2010年7月20日火曜日

『まんがタイムきららMAX』2010年9月号

『まんがタイムきららMAX』2010年9月号、発売されました。表紙は『くすりのマジョラム』。中央にヒロインがどーんと陣取って、実はこの人26歳。しびれます! かつて『きらら』系列誌で高年齢ヒロインが表紙を飾ったことがあったろうか!? あったな。それもこの『MAX』において、妙齢の先生が表紙を飾ったことが、何度もありました。ああ、これが誌風というものなのでありましょうか。いいぞ、もってやってください。期待しています。

○本の住人』、なんだかひさちゃんがすごく積極的ですよ。以前からそうした傾向はあって、なんだか微笑ましいな、可愛いなあと思ってきたわけですけれど、今回はまた思い切ったものだ、というか、ついに兄貴を狼狽させたか。いかします、やってくれます、超可愛いです。ひさちゃんの一連の行動、これは内気なんだけど積極的な女の子の、時にいきすぎてどぎまぎしてしまう、そうしたところに可愛さ覚えるってところもあるのですが、オタク趣味を発揮できないでいたお嬢さんが、兄貴と出会って、そうした面もどんどん出せるようになったというところ、自分のよさをどんどん押し出していけるようになったというところ、それがいいのかもなって思うのですね。いや、ほんと、ひさちゃん、いいキャラクターでありますよ。

『きんいろモザイク』、やっぱりこれ面白いです。人見知りアリスの日本語話せないふりとか、地味ないしは静かなネタなんですが、とんっと胸元に飛び込んできて、そしてじわじわ効いてくる、そんなよさがあるんですね。キャラクターの個性をかたちづくりながら、そうか、その手があったか! と思わせる、意外でありつつも自然な発想。そして絵の訴えるアリスの内面、感情。うまいわ。どれを欠いても成立しない、そんなよさがあるわ。ええ、ものすごく面白いです。もちろん、それは他のエピソードでも同じで、これはいいわ、すごくいいわ、アリス可愛いわ、しのも可愛いわ、先生も最高だわ。ええ、ほんといい漫画であります。大好きです。

『SUNNY SIDE UP.』、加奈子のお母さんが登場。声だけですが。なるほど、社長さん。ふたりのやりとりなかなかに面白く、お母さんの娘大好き、娘大事という気持ちがものすごくよくわかる。いい母娘なのだろうなあ、そんな感想が自然にわいてきます。でもって、あのグリズリーとドーベルマンお出迎えの想像とかね、見た目のインパクトがすごい。熊の味わいもすごい。後半は本田商店に場を移して、この微妙にいろいろ問題のある品揃え、地域の特色ってことなんでしょうけど、面白いなあ。漫画であるからこその面白さ。で、これを朝顔とその姉とのやりとりで、なお面白くしている。そんな感じ。実にいいです。ところで、私、この作者の、目をぐるぐると黒く塗り潰す表現、これがすごく好きなんです。いい味出してるなあって思うんですね。

『けいおん!』アンソロ、なかなかに面白く、中でも「鼻血の出やすい軽音楽部」はよかった。紬をメインに据えて、その変態性を強調して見せる、その見せ方がいい感じに走っていて、けど暴走や迷走って風じゃないんですね。あきらかにありえない、そんな展開を、いかにもありそうに感じさせてくれる。あるいは、一種期待されるものをうまくすくいあげて、これでどうだと見せつけてくれる。実によかったです。しかし、にこにことしながらも斉藤に対する恨みつのらせるところ、そして最後の台無しな様子。ああ、これが私の見たかった紬お嬢様なのか。どんなパロディを好むか、それは受け取り手の嗜好を露にするものだと実感させられました。

フィギュ☆モ』、最終回です。前回、自分の作ったフィギュアを酷くいわれて傷ついたみらい。放っておけないとかけつけたさりな。このふたりの対話には重要なポイントがあるな。そんな風に思って、みらいのいうこと、これは作り手が追い込まれてる状況、そのものだと思う。一方的にいわれるばかりで、反論が許されない、そんな場ができあがっている場合、それこそみらいのいうように受け入れるしかない、と思ってた。けど、そうじゃないよねというさりなの言葉。その通りだと思う。失礼な態度には、バカにするな、といってもいいんだ。その通りだと思って、そして鼻水までたらさせられて、泣いて、怒って、本音叫んでのあのシーン、ああ、涙を絞りますね。ただ怒ったわけじゃなく、悔しさを飲むしかない、そう思っていた時に、その悔しさを理解してくれる誰かがいるっていうこと、一緒に怒ってくれる友人のいるということ、その気持ちの明らかに描かれたところ、それがよかったのだろうなって思ったのですね。しかし、この作者さん、真面目な人なんだろうなっていうのが伝わってきます。

好きな漫画が終わるのは寂しいことだけれど、こうして最後にぐっと気持ちを揺さぶってくれたりすると、ああいい終わりだな、いい漫画だったなと、そんな気にもなれて、寂しさもやわらぐように思います。

  • 『まんがタイムきららMAX』第7巻第9号(2010年9月号)

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