぱい

 『わたしたちは皆おっぱい』、この漫画が始まった時のこと、今も思い出します。すごいタイトルだ! いやね、皆おっぱいでありますよ。おっぱい好きの女の子、鎌上貴子の友情をめぐる物語。その友情のくだりはよいのだけれど、おっぱいおっぱいって、ふかふかのぷるぷるのって、なんか読んでて恥ずかしいのですが。でもって、こうして感想書こうという時に、どうしてもおっぱいに触れないわけにはいかない、ってこう書くと触っちゃってるみたいだな。ええと、記載しないわけにはいかない。まいったなあ、どうにかならんかなあ、なんて思ってたんですね。

でも、慣れました。ええ、ノープロブレムです。Blogで話題にできるのはもちろんのこと、書店でも買えるし、帰りの電車で読んだりもできちゃう。そして久々に触れた第1話、はじめて読んだ時とちょっと印象が違ってましたね。はじめて読んだ時は、オワター、とか、そういう表現に多少の違和感を感じたものでしたけれど、今やなんの違和感もなく、オワタもヘブン状態も普通に受け入れてしまっていて、そして印象が違ったといえばもうひとつ、ああ、確かに最初は貴子の不安が強く押し出されていたっけな。どうにかして仲良くなりたいという気持ちと、けれど自分の嗜好が知られたらきっと嫌われてしまう、そうした怖れがせめぎあっていて、マイノリティの悲しさとでもいいましょうか、切ないなあなんて共感覚えたりしたのですね。

そして、貴子の嗜好が知られてしまってからのこと。一度はもう駄目になったんだって諦めて、けれど二度目は諦めるなんてできないと、不安におののきながらも一歩を踏み出して、ええ、だんだんに強く、しっかりとしていっているんですね。友達を欲する気持ち、友達を大切に思う気持ち、自分の気持ちに蓋をしてごまかして、なかったことにしてしまうんじゃなくて、自分自身に向き合い、主張すべきは主張しようと決意する強さを身につけていくんですね。しかも、最初は自分のことで精一杯だったのが、いつしか苦境に立たされた友達をかばって、矢面に立つまでになる。貴子、不安や弱気を乗り越えて前へ前へと進む姿がかっこいいよ。

この漫画のいいところは、かばんに生卵など酷い仕打ちがあったり、クラスの女子を二分するほどの対立が描かれたり、陰湿あるいは生々しいと感じさせられるほどの感情がぶつけられたりする、そんな側面があるというのに、けれど悪者はいないんです。それこそ、劇の回などは、ざまあ見ろ、思い知ったか、それでも終われた話なんです。けど、そうはしない。瑠海音を困らせたあの子らにも気持ちがあって、心があって、思いがあるんだって、それをちゃんと描いて掬い上げてくれるんですね。貴子が、ただ相手を敵と見て、蹴散らすだけの子じゃなくてよかった。そして、貴子がそうした役割りを担うのは、ずっとマイノリティの寂しさを舐め続けてきた、日陰に追いやられることのつらさを知ってる子であったからなのではないか。そう思えて、だからなおさら皆に優しくあれる貴子はいい子であるなあ、なんて思ってしまうのですね。

タイトルにおっぱい、劇中でも貴子がおっぱいおっぱいいってる、変態的なテイスト盛り込まれた漫画であります。けれど、この貴子の変態的であるということが、彼女の強さや優しさの源泉となっている。一種ばかばかしいとさえ思える、そんなテイストが、シリアスで情感深い要素としっかり結びあわされて引き合っている。そうしたところにも私はひきつけられています。

ところで、以前愛咲ルミネって♥$☆に関係あるのかしら、なんていってたけど、あるんだ! そこから発想されてたんだ! 申し訳ないのだけれど、児童公園でリサイタル催すルミネを想像して、笑わずにはおられませんでした。

あ、『コミックエール!』に掲載された短編『海と泡沫』も収録されています。懐かしいなと思い出して、こうした雰囲気好きでした。『皆おっぱい』が2巻3巻と続けば、『苺バーレスク』や『夏のかげろう』も収録されるのかしら。されるといいなあ、期待してしまいます。

  • 東風実花『わたしたちは皆おっぱい』第1巻 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2010年。
  • 以下続刊

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