2010年3月31日水曜日

薔薇だって書けるよ — 売野機子作品集

 久しぶりの表紙買いでした。『薔薇だって書けるよ』。白黒の表紙の向こうから透けてくる薔薇が印象的で、どうしようか迷った末に買いました。同一のレーベルといっていいのかな、シギサワカヤの漫画『つめたく、あまい。』も発売されていて、出版者は白泉社、これは信頼してもよさそうだなと思い、購入に踏み切ったのでした。表紙に見えるヒロイン、彼女の眼鏡が魅力的だった、からではありません。けれど、ちょっとひねた感じとでもいいましょうか、変わりものっぽい雰囲気にひかれたのは事実であろうと思われます。

そして読みはじめて、表題作、若いライター八朔が一目惚れした点子に結婚を申し込む、そうした描き出しに、最初は夢のような恋愛ものなのかと思ったのでした。人形のように美しい点子、しかし蜜月が過ぎてしまえば、点子が普通の娘ではなかったことが段々に重荷になってくる。ただの世間知らずではなかった、ただの不器用ではなかった、しかしそれすらも最初は可愛いと思っていた八朔なのに、次第にうとましく思うまでになって、ともないその態度も冷たくなって、ああ、こんなに悲しい話であるとは思わなかった。まったくの予想外の展開に、しかし私はよりいっそう引き込まれていくのでした。

気になったことはあります。点子のキャラクター、ものすごく典型的というか、モデルとしたもの、その特徴を素直すぎるくらい素直に写して、いや、これは私の思い過ぎかも知れない。でも、ちょっとでもそう思ってしまったために、点子の魅力、なんでも真に受けてしまう馬鹿正直さや天真爛漫な振る舞い、それが少し褪せて感じられてしまったところはあったのですが、しかしそれでも充分に魅力的な娘で、そうした点子が夫八朔に気に入られる妻になろうと、どんどん誤っていくというところ、切なく、痛ましく、けれどそこで終わらなかった、その先があったことに、なんだか嬉しくなって、そしてじんとさせられてしまったのでした。

この作者は、人の気持ちの、愛情の、時に屈折して、時にうつろう、そうした様を描くのうまいのだな、そう思える一冊でした。一癖あるヒロインたち。その気持ち、愛惜の情は本当だと思う。その機微を伝える言葉、表情、それらはしみじみと迫ってきて、相手を愛おしく思っている、その気持ちがしんしんと伝わって、ああ、いいな、そう思うのでした。

点子の物語は、やっぱり夢のような恋愛ものであったのかも知れません。けれど、一度は離れた気持ちがふたたび繋がる、今度こそはもっときちんと向き合おう、そのような展開は、夢のようで、理想的で、しかしすごく真摯なもの。こうありたいな、恋を一時の感情として流してしまうのではなく、愛しながら、その気持ちを長く持続させたいものだ。そう思わせるものがあって、それはなにか読者である私でさえも素直にさせてしまう、そんな素敵なラストでありました。

2010年3月30日火曜日

境界線上のリンボ

 『境界線上のリンボ』は『まんがタイムきらら』にて連載されている漫画です。4コマ漫画であるのだけど、その感触はというとコマ割り漫画にも似ています。一昔前、ストーリー四コマという言葉がはやったことがありましたけれど、でもあれらともまた違う、独特のテンポを持って展開する、不思議な世界、不思議な街での物語です。舞台は、異世界との境界線上に存在する街、第七空洞市、通称リンボ。人とエルフのハーフであるヒロイン、フゥがリンボで出会う人たち、そこに生まれるエピソード。少し不思議で、なにか心に触れるもののある、そんなタッチが心地いい漫画です。

この漫画がはじまった時の印象は、今も覚えています。カラーページ、独特の雰囲気を持って表現される、けれどそれはどこかで見たこともあるような、そうした身近さも感じさせて、それはおそらくは、作者や私が育った環境、日本におけるファンタジー的なるものを、基盤として共有しているからなのだと思います。魔法と機械技術が共存している、そうした世界観は、ちょっとレトロな印象も持っていて、そしてどこか懐かしい。けれどその時点では、これからどうなるのか、面白くなるのか、好きになれるかまでは判断できませんでした。

開始してしばらくは、この漫画の魅力をつかめないでいた。それは仕方のないことかなと今となっては思います。なぜか。それは、『境界線上のリンボ』が、街の住人たちとの交流を通して世界を物語っていく、そうしたタイプの漫画であったからだ、そう思っています。フゥが出会う人たち。それは一癖も二癖もある、そんな人たち。普通の人だっている。けれど、私たち人とは少し違っている人もいる。錬金術師、魔法使い、犬に似た人たち、鱗のある人、そして妖精などなど。少しずつ違っている、けれどその違いを互いに受け入れている土地、それがリンボ。境界線の上にあるがゆえに、多様な人のあり様を許容する、懐の広い街、優しい街。そうしたリンボという街と、この世界の表情が、エピソードを積み重ねるごとに、いきいきと豊かさをもって広がっていくのですね。その広がりが、私の心に触れて、そして私を包み込むかのようにふくらんで、そうした頃には、もうすっかり好きな漫画となっていたのでした。

私のとりわけ好きなエピソードは、アポジーさんをめぐるものです。彼のキャラクター、そして思いもしなかった冒険、とてもいい。もちろん、アポジーさんだけが好きだっていうわけじゃない。ええ、この人はいいなって思える、そうした瞬間を越えるごとに、リンボという街も好きになっていく。この感触がとてもいいです。

で、ちょっとだけ蛇足ね。これ、どうも音楽のタイトルとか、あるいは人名とかもかな、それらから名前をとったりしてるみたいですね。最初、リンボって聞いた時は平沢進の『BLUE LIMBO』を思って、いやいや、考えすぎだろうよ、と思ったけど、『賢者のプロペラ』で確信した。多分、これもあれじゃないか、とか思うものいくつかあったりしますけど、それも平沢進に限らずね、でもこれらが特になにかを意味するわけでもないようだから、それほどには気にしないで、ただちょっとした楽しみとして見ています。ええ、まったくの余談でした。

  • 鳥取砂丘『境界線上のリンボ』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2010年。
  • 以下続刊

2010年3月29日月曜日

ひよぴよえにっき。

 『ひよぴよえにっき。』、この漫画が『まんがタイムきららキャラット』にゲスト掲載されたとき、こういうのもありなのかと驚いたのでした。姉妹の日常描いた漫画です。ただ、その姉妹というのがちょいと異色でありまして、姉、小学5年生、ちあき、ちーちゃんです。そして妹、はる、2歳! ええ、お姉ちゃんが小さな妹の子守りする、そんな漫画なんですね。特筆すべきはその内容でしょう。お姉ちゃん、ものすごく一生懸命。その一生懸命ぶりは、見ていて気持ちがほころぶ思いですよ。すごく素直で、すごく真面目。そんな印象もある漫画。それこそ学年誌に掲載されててもおかしくないような雰囲気を持っていて、けれど私が読んでも面白いのです。

そして、この漫画、さっきもいったように、最初ゲスト掲載だったんです。ええ、ゲストをへて連載に昇格した。その事実は、『きららキャラット』の読者はこの漫画、この表現、この雰囲気を受け入れて、楽しんでいる。面白く読んでいるということを物語るのだろうと思うのですね。

罪のないといってもいい、そんなふたりのやりとり。どちらかというとあかんたれで、おっちょこちょい、ちょっと気弱だったりもするちーちゃんが、妹はるのために奮闘する。その様子はほのぼのとして微笑ましく、楽しく、面白く、時には笑えて、けれどその笑みは、ただおかしいからっていう感じではないんです。なんというんだろう。そう、頑張ってるね、いいお姉ちゃんだねって、そんな気持ちが自然とわいてきて、笑顔になってしまう。しみじみと嬉しくさせてくれるようなお話なんです。そしてまた妹、はるが可愛いんだ。この漫画がはじまった頃、具体的に2歳児を観察する機会に恵まれたのですけれど、実際の2歳児よりもずっとしっかりとしてると思う。それは漫画として成立させるための、いわば演出なのかも知れない。そう思いながら、不思議と自然な子供らしさを感じたりすることもある、その塩梅がうまいのかも知れません。

子供は可愛いもの、とはいうけれど、実際に触れ合ってみれば、可愛いばっかりではありません。この漫画は、そこまでの現実味を突き付けたりはしません。でも、わがままいってちーちゃんを困らせるはるなんてのは普通に描かれて、でもってちーちゃんは、そのわがままに精一杯応えようとしたり、あるいは気をそらせようとしてみたりと、ほんといいお姉さんなんですね。ああ、お姉さんっていいな。私にもお姉さんがいればよかったのに。と書いたところで思い出した。いたよ! 姉、いるよ! うう、うちの姉はちーちゃんみたいに優しくなかった……。この漫画は、そこまでの現実味を突き付けたりはしません……。

本編は、妹の世話をやくお姉さんの話。決して非現実的とまで思えるようなエピソードは描かれません。だからでしょうか、単行本のおまけ、途中途中に差し挟まれたもしものエピソード、これがすごく新鮮で面白かったです。交代してみたら、同い年になってみたら、などなど。本編なら決して出てこないだろう気持ちがあらわされて、とても面白かった。じゃあ、本編に見える気持ちってなにかといいますと、姉の妹に対する、妹の姉に対する気持ち、大好きという感情ですね、これがあふれているんです。もう、本当に嬉しくさせてくれる。たわいもないエピソードであっても、心からあたたかいと感じられる。ええ、とてもいい漫画だと思っています。

  • 琴久花央『ひよぴよえにっき。』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2010年。
  • 以下続刊

2010年3月28日日曜日

『まんがタイムきららキャラット』2010年5月号

『まんがタイムきららキャラット』2010年5月号、発売されています。表紙は『ひだまりスケッチ』。抱き合うゆのとヒロさん、であるのですが、絵の具で汚れた白衣とエプロンがなんだかすごくいい味を出していて、こういう絵、いいなって思います。汚れが描かれることで、生活や活動の質感が浮きあがってくるように感じられるとでもいいますか、いきいきとキャラクターが動き出すように感じるのですね。

『ラッキー・ブレイク』。効用じんましんの温泉に入ってじんましんが出るヒロイン。おおう、ちょっと気持ち悪いぞ! とはいうけれど、これ、ちょっと前回を振り返らないとわからないな、といったわけで、珍しく先月号に遡ってみました。うん、そうそう、陸は旅館にアレルギーがあるから夕食のメニュー、注意して欲しいといってたけど、ちゃこはそれをしてなかったから、アレルギーで食べられない蕎麦がたくさん出てきてしまって困った。夕食抜きにしようとしたところ、陸が、それもおいしそうですね、半分こしませんかと、自分の夕食を分けて、ちゃこの食べられないものを代わりに食べた。以上前回のあらすじです。

こうした前提があって、そしてちゃこが、なんで陸がアレルギー出して寝込むことになったか理解して、これが今回ですね。ええ、あんだけ陸に対して敵愾心持ってたちゃこが、すっかりその態度を軟化させる、そのくだりはすごくよかった。この人の思いの移り変わりが丁寧に描かれて、そして陸にもその気持ちが伝わってという流れには、ちょっと感動してしまうくらいでした。けど、ふた月にまたがるとちょっとわかりにくい。といったわけで、これは単行本で読むと光るエピソードなのではないかと思います。うん、この単行本は面白そう、今からそう思っています。

うらバン!』、アンサンブルコンテストですよ、アンコン。今回は金管の三人がステージへ、残るふたりは聴衆として参加するのですが、とにかく緊張してわけわからなくなってるリーダーゆみはおかしくて、いつもマイペースなあさみん、そして宇宙的なアレに参加したい千夏。結局参加させてもらえなかったんだけど、その報われない感じ、ちょっと可哀そうで、でもその参加したいって思ってるところなんてすごく可愛くて、面白かった。で、彼女らの演奏の結果が出て、銀賞。この銀賞というポジション、すごく絶妙だと思います。このアンコンというのが、浦和泉市主催の小さなものであっても、またこれが全日本吹奏楽連盟主催のアンコンでも同様です。

以前にも少しいってたけど、吹連のアンコンの賞は、上位3団体だけに与えられるものではないんです。だから、頑張れば銀には手が届く。銀はいけるという発言は、それだけの実力はあるよ、よく頑張ってるよという言葉そのものであり、そして実際に頑張りが演奏の質となってあらわれて、評価されたというわけです。決して高望みではない、けれどいい加減では届かない、それが銀賞なんですね。だから、唐突でもなんでもない。ああよく頑張ったね、よかったねと、それでいてあなたたちの実力なら変じゃないよと、そういってあげられる、そうした賞を得たことは、すごくしっくりとして、またすごく喜ばしいと思えることだったのですね。

『Felice』、序盤導入部における山ができてきてます。凜がついに限界にきてしまって、灯里を拒絶してしまった。というところで、灯里に危機が迫る! これ、動きとしては凜の線と大地の線、ふたつの系統が期待できそうで、この両面からの解決、最初は凜で大地でとどめ、みたいになるのかなあ。ちょっとはらはらとさせて、けれど期待もさせて、そんな状況であります。

『勘弁してください』、ゲストです。女の子たちのたわいもないやりとりを、ちょっとナンスンス風に描いたという漫画なんですが、最近こういうのたくさんあるから、独自の味を出せないと埋没してしまう、そんな危険ぶくみであると思います。というか、この感想がすでに埋没してしまいかねないって感じで、危険だなあって思ってるんですが。独自の味を出そうという意図がある、それはわかるんですが、それを私が受けて表現できない、そんな感じであるのです。

『ちはやとまお』、これも同様です。あ、ゲストです。ちはやとまおのふたり、しっかりものの千早と、のんびりしてる万桜、ふたりのちょっと噛み合わない生活描いて、千早中学生で万桜大学生? 三食麺でもオッケーという千早に大いに共感してしまいました。うん、麺はいい。のんびりしている、そののんびりに独特の味を感じている、そんな気もするのだけど、それを言葉にするのは難しい。だから、もう少し続けて読みたいなって、それはこの漫画についても、『勘弁してください』についても、思います。

空の下屋根の中』は履歴書、そして面接の話。うん、私、履歴書書くのものすごく苦手です。特技とかなに書いたらいいかわからない。でも、うける履歴書の書き方とかあるっていいますよね。面接も同様なのでしょう。昔、エントリーシート書いて、面接うけてを繰り返してた時の砂を噛むような思い、ちょっと思い出して、そのやりがいのないという意見、共感して、なんだろうねえ、いや、本当に。でも、ヒロインかなえは、自分自身を省みることで、ひとつの結論を出せたみたい。この、省みて自分を知るということ、つまりはそれなんだろうなと思わせてくれて、ええ、いい話だった、そう思います。

ねこみみぴんぐす』、先月ちょっといってましたけど、猫耳、ぬいぐるみ、ヘッドホン、やっぱり目立つ特徴だったのか。今回は県の大会、団体戦を描いて、しかし勝負の現実は苦いね! いつぞやのお爺さんなど、あの実に食えない爺さんですけど、やっぱり味のある登場してきて、面白い。でもって、ライバルの双子、おおう、三つ子か、現れて、これ、宿命のライバル展開? 悪い子らじゃなさそうだけど、なんだか屈折してるなあ。話が進めば、意外にいいやつ! みたいになっていくのかな。とりあえず、次回は彼女らとの試合ですね。いい感じに白熱するのかなあ。

『かすみのそら』、ゲストです。キャラット初登場とあるんだけど、これ見たことあるよ? と思ったら、前回は『MAX』だった。ちゃんと前回を覚えてる、それくらいちゃんとした印象を残した漫画でした。坂の上にある学校に転校してきたヒロイン佳澄、体力ないから登校するのも大変といったところで、でも私も貧弱でしたから、気持ちはわかります。体育祭なんて大っ嫌いだった。運動嫌い、苦手な人間にとっては、計測やら体育祭やら、もう嫌な記憶しかないですよ。運動苦手はいいんです。けどそうした人たちが運動嫌いになるのは、学校の体育があるように思います。ああ、私も短距離の計測でこけたよ! この漫画が、きちんと記憶に残ったのは、そうしたヒロインに共感してしまったがゆえなのかも知れません。うん、可愛いヒロインです。

  • 『まんがタイムきららキャラット』第6巻第5号(2010年5月号)

2010年3月27日土曜日

『まんがタイムオリジナル』2010年5月号

『まんがタイムオリジナル』2010年5月号、発売です。表紙は、自転車? 山下さんはえらくスポーティでお似合い。で、なんか医師三人組は、ドクロベーにおしおき受けたあとみたいに……。セグウェイカナさん、まさかこれが本編の振りだとは思いもしませんでした。そして、らいかはクラシックな自転車です。ああいうの、実際乗ってみたら、めちゃくちゃペダル重そうですよね。

『よゆう酌々』、辻灯子の新連載です。半年前に離婚して、不況でもって失職してしまったヒロイン。なんというか、切なくさせるなあ。でもって実家に帰ることとなって、それで母にはめられて小料理屋継がされるっていうの、この母というのが実に辻灯子らしいお母さんであるものですから、その店を押し付けようという過程さえも面白かったです。ええ、すごくいい味出してます。これ、来月からどんな展開するんだろう。働く女性もの。私はこの人の漫画は好きなので、きっとこの漫画も好きになるんだろうな、そんな予感しながら、楽しみに読んでいきたいです。

開運貴婦人マダム・パープル』、都道府県占いって、すごい大雑把だな! って思ったけど、血液型の4区分、星座の12区分に比べると、随分緻密に思えてきます。しかしナンセンスさはものすごい。でも、都道府県ならナンセンスで、他のだとそれほど変に感じないっていう、そうしたおかしさに気付かせてくれて、これはすごい四コマでありますよ。うん、こういう気付きを与えてくれるところ、すごいです。

そこぬけRPG』。舐め壊すときたか! いや、ほんと、どうなんだろう。制汗スプレーや香水は聞いたことあるけど、舐めるのは体にもよくなさそうだなあ……。その人のDSは触りたくない……。DSi LLですけど、今日も電車の中で使ってる人見ましたけど、これ、最近のゲーム機に比べると大きいだけで、昔の携帯機を考えると、別にそんなに大きいもんではないと思うんですよね。というわけで、実は私もDSi LL、欲しかったりします。い、いや、別に『ラブプラス』のためじゃないんだからねっ!

『マチルダ! — 異文化交流記』の英語の授業、なんかメン・イン・ブラックとかいってないか? どんなテキスト使ってるんだろう。でもって、真菜さん、なんかすごいやる気だしてるけど、これはなんか期待しちゃうぞ。ええ、なんか無茶な展開してくれるんじゃないかって、期待してしまいます。

『恋は地獄車』、しびれる! お医者の先生の妄想というか、迷いというか、これも笑っちゃったんですけど、それ以上に滝くんですよ。リターンキーをパンッ! ってやる人います、います。私もこれ嫌いです。で、職場の隣の人と隣の隣の人と向かい隣の人、みんなやるんですよ。別にデキる自分アピールとも思わないし、できたアピールとも思わないけど、ちょっとナルシスト入ってるな、って思って、で耳についちゃう。うん、めちゃくちゃわかります。でも、こういう、いちびってるところ、気付いてないだけで私にもあるんだろうな。もっと地味に身の丈にあった生きかた目指したいと思います。

『アトリエZOOへようこそ!』、扉の先生ステキッ! 画像にして携帯電話の待ち受けにしたいくらい! まあ、携帯電話持ってないんですけど。っていうのはいいとして、この昼ちゃんぽん、夜ちゃんぽん、夜食もちゃんぽんって、どんだけちゃんぽん好きなんだろう。東京いったときも、ちゃんぽん食べにいこうとしてたな、この人……。うん、でも実はちょっと気持ちわかります。エイプリルフールの嘘と思いたい展開などは、ベタだけど面白い。あの、取り乱してもいいような局面で、今後の有利を考えて踏み止まるというの、素晴しい。私には無理な自己コントロールであります。

『今日から寺バイト』、おお博士だ、博士じゃないか。博士っていうのは、145ページ右ふたコマ目に出てる記号のことです。声明はですね、メロディーを持った聖歌のようなものなんですが、その音の動きをこうした譜でもって示すんですね。はかせと読みます。で、これ、学生のころちょっと習ったんですが、もう忘れちゃいました。声明の研究をしていた片岡先生のテキストのコピーが配られてですね、で、ピンときたんですが、この方、私の母方のお墓のあるお寺の住職さんだったんですよ。その筋では有名な方で、京都の芸大で先生もされてたんですね。で、今調べてみたら、CDが出てました。買っちゃおうかな。片岡先生自らの録音みたいです。懐しい。懐しいこと思い出させてくれました。

『花咲だより』、梅ちゃんが引っ越しだそうですが、この人、咲太のこと好きなのかな。前にもそんなようなこと感じさせる話あったように思いましたが、だったらお姉ちゃんの思い付きにのっかっちゃったらよかったのに!

『アサヒ! — 動物園に行こう』、前回からかな? 象のお母さん広子が出てきてますけど、このお母さんのすさみ具合といいますか、なんといいますか、すごいですよね。これ、しびれます。こういう味の出し方、すごいです。ほんと、嫌な説得力があるっていいますか、ほんと、しびれます。

  • 『まんがタイムオリジナル』第29巻第5号(2010年5月号)

2010年3月26日金曜日

『月刊アフタヌーン』2010年5月号

 『月刊アフタヌーン』2010年5月号、発売されました。表紙は『百舌谷さん逆上する』、なんだか妙にさわやかな笑顔うかべる百舌谷さんが印象的であるのですが、これよく見たら、鎖で繋ごうという絵なんだ。しかし、この漫画に関しては、こうした要素こそが求められているような気がします。とはいえ、ここ数ヶ月の百舌谷さん、番太郎に距離を置いてるから、こうした姿はむしろ少なくなって、かわりに困ってあたふたしている場面が増えた。なので、ちょっと久しぶり、といった感じでもありますね。

というわけで、『百舌谷さん逆上する』です。少し時間をさかのぼって、この数ヶ月、百舌谷さんがなにをしようとしていたかということが語られて、ああ、やっぱり、こうだったかと。前の学校で校長の資産を運用していたとか、また運動会の時なんかに、携帯電話をいじっている場面が描かれていました。それらから、おそらくは株の売買やってるのだろうと思っていたら、実にそのとおりでした。しかしそうして予想されることは作者も織り込み済みなのでしょう。うまくいきそうになった、目標に到達した、そう思ったところで、思いがけないしくじりがあって、そして新しい展開の芽が見えてくる。なんだか、不穏な空気感じさせる展開、新たに登場してきた人物の思惑もろもろ、どうなるのだろうと思わせるには充分な状況。ほんと、気をもたせてくれる、楽しませてくれる漫画です。

で、いいんだけど、番太郎も激ハードであるんですけど、会長ですよ、会長。あの挿入された一コマ、あれだけでもうなんというか、いろいろ耐えがたい、そんな厳しさが押し寄せてきて、もう、なんというか……。つらいっす。それから、くーたん。この人、ただのストーカーかなんかなのか、それとももしかして実の母親とか、そういうなにかなのか? いろいろな人の思惑入り乱れて、この混乱させられる感覚、篠房六郎の漫画を読んでいる! と実感させられて、すごくいいです。

『武士道シックスティーン』、磯山が怪我、戦線を離脱することとなって、代わりにと西荻を推すこの展開は、実に期待される、わくわくとさせるものであります。気弱といえばいいのか、どこか消極的な西荻が試合に引っ張りだされて、しかもその相手というのが実力者とくる。この逆境に、ついに勝ちを意識しだした西荻。期待や応援を背に、自分にできることをしっかりとこなし、さらに前へと踏み込んでいく。これは、いい。すごく面白い。ベタといえばそうかも知れないけれど、わくわくさせられる展開であること、それは間違いない。ええ、とても胸踊らせてくれる話でありました。

『ラブやん』は『追憶売ります』? けど、たとえこれがどんなに後ろ向きの楽しみであるとしても、効果があり、かつ安価ときたら、いってしまう人は続出するように思われます。私だって試してみたいと思うもの。思うようにいかない現実に打ち拉がれる日々を、一時忘れたい。それはラブやんならずとも願わずにはおられない、甘美な誘惑ではなくって!? しかしフサさんの妄想は酷いな。けれど、快楽にまっしぐらというその姿勢は見習うべきものであるかも知れません。でも、あんな姿を誰かに見られるのは躊躇するなあ……。いや、それを躊躇しないからこそ偉大なのか……。

『友達100人できるかな』、切ない話でした。第三の再来者、井森湯治の話。99人まで友達をつくりながら、100人目は作らないと宣言する。そんな湯治に主人公は興味をもって、つきまとって、そして互いに理解を深めていく。ここには、子供としての世界があり、しかし大人としての感情もあり、かつて得られなかったものを取り戻しつつ、未来に思いをはせる、そんな湯治の気持ちはひしひしと迫って感動的でした。あの、見開きの風呂、あの台詞、胸をぐっとつかむかのようでありました。そして去るということの意味を知って、切ない。けれど、その切なさを埋め、越えていこうとする、そんな強さ描かれて、ええ、やっぱり感動的なのでありました。いい漫画です。

2010年3月25日木曜日

Streets, taken with GR DIGITAL

Street of storesGR Blogのトラックバック企画、3月のテーマはであります。街となると、普段撮っているなにげない写真が既にテーマに合致しているわけで、いつもGR DIGITALをさげて出歩いている私には向きのテーマかも知れません。といったわけで、過去の写真を探してみたのでした。数年にわたって撮ってきた写真の中には、きっと街を思わせる写真もあるだろう。といったわけで、トラックバック企画 街 に参加します。

今回は写真を数枚選んでみました。冒頭の写真は大阪、十三の商店街です。そして以下の三枚、上から岡町の商店街、阪急百貨店梅田店の近く、そして最後は自分の住んでいる街であります。

街というと、建物の並んでいるところを思い浮かべてしまうけど、自分はどうも人のいるところを考えたようです。そして、夜の街。静かであるけれど、そこに暮らす人は確かにいる。そんな風景であります。

Almost square

Street

Street, night

2010年3月24日水曜日

『まんがタイムきららフォワード』2010年5月号

 『まんがタイムきららフォワード』2010年5月号が発売されました。表紙は 『夢喰いメリー』。青空背負ったメリー、なんで観覧車? と思ったらそうじゃない。青空は傘の内側の柄なんですね。傘のうしろには満開の桜であります。そして、メリーの衣装も桜色。はなやかで、やわらか、ちょっと和風、というかこれ着物か、魅力的ないい表紙であると思います。桜色もいいのですが、メリーの緑の目が鮮かで、それがまたよいのであります。

巻頭は『夢喰いメリー』。前回、主人公夢路が起死回生の一打を放つ、そんな感じの引きで終わっていましたが、まさにその起死回生の一打が放たれるのが今回です。夢を自分の意思で変化させる、明晰夢を駆使し、夢魔の作り出した空間で自由に振る舞おうという、その流れは力技と見せて、けれど妙な説得力を持っています。新しい能力を身につけて、ヒロインの危機に駆け付け、そして大逆転のチャンスを切り開いてみせる夢路。いいですね。オトコのコ漫画としては、実に正統的ヒーローではないですか。いや、ほんと、これは燃える展開です。

S線上のテナ』は、前回に引き続き、今回もやられてしまいました。前回はデュオンの計略に決着がついたかと思ったところで、譜面兵器がなおも作動し続け、どうなる!? と思ったら、今回ですよ、なんとグロリアの意図が判明する。そうか、この人は敵ではなかったのだ。そう思って安心したら、またここでがつんと揺り返しがきて、もう本当に安心させてくれません。アップダウンの繰り返しで、どんどん盛り上がっていく、上へ上へと向かっていく、そんな上昇感がすさまじいです。

『となりの柏木さん』、桜庭くんが応援するsayane、彼女の知名度が上がるほどに当然ファンも増えて、そして桜庭くんはもやもやするっていう、その気持ちはちょっとわかるような気がします。読者からすれば、全体が見通せるという特権のおかげで、彼は別にもやもやなんてしなくってもいいんだよ、ってわかるわけですけれど、状況の一部しか与えられていない彼からしたらそうじゃないよなあ。というわけで、本当は身近にいるsayane=柏木さんとの、うまくいきつつもあり、けれどもやもやも感じという、揺れる桜庭くんの恋心、といっていいの? それがなんだか放っておけない感じであるのでした。

少女素数』は、あんずのクラスでの状況描かれて、敷島なる男子登場、彼の視点におけるあんず、すみれの認識の語られるところなど、ちょっと面白かったです。すみれは美少女らしい。対してあんずはほんわかと笑っている印象? けれど、親しみ持たれているのだなあ。気さくで、ほがらかで、のびやかで、やわらかな娘であると思います。そして、はなやか。敷島も、美少女すみれと姉妹と知ったからか、それとももとから意識していたのか、ドキリとさせられる、そうしたなにげない一コマ、魅力的でありました。

据次タカシの憂鬱』は、結局やっぱりタカシは酷い目にあう、という展開なんだけれど、それでも少しずつよい方向には向かっているんですね。ある程度、終わりというか一段落への流れが作られているのでありましょう。といったところで、タカシの思い出グラフ、これアップダウンしてるけど、平均値をとったら右肩下がりなんだろうなあ……。あんまりタカシのことを笑ってられない自分であります。だがしかし、そうだからこそタカシには頑張っていただきたい。

なきむしステップ』、最終話でした。テストがあけて、奈々が取り掛かったのは、父親の説得。絵を描き、物語として自分の思いを伝えようとする。そして、自分の言葉ではっきりと、絵の道に進みたいという意思を告げて、あの頑なと思えた父親もしっかりと娘の気持ちを受け止めて、ええ、いい話でありました。そして、なんとなくいい流れのままに杉原くんも紹介しちゃったりして、ああ、もうこの父はしようがないなあ、でもなんかいい父だなあと。見開きの空、そしてこれからを思わせるコマに、広がっていく奈々たちの未来感じさせて、いいラストでした。

『わたしたちは皆おっぱい』、実はずっといいたかったことがあるのです。愛咲ルミネって♥$☆? ♥$☆の関係者? ずっと気になっているのです。

本編は文化祭での劇、キャストで出演することになったヒロインたちがまさかのお泊まり会にて貴子の餌食に!? と思ったら、そんなことなかった。というか、貴子のみさかいのなさは特筆すべきものがあるな。でも、期待されるような展開はなく、しかしこのことが後の展開にまで引っ張られるとは思いもしませんでした。いよいよ劇がはじまって、お定まりとでもいうべきか、妨害などあって、そして友達が困った状況に追いやられたことで、化けるヒロイン。かっこいい。劇は好評のもとに幕を下ろし、そしてヒロイン拍手喝采。けれどこれで、妨害した内牧さん、彼女が恥かかされて、ざまあみろだ、みたいにならないっていうところが、一番よかった。結果的に彼女の思いも汲み取られる、そうしたところ、優等生的すぎるといえばそうかも知れないけれど、こういう日陰を日陰に放置しないというところ、この漫画いいじゃないかと思ったのは、そうしたところなんだろうと思うのですね。

で、結果的に貴子は友人の輪を広げて、それはつまりは貴子の変態的野望が達成されるってことなのか? うん、友情とか描かれるその向こうに、馬鹿馬鹿しいところがあったりもする、これも魅力なのだと思います。

2010年3月23日火曜日

テルマエ・ロマエ

 私が『テルマエ・ロマエ』を知ったのは、なんだかWebのあちこちで話題になっていたからなのですが、それがですね、すっかり勘違いしておりまして、最初、ずっと、古代ローマにおける風呂についての研究書だと思っていたのですよ。インターネット上で話題になる本は、軽い本、漫画もあれば、意外に骨のある専門書まで幅広く、そして私は、これが後者、専門書であると勝手に思ってしまっていたのですね。しかし、ほどなく漫画であると理解して、一度読んでみたいものだな、そう思っていたら、なんとマンガ大賞で大賞を受賞したとか。それでなのか、あちこちで平積みされるようになって、よしこれを機会と買ってみたのでした。

で、読んでみてですよ、面白いッ!! いや、ほんと、これ、面白い。古代ローマの風呂専門の建築家が、なんでか知らんけど今の日本にひょっこりやってきては、日本の風呂にカルチャーショック受けて帰るという、そればっかりなんですけど、このいわば一発ネタみたいなのが、めちゃくちゃ面白いんです。さすがに大賞とるだけのことはあるなと思わせる、確かな面白さがあるのですね。

しかし、最初は本当に思いっきり一発勝負みたいな感じ。古代ローマ人と現代日本人の風呂好きという共通点は、これまでもいろいろあちこちで語られていたわけですが、じゃあ古代ローマ人を日本の銭湯につれてきたらどうだろう。このアイデア一本勝負。理屈もなにもなしに、とにかくお越しいただきました。お客様は建築技師のルシウスさんです。でもって、このルシウスさん、はじめて見た日本人を奴隷であろうなどと思い込んだのですが、しかしプラスチック製の風呂桶や鏡、映画のポスターなどに文明の高さを思い知り、思いっきり落ち込んだりして、もうこの落差が面白くて、でもってフルーツ牛乳飲んで美味いッ!! ですよ。いや、もう、その衝撃うけてる顔がもうすごいの。心の底から驚いているっていう顔です。こうした端々に見えるインパクトの強さ、印象の鮮烈さが、古代ローマと現代日本の風呂文化比較とでもいうようなアイデアに輝きを与えているのだと思います。

しかし、最初こそはアイデア勝負といった感じでありましたが、話が進むにしたがって、斬新な風呂を設計する技師としてルシウスの名声たかまり、ついにはハドリアヌス帝に見初められるというね。こうした出世ものの面白さも出てきて、また舞台もローマを離れ遠く戦場エルサレムにまで達して、ローマ帝国とはどういうものだったかというのがなんとなくわかった気分になれるというのもいい感じです。そして、新たな舞台が提示されるごとに解決したい問題が出てきて、そのたびにルシウスは現代日本の風呂にやってくる。その風呂というのも、銭湯から露天風呂から、家庭の風呂、さらには湯治場など、とりあえずこれまでは違う風呂ばかりが出てきて、この多様性! これから先、ルシウスがどんな風呂に出会うのか、それが楽しみで、さらに風呂にプラスアルファされるもの、フルーツ牛乳とか温泉卵、ウォシュレットとかですね、それらも楽しみで、そして妻に愛想つかされたルシウスの明日はどうなるんだろうとかも! ええ、いたるところに楽しみが仕込まれている、サービス精神にあふれた漫画であります。

  • ヤマザキマリ『テルマエ・ロマエ』第1巻 (BEAM COMIX) 東京:エンターブレイン,2009年。

2010年3月22日月曜日

お願い神サマ!

なんか最近Twitterというのがはやりでありますな。でもって、私もやっとるわけですが、そこでちょいと知り合って、相互にフォローしあってる人がですね、『マリア様がみてる』のファンであるようなんです。そのために、時折『マリア様がみてる』の話題が出ることがあって、けど私読んだことがないんですね。話がわからなくって悔しいなあ、そう思って、今何冊出てるんだろうって聞いてみたら四十冊くらいって返事が返ってきて、うぼー、洒落にならん。今から参加するとか躊躇するような冊数ではありませんか。というところで、絶望しながら、最近『まんがタイムきららMAX』で連載がスタートした『お願い神サマ!』、『アリマ様が見てる』に憧れる女の子たちの漫画だとtweetしてみたのです。そうしたら興味持っていただけたようで、RT、そしてそれが再度RT。一部ではあるでしょうけど、『マリア様がみてる』のファンに『お願い神サマ!』は認知いただけた模様です。

とここで、訂正が。『アリマ様が見てる』じゃなくて、『アリマさんが見つめてる』でした。いやあ、いつも『アリ見て』と略されてるから、ちょっと間違って覚えてた。

で、この漫画、『MAX』2009年9月号及び2009年10月号にゲスト掲載、その後、人気あったからか2010年1月号から連載開始、過去の記録を見れば、私は随分気にいっているみたいですね。鮮烈な印象を与える、そんな漫画ではないけれど、女の子ふたりのコミュニケーションに見え隠れする気持ちの揺れ動き、ただ姓から名前を呼びあう関係に進もうというだけのことで、あんなにもあたふたしてしまう、そういう様子に面白みと、それからなにか慈しみたくなるような思いを感じているようなのですね。

絵柄は素朴でやわらかく、カラーともなれば淡い色調があたたかでやさしげで、私はこの絵の雰囲気にも魅力を感じている模様です。特にカラーがよくて、水彩っぽい色ののせかた、単行本ともなればカラーページ描き下ろしはきらら系の常ですから、どんなことになるだろうと楽しみになる。ええ、いつか単行本としてまとまると嬉しいな、なんて思っているのですね。

Twitterにおける『マリみて』、ああ、これはオリジナルの方、そちらのファンの方ふたりほどに、単行本出たらさりげなく案内しますと約束して、そして問題は、この漫画、『マリア様がみてる』のファンの方が気にいってくださるだろうかなあと、いや、私が心配してもしかたないんですけどね。でも、同じ案内するなら、気にいっていただけるにこしたことないじゃないですか。その方が私も嬉しい。そして少しでも、この漫画を面白いと思う、そうした嗜好、感性を持っている人のもとに届けばいいなと思ったりしたのでした。

  • 守姫武士『お願い神サマ!』

2010年3月21日日曜日

『まんがタイムきららMAX』2010年5月号

『まんがタイムきららMAX』2010年5月号、おとついの続きであります。さて、本日はその後半に入ろうと思います。中盤から後半にかけては、新しくはじまった連載が続く、新鮮味感じさせるそうした雰囲気ありまして、そしてだんだんに落ち着きつつある、そうしたところに、これからの『MAX』の色の定まりつつあることを感じています。

『SUNNY SIDE UP.』、新連載です。タイトルを変えて新連載というわけで、もともとのタイトルはなんだったのかと振り返りましたら、『もー★ぐり』。2010年1月号に掲載された漫画ですね。もともとのタイトルはモーニンググローリーからきている模様で、すなわち朝顔。八重歯の可愛い小柄のお嬢さんが主役と思えるようなタイトルだったわけですが、連載開始にあたってのタイトル変更は、誰がメインヒロインと確定させないためなのかも知れません。といったわけで、といいきっていいかどうかは不明ですが、今回は都会から田舎に引っ越してきたお嬢さん、加奈子がクローズアップされて、頑張りすぎてしまう女の子、ちょっと空回り気味で、けれどそんな加奈子に朝顔が積極的に働きかける。キャラクターがはっきりと違ってる、そのコントラスト、鮮かです。

『もっかい!』、おお、なんか普通っぽくなった。絵に独特のタッチは残るけれど、あのハッチングに似た表現はトーンに改められて、少し普通の漫画っぽくなりました。きっと、見づらいとか、そういう意見が寄せられたんだろうなあ。画面はおとなしく、また見易くなったけれど、テンション、ノリは以前のとおりで、掲示物めぐるエピソード。馬鹿な話といえばそれまで、けれど男子っぽい調子ののりようが結構気持ちいいんですね。どうも、好きみたいです。

『ハッピーステッチ』、今回は採寸の話、であるんですが、ちょっと淫靡な雰囲気もないではない。でも、別にエロエロみたいなことはないので安心です。女の子ものっていったらあんまりにも大雑把なくくりだけど、女の子メインの漫画ではよく見る展開ではあります。この漫画は、眼鏡のリコ、変に可愛いなと思いながら読んでます。今回はその傾向特に強かったです。

『ここみみなたね』、前回まではいまいち面白さがわかりにくい、なんて感じていたのですけれど、舞台が学校に移った今回、多少でもみみに勝てるところがあるんではないかという期待がことごとく打ち砕かれていく、そんななたねが不憫、しかしその様子が面白かったです。で、ラストは学校崩壊。こういう大掛りな馬鹿展開、私、大好きです。来月には復活してるのかなあ。それとも青空教室? どうするんだろうって思って、興味わいてくる大落ちでした。

『つかえて!コハル』、今回はコハルのテスト勉強だけど、面白い。コハルにしてもなつきにしても、テスト勉強となれば違うことに熱中してしまうというのはくある話。しかしそこで、イスに縛りつけて!! 続いて千秋! 千秋ッ!! と呼ぶ、その切実なる表情の魅力的であることったらないですね。最高です。超可愛いです。超キュートです。でもって、面白いです。シンプル、それでいて面白いというのはとてもよいと思います。

『お願い神サマ!』、これ好き。今回はお泊りであるのですが、柚梨子さんの家、ものすごい。どこまで無茶に大風呂敷広げられるか、大げさにことさら大げさにして、けれどヒロインふたりの関係は、密やかに密接に接近しながら、最後の一歩をつめようというそこでドギマギするという、そのあまりのスケールの違い。けど、この小さな一歩を埋められないというところ、けれど勇気振り絞って自分の思い告げたりするところ、これがいいんだなって思うんですね。

『はる×どり』、これも好きです。でもって、冒頭の一本。これ、わかります。私もこんなのばっかりですよ。枕元にはメモ帳置いて、けどメモしても後から振り返らないからなあ。よって、私もたいていああです。この漫画では、はなちゃんが気にいっています。アイドル志望、結構気さく? な女の子。なんか今回は、はなちゃんの歌が犬を引き付けるってことが判明して、で、そこから話が広がっていくのは面白かったです。気にいってるのは、京子がはなちゃんの歌が犬呼び寄せることに対する仮説をたてて、けど根拠ないからと棄却する、その流れ、なんだか好きな感じでした。そして、最後にまた冒頭の流れに戻る。ええ、日々、こうしたことの繰り返し、それが人生であると思います。

ぽすから』はいよいよ試験当日となって、学科こそはみなで一緒で受けるけど、実技ともなればそうともいかず、けれど離れてそれぞれに違う課題に取り組んでいても、気持ちだけは一緒にあろうよというかのような皆の気持ち、そのともに試験に向かおうという連帯感、見ていて心地よいなと思わされるのでした。いや、もう、気恥かしいくらいに青春です。けれど、この気恥かしさ、これは若い人の特権と思いながらも、振り返って懐かしみ、ああいいねと思う。そして私は気持ちだけでも、彼らの気恥かしさに同調していくのですね。

ねこにゆーり』、これは面白い。あっちゃんが帰ってきたら、ゆーりが猫になっていた。ええっ! これは漫画的ギミックなのか、それともゆーり、セラが共謀してあっちゃん騙しているだけなのか。それがわからん、うそかまことか、その合間をふらふらと曖昧にしたまま最後まで進めちゃう。その、あっちゃんの戸惑いをまた読者である私も共有するかのようで、これは楽しかったです。

超級龍虎娘』、最終回でした。感情をあらわにする毬虎。彼女の言葉の端々に、これまでのことが思い出される。そしてだんだんに別れを受け入れていくみたいなところ、それが切なく、しんみりと胸に沁みます。この漫画は、人の思いの、感情の、細やかに動いて、そして繋がり伝えあうところ、よくすくいあげて表現して、そういうところ、大好きでした。だから、こうして終わること、残念と思いながら、けれど毬虎がそうであったように、私もだんだんに受け入れていくのでしょう。とりあえず、次は2巻ですね。1巻2巻と揃えて、通しで読んでみればどう思うことだろう。それが今は楽しみです。

ぐーぱん!』、赤城さんはとにかく大変な目に合わされる、そんな印象ありますけど、今回は別に未理がなんかしたわけじゃないから、でも全般にはセクハラ風味でした。赤城さん、可愛いなあ。そして、赤城さんのお父さん、これは一撃が出るか!? と思ったけれど、そうでもなかった。ちょっと残念、ちょっと安心です。で、最後の最後ね、ちゃんと友達と思ってもらえてる、その様子、赤城さんはよくわかってないみたいだけど、よかったなって、いや、ほんと、よかったねって思ってるんです。ええ、赤城さん、報われたって思ってるんですね。

表色89X系』、葵がけん玉をはじめた、なんで? っていう感じですが、そうか地味の克服でありましたか。っていうのはともかく、変なノリで進行していくエピソード。あとにいくほどにおかしさは増すのですが、それでも途中途中に、嫉妬する雨音が描かれたりとかね、ちょっといいもの見たって感じで嬉しかったです。でもって、最後、ああ、なんという。やっぱり克服には失敗したのかと。でも、私は地味な葵が大好きです。

  • 『まんがタイムきららMAX』第7巻第5号(2010年5月号)

2010年3月20日土曜日

『まんがタイムスペシャル』2010年5月号

『まんがタイムスペシャル』2010年5月号、発売です。表紙は『ベツ×バラ』です。元気感じさせる、そんな別所たまき、溌剌とした印象がいい感じです。ほかには、『あんちょこ』、『ちるみさん』、『丸の内』、『おてんき小春ちゃん』、そして新連載なのか? 『シュガービーチ』のカットが飾っています。

『ベツ×バラ』は新しいキャラクター登場、であるのですが、今回はその前段階といった感じです。新人がこない、人手が足りないねという状況に、待望の補充員が! しかしそれが社長の娘さん。社長の娘とかいうと、世間知らずで尊大でわがままで、みたいな展開よくあるけれど、このお嬢さん、なんかすごく完璧っぽくて、その上すごくいい人そうだ! そのいい人が今後どういう風に場に影響していくのだろう、とりわけたまきと原田について、それはちょっと予測のつかない、そんなところがあって、ゆえに楽しみであります。

『スーパーメイドちるみさん』の冒頭、この一本は見事に面白かったです。状況をほのめかすばかりでなく、ナンセンスな味わい、なんじゃこりゃ、って感覚も意外で面白く、そしてあとはどたばたと進んでいきます。しかし、大樹はちるみさんと接近して、なんかいい雰囲気? になったりしてましたけど、それを見逃してあげるちゆりさん、いい人だ。でもって、いい雰囲気は見事にぶっこわれる、大樹、運の悪い人だ。そして、紅林のお嬢さん、くやしそう、けれどその様子こそが可愛いと思える、そんな人。ええ、面白かったです。ところで、大樹はナース好きっていうの、隠してるの? 今さら、みたいに思うのはきっと私だけではないと思う。

えすぴー都見参!』はスランプを扱った話であったのですが、そのスランプについての説明、なるほどな、そう思わせてくれて、そして士気高める都、こういう真っ直ぐな人たちの描かれること、よいなって思います。うん、私も士気高めていこう、そう思わせてくれる話でありました。

『シュガービーチ』、ビーチバレーの漫画であります。部員不足のビーチバレー部、今日中にあと二人が入らなければ廃部になってしまう。そこにやってきた、ちょっとどじなヒロイン。ええ、この、あと何人入らないと廃部というの、基本になっちゃった感がありますね。『けいおん!』の成功体験がベースにあるとしたら、なんだかやばいぞ! って思っちゃいますが、まあ『けいおん!』の時点で部活ものの王道ではあったから、ことさらいう必要ないとも思うんですけどね。でもって『シュガービーチ』、部長ひとりが経験者? 残るは皆今日入部したばかりの初心者。どうなるかは次回以降に期待といったところです。

『笑って!外村さん』、今回は外村さんの部活体験が描かれて、そうか、この人、ペン習字やってるんだ。書道部での外村さん、少なくとも先生に対しているところ、すごく普通のお嬢さんって感じで、悪くないじゃん。ええ、読むほどに外村さん、いい子と思えて、そう思えるほどに誤解のされっぷり、その様子が面白くなる。不憫ではあるんですけどね。でも面白いんですね。

『ごめんね、委員長!』、人気があるのか、ゲストとして登場してきました。今回はデッサンの授業。委員長をモデルにして好き勝手に描くという、実にろくでもない友人たち。でも、その好き放題が面白いんです。で、途中藤子絵みたいになってるの、そういう表現、ちょっと好きかも。本当に委員長愛されてるなって、そういうのが伝わってくるのがいいなって思います。

ふたご最前線』、弓削さんのお姉さんがテレビに出てるという話。妹の弓削さんは、比較されてかちょっと複雑そうで、そうした気持ちの揺れ動きみたいなのは、実にいいなと思うんですね。そしてお母さんから大発表。うわ、大変なことになりました。次号でこの続き描かれたりするんでしょうか。

『強風記』、やっぱりこれ面白いな。あんまりに盆暗盆暗いわれる主人公には同情してしまうけれど、しかしぱっとしないのは実際で、さらに成功してる人間に嫉妬をたぎらせるなどね、もうどうしようもないんですけど、けれどこうした気持ちは誰にもあるものだと思います。だからこそ、この主人公には魅力面白みが感じられる、そんなように思います。

『放課後エア部』、面白いです。女の子三人がかしましく、楽しくしゃべりあってる、そんな漫画ですが、彼女らのごっこを受けて応えるファミレス店員さん、いかす! それまでの、自分たちだけでは盛り上がってるのに、店員さんくると普通に戻っちゃうっていう様子もおかしかったんですけど、この店員さんも巻き込んだ最後の一本まで、ちょっとずつエスカレートしながら面白さ持続して、なんでもない話なんですけど、よかったです。

『めいちゃんは心配性』、ゲストです。お母さんがいい味出していて、こういうつかみどころのないと感じられるような女性像、結構好きなんですが、こういうのうまくしないと、焼き直しみたいに感じられたりするところもあるから、それこそうまくやって欲しいと期待します。この漫画は、お母さんのいってることにめいちゃんが反応したり、あるいは反応できなくともロクでもないだろうって思ってたりするようなね、その反応の濃度が違うところ、いいなって思いました。で、ちゃんとお母さんを理解しようとしてる、それがよかったです。

『のぞみのノゾミ』、ゲストです。新入社員の小山希は超能力を持っている。けど、それをメリットと思ってなくて、むしろ異能のあったために、普通であることに過剰にこだわるようになってしまっているという、ええ、面白いキャラクターです。普通の人でありたいけれど、使うべきときには躊躇なく使う。そういうヒロインの超能力に対するスタンスには、なかなかに共感的であれました。

  • 『まんがタイムスペシャル』第19巻第5号(2010年5月号)

2010年3月19日金曜日

『まんがタイムきららMAX』2010年5月号

『まんがタイムきららMAX』2010年5月号、発売されました。表紙は『かなめも』。たくさんのチューリップ、じょうろ手にしたかなと花を愛でる代理であります。背景には桜も描かれて、ああ、すっかり春ですね。実際、もう少しすれば、こうした光景、街のそこここに見かけることになることでしょう。

というわけで、今回は2回にわけます。いや、あんまりに疲れてるので……。まず今日半分、というか、ちょっとだけ書いて、明日は『まんがタイムスペシャル』で書いて、明後日、あさってに続きを書きます。

かなめも』はエイプリルフールの話でありまして、騙されまくるかな、みかも同様、というのが主となるエピソードなのですが、冒頭、はるかに対して微妙な反応かえしてしまうひなたがちょっと可愛くて、というか、最近こういう展開、ちょこちょこ出てきてますね。地味からの脱却を図ってる? とかなのでしょうか。でもって後半はみかを騙すかな。この人、みか相手となると、なんともいえんキャラクターになるな。騙しながら、騙されてるんじゃないかと疑心暗鬼をおこし、そして自己嫌悪という、実に楽しい一人相撲でありました。

イチロー!』、結果が出ました。ああ、結果が出ました……。ひとり落ち! これはちょっと予想しなかった展開だけれども、いやいや、充分ありうる、予想可能な展開だったかも。皆に気を使われて、応援されて後期日程に挑む! いいですね、まさにヒロイン、主人公の面目躍如たる見せ場が用意されて、そして次号クライマックスですか。長い浪人生活でした。楽しそうでもあった。そんな一年ももう終わり。ちょっと感慨深いです。

フィギュ☆モ』は合宿に突入して、しかしフィギュア作らないなあ。って、まあ合宿は半分遊ぶというのがお決まりというか、ええ、私も合宿にいって、練習もせずに露天風呂入ったりしたものでした。さてさて、新キャラ登場ですよ。エイリアンもといエルリヤンのサンドアートがきっかけとなって、他校の生徒と出会うのですが、彼女らも造形部、フィギュアを軸とした人間関係が広がっていきます。

『ラッキーストライク!』、扉のレイレイ、なにやってるんだろう? ボールの指穴の大きさを調整してるとかなのかな? これ、調べたいんだけど、どんなキーワードで調べたらいいのかわからな、いや、いけた、フィンガーグリップっていうのか。といったわけで、今回はちょっとボウリングから離れてテスト勉強であります。でも、どうしてもボウリングの話になってしまうという、この娘さんらのボウリング好きなること、見ていてほれぼれするほどであります。ボウリングピンのかたちしたスティックシュガー入れ。いや、そんなに興奮するものなんだ。そしてレイレイ先輩が可愛い。あのぐるぐるの目が可愛い。もうどうしようもなく可愛い。落ちまで可愛い。っていうのはどうでもいいとして、自室で重いボールを振り回すレンに必死で抵抗するリンの様子が面白かったです。しかし、落ち着きのない、元気あふれるレンはいいヒロインだと思います。あの妹に目撃されたところ、誤解されるって、というようなね、こういうちょっとしたやりとりにも面白さ感じて、ええ、とても気にいっています。

で、前回レイレイの名前の由来、わからないっていってましたけど、ピンときましたよ。フルネームでは阿部レイ、アベレージっぽいですね。最後に残ったリン、桃瀬凛、きっとなんかあるんでしょうけど、まだちょっとピンとはこないみたいです。

○本の住人』は収納話かと思ったのだけど、意外や過去のりこから今のりこに綿々と受け継がれる狭いところ好きという性質がとりあげられて、なんというか、兄貴ではないけれど、可愛いって思うの、わかるような気がします。しかし可愛いだけでなく、税務署員みたいな妹とか、ナンセンスを思わせて妙に現実的であったりね、そういう面白みあり、そして不審者にしか見えない兄貴、いや、私の場合それに帽子がつくんですが、いやほんと、いつ職質うけてもおかしくない、だから、そのお兄ちゃんはまだまだ大丈夫です。ええ、面白かったです。

天然女子高物語』、最終回です。最終回にして転校生を迎えることとなって、新宿さんであります。占いするお嬢さん。当たるのか当たらんのか、それは全然わからんのだけれど、占わなくてもわかる確かなことがあるよという、ええ、あらためて確認する、それは恥ずかしいと思ってしまうかも知れないんだけど、でも後から振り返った時には、きっと恥ずかしい記憶とはならない、そう思うのですね。最終回だからといって、特別に大きな盛り上がりがあったわけではない。けれども、いつもどおりの光景を通して、そこにいつまでも変わらない気持ちを感じさせる、それは素敵だなと思ったのでした。

というわけで、本日はここで中断です。続きはあさってです。

  • 『まんがタイムきららMAX』第7巻第5号(2010年5月号)

2010年3月18日木曜日

ニャロメのおもしろ性教室

なんかいろいろ面倒くさいことになっています。いえね、東京都の条例改正の話ですよ。青少年の健全な育成についてなにができるだろうと考えること、それ自体はいいことだって思うんですけど、でもってなんでそれが検閲になるわけ? と憤慨してしまっているんですね。以前、『ふおんコネクト』が児童ポルノ規制法の改正について、かなり批判的な漫画を描いたことがありましたが、今回はそれの再戦ともいえる、そんな状況。いや、もう、嫌んなるなあ。ということで、このところいろいろ考えること増えてぐったりです。

そんな中、一冊の漫画を思い出したのでした。『ニャロメのおもしろ性教室』。これ、赤塚不二夫の漫画なのですが、ニャロメを先生にした学習漫画シリーズの一冊でして、しかしこれが内容充実していていい本なのです。これ買ったの小学生の時分だったのですけど、学習漫画にこうしたテーマが登場しはじめたのって、これくらいの時期だったのかなって思います。子供向けの学習漫画は、今はずいぶん縮小してしまいましたけど、そうした役割を担う漫画は健在であるようで、こと性教育となれば『ないしょのつぼみ』とかがそうなのでしょうか。読んだことないのでよくわからないのですが、青少年、子供に性というものを教える際には、彼ら彼女らが普段触れているメディアが重要になってくるのは、昔も今も違わないってことなのでしょう。

『ニャロメのおもしろ性教室』の扱う内容はかなり広範で、性とはいったいなんであるか、からはじめて、男性女性の体の仕組みや受精、出産のメカニズムの説明を経て、恋愛というもの、結婚と社会についてなど説明していくのですが、これで終わらないというのだから素晴しい。この先には多様な性のありかたとして、同性愛、ゲイですね、スワッピング、SM、フェティシズムが紹介されるのです。別に推奨するわけじゃありません。理解できないという立場があることを踏まえたうえで、それらは異常ではない、文化として存在してきたものでもある、理解できなくとも尊重すべきものであるとの考えがきちんと描かれているのです。そして、性感染症や避妊についての章がある。実にバランスのとれた内容であると思っています。

この本で語られることは、性とは素晴しいものであり、怖れたり忌み嫌ったりすることはないのだということ。性には責任がともなうということ。嫌がる相手に無理強いするなど言語道断であるということなど。性という営みについて真摯に向き合おうとする、そんな姿勢が見えるのです。性に対して目をつむるのではなく、しっかりと見て、知って、考えようという、そんな本であるのです。

そして、私はそうした考えこそが健全であると考えます。

東京都の条例改正案は継続審議となる可能性が強くなってきましたが、最終的になんらかのかたちで可決するにせよ否決されるにせよ、こうした青少年の育成に関して、私たち社会を構成するひとりひとりが、どうあるのがベターであるか、考えて、試して、実践していく必要があるのだろうな。考えさせられる数日でありました。

付録

東京都議会議員に送ったメールの文面を付録として添付しておきます。

前略、先日来報道されております「東京都青少年の健全な育成に関する条例の一部を改正する条例」につきまして、お願いいたしたく存じますことあり、メール差し上げました。不躾にございますが、御一読くださいますれば幸いに存じます。

東京都議会議員の皆様が、青少年の健全な育成に関してご活動なさっていること、それにつきましては、私も社会の一員といたしまして賛同いたします。3月16日火曜日付朝日新聞朝刊にて紹介されておりましたような、青少年が深夜の繁華街に繰り出し、性的非行にいたるような状況につきましては、私も心を痛めておるひとりにございます。

ですが、そうした問題に際し、「青少年に誤った性の知識を与える」漫画等表現物があるとし、それを規制しようというのは、むしろ青少年保護の目的からすれば迂遠ないしは逆効果なのではないかと存じます。

この度の条例改正案につきましては、多くの団体等がすでに危惧を表明していますこと、すでにご存じでいらっしゃることと存じます。条例の改正により規制されうる創作物は極めて広範に及びます。青少年未成年の目に触れさせたくないと思えるものは勿論のこと、青少年の発育において特に問題となり得ないような著作物にまで規制の網はかかります。条例が過大な範囲にわたる規制を可能とするにしても、すべてが実際に規制されるわけではないとの意見も聞いております。ですが、規制されるもの、されないものの基準はどこにあるのか、それが明確でないことは表現者に無用なリスクを負わせ、結果表現の萎縮を招くことになるのではないかと心配いたします。

私事にございますが、私の蔵書に『ニャロメのおもしろ性教室』(赤塚不二夫著、角川文庫)というものがございます。私がこれを購入しましたのは、小学生の時分にございました。この本は、その表題にございますように、性を扱っております。ですが、それは徒に性的興味を刺激しようというものではなく、人にとって性とはどういう意味を持つものであるか広く真摯に説明するものであり、さらには避妊や性感染症に関する知識も提供するものでありました。

条例の改正がなされ、規制がなされるようになりますれば、こうしたものも一律に規制の対象となり得ます。結果、こうした表現物の失われることとなれば、それは社会における損失といってさえよいものではないかと存じます。

また、性というものは個人的なものでもございます。一般に理解されにくい、そうした性的嗜好、行為というものもございます。それらのうちには俗悪で目を背けたくなるものさえあるかと存じますが、ですがそうした嗜好の存在し、またそれを愛好する人間のありますことは、内心の自由の観点からも尊重されなければならないと考えます。また、こうした嗜好や行為を描くことを通じ、人間という存在について肉薄しようとする表現物というのもございます。人間の時に不条理ともいえる一面を描出しようとする表現者において、表現の規制というものは足枷以外のなにものでもありません。

「青少年に誤った性の知識を与える」表現物が存在するということに関しまして、それを規制するということは、青少年を保護するという目的におきましては、的確とはいえないと愚考いたします。誤った性の知識というものは、なにも表現物出版物を通してのみもたらされるものではなく、友人など周囲の人間からも入手されうるものであると認識いたしております。そうした、誤った知識、情報に多様に触れうるという状況におきましては、これら情報をとどめることよりも、より正確な知識を青少年に与えることの方がずっと重要と考えております。

こうした記事がございます。

HIV感染者・AIDS患者は累計1万人突破! / SAFETY JAPAN [リポート] / 日経BP社

http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/report/65/

先進国におきまして、我が国のみがHIV感染者の急増を見せているとの記事にございます。

これはひとえに、性感染症を予防するという考えが浸透していないためであり、つまりは性に関する教育の不備を物語っているのではないか、そのように考えております。

今現在の青少年を保護し、また将来の母体を保護するという観点に立ちますれば、表現の規制という迂遠で、かつ弊害をもたらす方法をではなく、いかに青少年に自分自身の身と性を守るための知識を与えるかが重要であると愚考いたしております。

条例改正案に関しましては、出版界をはじめ、多くの団体、個人が注視いたしております。それは東京都議会の影響力の強さゆえであると存じます。第二の国会ともいえるほどに大きな影響力を持ちます都議会の議員皆様におかれましては、議論の輪を広げられますことを期待いたします次第です。この注目されているという状況を幸いとし、出版界を敵とするのではなく、味方につけ、青少年に正しい知識をもたらす機会を増さしめる。そのような展開を見せるようなことありますれば、どれほどに痛快であろうかと存じます。

長々と思うままに書きましたこと、お詫びいたします。また、不躾なメールをお送りいたしましたこと、再度お詫びいたしますとともに、御読みくださったことに感謝いたします。

末筆ながら、都議会議員の皆様のご活躍をお祈りいたします。

草々

追伸

本メールにつきましてのご返事等不要にございます。どうぞお読み捨てくださいますよう。

2010年3月17日水曜日

『まんがタイムファミリー』2010年5月号

『まんがタイムファミリー』2010年5月号、発売です。もう3月も後半に入りましたよ。時のたつのははやい! さて、『ファミリー』5月号の表紙はチューリップの花束抱えた『はちみつカフェ』蜂谷であります。ほかには『うのはな3姉妹』からちみっちゃくなった3姉妹、これ可愛いなあ、『となりの工学ガール』ヒロイン、そして新連載『ぽちゃぽちゃ水泳部』ヒロインが飾っております。

『ぽちゃぽちゃ水泳部』、新連載であります。トンカツ屋の娘、太ましいヒロイン、ってことで、ぽっちゃり系のヒロインであります。この作者、遠山えまという方はベテランなのでしょうか、この第1回目でそつなくヒロインをはじめとするキャラクターを紹介して、人間関係や人となりがしっかり説明されるところなど、うまいなあ、たいしたものです。絵は、目もきらきらとして可愛くて、ちょっと少女漫画っぽいテイストです。で、これ、第1話にしてダイエット決意して、それで次回水泳部に入って、となりそうな感じ。けど、これ、ぽっちゃり系が好きという人にとっては悲しい展開だなあ、なんて思います。ええ、ぽっちゃりも別に悪かないって思うですよ。

『教師諸君!!』、深沢先生が正教員となって、そして公民の城先生にスポットがあたって、しっかりとして凛々しい、そんな印象の変わっていくところなど、実に魅力感じさせて面白かったです。それでもって、西名先生の途中形態も描かれて、ああ、途中形態もよいなと思わせるものがありました。しかし、これ、へんしん、なんですか。ああ、変身なのかも知れませんね。

Smileすいーつ』、最終回でした。姉塔子さん、髪が短くなってる! 妹果歩は大学に進学していて、けれど状況はそんなに大きくは変わっておらず、しかし確実に進んでいるところもあって、そうか中津くんはキープされただけじゃなかったんだ。よかったねえ。そして、松本さん、実にしたたかなお嬢さんに進化して、これは随分魅力アップでありました。明確な変化は描かれなかったけれど、これから先に進んでいくだろう方向はしっかり示された、そんな最終回でありました。ええ、皆が仕合わせであるとわかる、そんなラストでありました。

『きょうも幸あれ』。これ好きなんだけど、すっかりゆりこメインとなってしまって、ああ、焼き餅焼くさっちゃんが面白かったのに。ゆりこだって可愛い、面白くないともいわない。けれど、この漫画の独自の色と思った、さっちゃんの視点がすっかり薄れてしまったのは残念です。たまには、さっちゃんメインもお願いしたいところです。

『よめヨメかなたさん』、あろひろしらしいっていっていいのかな、過激で個性的な昭和のかなたさんのお母様登場して、無茶で迷惑なんだけど、これが面白い。実によかったです。ところで、たまに出てくるちょっとシンプルなデフォルメ描写、目が点になってたりするような、120ページ1本目2コマ目の昭和かなたさんみたいな、その表情、可愛くって実に気にいっています。

『ちゃのま!』、ゲストであるわけですが、女友達三人が一緒に暮らしている、そこに従弟の少年がやってきたというのが前回までのあらすじですが、その少年が家族についての作文ということで、同居の三人について書くんですね。主に描かれたのは冴月の大学における生活であったわけですけれど、そこに深雪と梨花もやってきて、この梨花の人間関係の広さ、というか意外と狭い世間というべきなのかな、面白かったです。しかし、この漫画においてのお気に入りは意外や梨花でありまして、子供っぽい天真爛漫を売りにしながら、子供への影響を考えたりするところはちゃんと大人で、そういう多面を感じさせるところ、なかなかに魅力的です。で、そうした魅力は登場人物全員がそれぞれに有しているのですね。こういうところに引き付けられてるのだろうと思っています。

『ガクブンッ!』、これは犬も食わないってやつなんでしょうか。綾乃と麻美子がちょっと仲違い。仲直りしたいけれど、なかなか素直になれなくて、という話なんですが、そうしたふたりよりも、間に挟まれたハナちゃんのじたばたが面白かったです。この状況を自分のために利用したってよかったのに、そうはしなかったハナちゃん。いい娘じゃん! でも、状況は大山鳴動して鼠一匹、そのがっかり感がいいんでしょうね。

  • 『まんがタイムファミリー』第28巻第5号(2010年5月号)

2010年3月16日火曜日

円卓の生徒

円卓の生徒応援バナー私の応援しているPCゲームブランドは、今やTeam Muramasaだけになってしまった模様でありまして、さて、その Team Muramasaの新作、『円卓の生徒』の発売日が迫ってきたということで、ちょいと一部で盛り上がりを見せています。先日体験版がリリースされて、プレイしたもののうちには失望あり、期待あり。でもってそうした意見を受けて体験版の修正がなされてという状況にあります。正式リリースの際にはもう一段修正が加えられるのかな? そのあたりはリリースされてみないとわからないですね。

『円卓の生徒』は迷宮探索もののRPGです。これまでWizardry色強いものをリリースしてきたTeam Muramasaですが、今回はWizardry色を薄めにして、新規のプレイヤーの参入を狙っているとのことです。とりあえず、GENERATION XTHに比べてみれば、キャラクターメイクする必要がなかったり、宝箱の危険性が軽減され、鑑定が楽になるなど、ちょっとお手軽感が増したっていうところでしょうか。また、キャラクターは事前に用意されてるから、ロストもない? これら変更を、遊びやすくなったととるか、あるいは物足りなくなったと感じるか、これはもうプレイヤー次第としかいいようがないと思います。

で、プレイしてみての感想はというと、わりと面白いというもの。とりあえずキャラクターメイクで数十分みたいなことなく、すぐにプレイ開始できるのは悪くない。まあ、自分で作りたいという気持ちもありますけど、遊びたい気持ちが強いときにはすぐに開始できるというのも利点と感じられます。

迷宮は地上マップあり、ってG-XTHでもありましたけど、日中の屋外など、こちらの方がフィールドを探索してる感じは強いです。プレイヤーキャラは伝説の勇者の生まれ変わり、とでもいったらいいのかな。で、主人公が教師となって、生徒、パーティメンバーを育てていくというシステムです。育てるといっても、特に稽古つけたりとかはしないんですけど、かわりに好感度みたいのが設定されてて、これが高いと経験値にプラス補正があったりと、いろいろメリットが出てくる。餌付け、っていったらいかんかな、迷宮で入手した素材をもとに料理を作って与えて、それで親密になっていく。これ、きっとお気に入りの生徒を優遇してしまうな。ちょっとまずい。いや、いいんですけど。いや、やっぱりまずいですね。

料理や素材は生徒に与える他にも使い道があって、おそらくこちらの方が重要なんじゃないかって思うのですが、トラップポイントに食べ物設置することで敵を誘き寄せることできまして、そいつら宝箱持ってるから、ボスが逃走するまでに倒して入手して、といった稼ぎに使えるんですね。これG-XTHなら、迷宮の各所にあるエネミーポイントをまわって稼いで、迷宮初期化してまたまわって、そんな具合でしたが、『円卓の生徒』ではちょっと手数が増えた。かわりに迷宮初期化の手間、ったって別にたいしたことするわけじゃないんですけど、がいらなくなりました。

これを人にすすめられるかというと、ちょっとわかりません。迷宮探索型のRPGって、皆が皆好きってわけじゃないでしょうし。だから、そこはなんともいえません。私に断言できることといったら、私は買うだろうなということくらいしかないです。ええ、買いますよ。買うからには、楽しんでプレイしたいと思っています。

2010年3月15日月曜日

『電撃大王』2010年4月号

 そういえば、買っていました、『電撃大王』2010年4月号。ものすごく久しぶりに買った『電撃大王』でした。以前買ったのは、ええと、いつだっけ、『あずまんが大王』の最終話が掲載された号だ。その号にですね、誌上通販、全員プレゼントといったほうが正しいんですかね、劇場公開された『あずまんが大王』のDVDを買えるっていう応募券がついていまして、そう、DVD欲しさに買ったのでした。さて、ものすごく久しぶりに『電撃大王』を買った、その理由はといいますと、ええ、付録なんですね。『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』キャラクタービジュアルブックがついてくる。ああ、私ってちょろいな。我ながらそう思います。

でも買おうかどうかは結構迷ったのでした。いやね、きっとファンブックみたいなのは後で出るだろうし、今こうした付録で出るものは、限定されたものでしかないだろう。これのみに掲載のイラストとかも考えにくいしと思ったんですね。でも、まあ、持っててもいいかと思ったので、買った。そんなに高いもんじゃないし。けどこの雑誌に関しては、値段よりも嵩張るのが問題だなあ。

で、付録ですよ、付録。結構なページ数があるなって思いながら読み進めて、キャラクター紹介があって、そしてインタビューがあって、でも今インタビューを読んだらネタバレとかあるかも知れないから、ちょろっと見るだけにとどめておいて、と、そこで驚いたのですが、今『電撃大王』で連載されてるコミック版『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』の第1話がまるまる入ってて、むしろそれがメイン。で、これがはじめて触れた『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』漫画版だったわけですが、想像以上にアニメを踏襲していて、逆に驚くほどでした。

というわけで、これで終わり、というのももったいないので、ぱらぱらめくりながら読むのですが、なにしろ普段読んでない雑誌です。知らない連載ばっかでしょう。だから、雰囲気を感じる程度にとどまっていたのですが、おおっと、『よつばと!』発見。先達て発売された9巻からそんなに時がたっていない。いや、やっぱり面白いです。それから『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』、これはしっかりとは読まなかったんだけど、漫画版は漫画版で独自の展開してるみたい。『こいこい★生徒会』、内容はわからんのですが、見た瞬間にあらきかなおだってわかるのは流石。

それでもって、ものすごいいきおいでとばしていくのですが、途中いくつかひっかかって、『とある科学の超電磁砲』、これ興味があるのだけどあまりに断片的すぎてわからなくてすごく残念。『特ダネ三面キャプターズ』、ああそうだ、今『電撃大王』で連載してるんだったっけか。好きだったな。だが、季節は過ぎ去ってしまった。『車輪の国、向日葵の少女』、原作のゲームにはちょっと興味があります。などなど。

そして最後に『百合星人ナオコサン』。あまりに久しぶりで、よく内容わからないんだけど、でもそれはいつものことだから、描かれてることそのまま受け入れて、みすずロボと戯れる柊が素敵。そして彩ちゃん。理屈もへったくれもなしに面白かったです。

2010年3月14日日曜日

もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら

 私にはめずらしく話題の本であります。『もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら』。20世紀の経営学者、ピーター・ドラッカーの経営管理論を高校の野球部に適用してみたらどうなるだろう。しかも、主役は女子マネージャー。マネジメントを勘違いして、ドラッカーの『マネジメント』に手を出してしまい、普通ならやっちゃった、全然見当違いの本買っちゃったよ! となるところが、これを野球部に応用してみようと思ってしまう。興味引くには充分といっていいギミック、ケレン味が逆に清々しいじゃないですか。でも、私、手をこまぬいて、なかなか読もうとせずにいました。いえね、実はこういう売り方、気に食わないんですよ。でも評判いいみたいだし、新聞書評にも載ったしで、じゃあ買って読んでみようかと思ったのでした。ええ、よってめずらしく話題書なのであります。

買ったのは紀伊國屋書店。なんかね、ポイントサービスを始めたっていうので、持ってても損するものじゃないからと、作りにいったんですね。そのついでに、ああ、じゃあ試しに買ってみるか。それが、この本だったんですね。でもって私は、趣味の本ならともかく、ビジネス書など実用書は本というよりも道具だと思ってるので、普段なら傷みなんぞは気にしないのだけど、これに関しては美本を探してしまいました。いやね、この美本探索作業、あまりにも病的気質があからさまだから嫌なんですけど、どうしてもやめられない。ええ、こういう気質が発揮されるところ、それが私におけるこの本の位置付けを物語っています。

私は本を読むのがめちゃくちゃ遅いです。しかし、この本に関してはちょいと違いまして、この本、小説の体裁をとっていますが、読み物はドラッカーの『マネジメント』を紹介するための方便、刺身のツマに過ぎません。だから、ものすごい速度で読める。面白いように、びゅんびゅん読める。でもって、題材の選択がいいなと思ったのですね。高校の部活動、経営という概念が普通入りこまない組織を取り上げて、しかも身近であるから自分でも考えながら読んでいくことができます。今、どうもドラッカーはブームみたいですが、キーワードを取り上げてわかった気にさせるようなハウトゥー本読むなら、これ読んだ方がずっとよさそうです。ドラッカー『マネジメント』からの引用があり、それを野球部に応用するにはどうしたらよいだろう。野球部という営利を目的としない組織において顧客とは誰だろう。頭の中に、あれじゃないか、これもいえるのではないかと思い浮かべながら読み進めていくと、この本における解釈が提示される。こういう、問い掛けに対する自分なりの答えを探すような読み方ができるというのは、なかなかに面白く、楽しいものでありました。

でも、これ、刺身のツマがちょいとまずい。いやね、これは本題じゃないんだから突っ込んじゃいかんとも思うんだけど、やっぱり物語の姿したものを目の前に置かれると、そこに物語を期待してしまうのが私という人間みたいでしてね、あまりにもうまくことが運びすぎる。いやね、これが現実だったら、女子マネージャーの分際で監督気取りかよとかいい出す部員が出てきたり、あるいは部内における権力闘争みたいなのおこりそうじゃない? いや、わかってるねんで。そんなことになったら『マネジメント』の実践どころじゃなくなるって。でも、話が部内にとどまってたうちはいいんだけど、外部に波及するほどにイージーさが目立ってきて、すべてが主人公の属する野球部にとって都合よく動きすぎるってのはどうなんだ。いや、わかってるんです、ここで吹奏楽部が、いくらコンサルティング受けた恩があるとはいっても、うちにはうちの目標があるんです、夏の頭には大事な吹奏楽コンクール予選があるんです。そういって抵抗しちゃ腰砕けだって。でもさ、私は学生時分、野球部ととことん仲の悪かった、むしろ恨みにさえ思っていた、そんな吹奏楽部員だったんだ。だから、周囲のあまりに理解のよすぎるところ、気に食わねえなあって思ってるみたいで、でもドラマをがつんと作ってしまったら、『マネジメント』どころじゃなくなるからしかたがないよな。都合よくここぞというところで死んじゃったりするのも、それでもって発奮したりするのも、しかたないよなって。これ、物語の展開としては禁じ手というか、やりがちだけどやっちゃいかんといわれてるもんの典型なんじゃないか。いや、まあ、昨今ではこれが禁じ手というの知らない人も多いみたいだけど、ドラマとかなんかでもよく見るもんね、こういうの。ええ、まあ、ちょっとどうかと思ったの! 描ききれない中途半端なドラマ、お涙頂戴なんてなしにして、単なる状況の提示に徹してくれた方がずっとよかった!

あくまでも刺身のツマにすぎない物語が、逆に足を引いちゃうっていうのは惜しかったかなって思ったのでした。でも、ドラッカーという名前を聞いたことくらいはあるけどよく知らない、ましてや『マネジメント』なんて読んだこともないという人が、いったいそれはどういうものだろうと触れる第一歩としてはいいんじゃないかと思います。こういう風に応用していけばいいよ。コンサルティング受けて、ひとつのケースに『マネジメント』を適用してみましょう、そういう説明受けたと思えばいいんです。まずはおおまかに感じをつかんでみる。そのとっかかりには適した本であると思います。で、次は、自分あるいは自分の属する組織において実践していく段階に進むというわけです。そしてその際には、エッセンシャル版でいいから『マネジメント』を読んでね、ってことなのでしょうね。

2010年3月13日土曜日

『まんがタイムラブリー』2010年4月号

『まんがタイムラブリー』2010年4月号、発売です。表紙はお花見なのかな。ハンディカラオケで歌う『夏生ナウプリンティング!』のヒロインふたり。でも、緑のなんかを泡立ててる『つぼみ園』のことみ先生。なんじゃこりゃ! と思ったけど、抹茶か。抹茶だな。そうか、やっぱりお花見なのかと納得した次第です。総力特集辻灯子もお重ビールだんごとお花見セット。ヒロイン三人揃い踏みはちょっと嬉しいです。でもって、『放課後のピアニスト』楽譜が全音のバッハ。シド君、君は弾けるんやから、もっといい楽譜お使いよ。なんて思ったりしてしまうのでありました。

うさぎのーと』のすずめを見て、ああ懐しいとこばとを思い出しました。『いつも心に太陽新聞』のヒロインです。今回もうさぎ先生のらしさ、冬眠動物への愛があふれていて、しかし花組と冬眠組、ちゃんと冬眠組に人が集まるっていうところがよりらしくていい感じです。そして片岡をめぐる男たちの恋模様。素敵!

パニクリぐらし☆』、いよいよ結婚ということになって、佳境でありますね。ふたりの父親、それぞれの模様が描かれて、結構シリアスなその展開、乗り越えていく兄貴はよかったなと。けど、長瀬さんの親父さんは、ちっとも乗り越えられそうにないですね……。むしろシリアスを緩和する、そんなキャラクターになってしまって、こうした親父像っていうのもまた、愛すべきものなのかも知れません。きっと孫ができたらいちころだ。

『だんつま』、星野ユキさん再登場。可愛い奥さんだと思います。見栄っ張りで寂しがり屋。しっかりしてるようで、意外と抜けてる。メインの三人ともまた違った個性で、けれどうまく調和して、よい関係ができている。すごく見ていて、ほのぼのとするのでした。しかしさ、克ちゃん、すごいな。この人もまた独特、その独特さが素晴しいです。

『ごめんね、委員長』、面白かった。ぱん子さんが審判でなくプレーヤーとして参加したことで、またいつもと違ったぱん子さんの様子が見られて、そして委員長の嫉妬、ああもう可愛いねえ。いつもひどい目にあわされてる、そんな風に見えるけど、いや実際そうなんだろうけど、でもそれでも仲のいい友達なんだなって思ってる。そうした心情が見えてきた、そのことがとても読んでいて嬉しく思える、そんな話でありました。

『ペンとチョコレート』、新展開ですよ。打ち切りをくらった漫画家を、原作付きで引き上げようとする他誌編集者。そのやり手そのものといった振る舞い。それはフタバトワコのプライドを傷つけつつも、確実に結果を出して、けれどこのフタバのうちにわだかまるもの。それがどういった今後に繋っていくのだろう。それはすごく楽しみであります。納得づくと自分に言い聞かせながら、しかし乖離していく自身と現実のギャップ。なかなかのアイデンティティ・クライシスであります。

そして総力特集辻灯子であります。『ただいま独身中』はなんだかちょっと転換点が作られた? そんな印象のある回でありました。こうした展開、ちょっと異色だと思う。けれど、ちょっと違う印象に出会える、それはすごく嬉しいことであります。

今回掲載は『ただいま勉強中』と『ふたご最前線』、そして『虹色占い師』ですよ。ああ、懐しい、『虹色占い師』。この漫画もまた、ちょっとずつ変わってるお嬢さんたちが、楽しそうにやっている。そんな漫画であったのだなあと再確認させられて、そして新人占い師が自分の適正を考えながら、自己像を自身のうちに作り上げていく、そんな感じの話だったのだなあ、と確認したように思います。結構好きだったんだけど、いや、ほんと、惜しかった。で、思うんだけどさ、『ただいま勤務中』から現在に至るまでの未収録を収めた単行本とか出たら買っちゃうと思うんですよね。まあ、出ないだろうと思ってるんですけどさ。いや、ほんと、惜しいなって思ってしまうんですよ。さらにいえば、なんで総力特集なんてやっておきながら、今月頭に出たところの『勉強中』3巻の宣伝をもっと露骨にやらないの? 惜しいと思います。柱と1ページ広告に加えて、扉に煽りいれちゃえばいいのに。なんて思ったのでした。柱も1ページ広告も、ぱっと読み飛ばしてしまうから、印象にあんまり残らないです。

『放課後のピアニスト』、なかなかに面白いです。ピアノが周囲に影響をあたえてるっていう、それでお供えが置かれてるっていう、実に面白い。今回はレミの弱点、体力が足りないっていうのがね語られて、ああ、わかる。で、雑な演奏からも学んでいるっていうところ、こういうのも面白い。しかしこういう、演奏を楽しんでいる、けれど楽しみきれない理由があるっていうの、なんかいいなって。弱点からも学び、そしてここぞという時に輝く。レミはプロのピアニストとして活躍するには大きなハンデもってるけど、でも今という時代ならそれでも活躍できるところはきっとある。ええ、なんか魅力的な娘であると思うのです。

『少女カフェ』、素晴しい扉! 今回は葉月さんの職業もろもろが語られて、しかしつくしの厳しいつっこみと、それを先取りして回避する葉月さん。いい感じにコミュニケーションできてるなと思って、面白かったです。でもって、マスターは姫なのか。小さな王子様はすごく可愛い。ええ、かっこよくて可愛い。凛々しくしっかりした娘、いいじゃん、と思ってしまうんですね。

『ヒーロー警報』、これは続くのか? 助手少年Hの初恋が語られて、まあ失恋なんすけど、そして再会なのか? これ、次回に続くならそれは楽しみかも。話の都合からなのか、失恋することが常に予定されているHはかわいそうで、しかしそれが面白いんですね。憎めないいい奴だからこそ、こうした不憫な状況に、なんだか応援したい気持ちにもなろうというものなのでしょう。しかも、この飲みもきっとHのおごりなんだろうなあ。もう、大好きです。

『ものかき倶楽部』、部誌を作ろうという話。まだ部員になっていないもえみが、なんだかんだとアドバイスしたりして、そしてうまく部に迎えられて、というかずっともえみが抵抗してたんだっけか。このもえみの素直でなさ、けど面倒見はいいみたいなところ、よいなって思います。部誌は、文化祭とかで出すのが一般的だけど、そうでないなら、ええと、うーん、図書館に置いてもらうのが一番だと思うよ! 今の時代はWebで公開とかも可能だったりするけど、昔に比べると発表機会がすごく広がってるって思うけど、そんな時代にこうして手作りで部誌作るっていうのね、ちょっとノスタルジック感じさせてくれて、よいなって思ったりしたんですね。

『カフェらった』、最終回です。そうか、もう4年近く連載されてたんですね。だんだんに好きになっていった、そんな漫画でした。メイド喫茶ものだけど、メイドという色が自然に存在するようになって、それで春那たちのキャラクターが素直に伝わってくると感じてきたころには、もう好きになっていたのだと思います。なかなかにいい最終回でした。こうして、いい終わり方すると、いい漫画だったなあって思ってしまうんですね。ええ、いい漫画でした。

『ポンテ!』、面白いです。ガラス職人を目指した理由なんてのが出てきましたけど、そのガラス職人を目指すという過程での出来事。通過儀礼とか窯番とか、それで経済状況。簡単じゃないんだなあ。こういう好きという気持ちが原動力になる仕事って、どんなでも、経済的には苦境におちいってしまいがちですよね。でも好きという気持ちは止まらない。うん、だから魅力的と思えるんだ、そう思うんですね。

『ちはる日和』、初登場ゲストです。女子高生もの、お兄ちゃんがいる。幼ないというか天然というか、そんな妹が可愛く、けれどちょっと心配といったような漫画です。漫画自体としては大人しいなという印象です。アグレッシブに踏み込んでくるような表現はないから、心安らかに読める、そのテンポは結構好きです。

『空に唄えば』、これも好きな漫画です。うまくないんだけど、歌うのが好き。で、合唱部とは別に、仲間集めて合唱しようという、そんなヒロインが支えられながら、ちょっとずつうまくなっていく、そして皆で一緒に歌えば嬉しいってところがいいんですね。ヒロインは確かにうまくないんだけど、それでも歌いたい、うまくなりたい、そういう気持ちを素直に口にして、その気持ちがまた別の誰かに影響していくっていう、その連鎖するところもよいのだと思います。気に入ってる。だから、頑張って欲しいって思っています。

  • 『まんがタイムラブリー』第17巻第4号(2010年4月号)

2010年3月12日金曜日

少女素数

 『少女素数』、『まんがタイムきららフォワード』にて連載されている漫画、本日単行本が刊行されました。表紙にはあんずとすみれ、ふたりが手を取り合って、うつむきかげんに立っている。静かで、しめやかな雰囲気がしっとりとして、心にそっと触れてくるような、そんな印象が素敵です。ぱっと鮮やかに花開く、そうした魅力は本編にとっておいたのでしょうか。表紙ではしとやかに、そして本編はじまればにぎやかに。多面体の結晶のように、光の加減でいかようにも違って輝く、少女期というきらめく季節をスケッチする。『少女素数』がはじまります。

作者のいうところによると、これは女の子の可愛いを追求しようという、そうした漫画なのだそうです。ヒロインは、あんずとすみれ、ふたごの姉妹。金髪のあんず、碧眼のすみれ、それぞれに父から受け継いだ特徴を備えて、綺麗。ふたりでいれば騒がしいくらいに元気。けれど、ひとりになればしおらしく内気さ見せるすみれなど、なかなかに一筋縄ではいかない娘らです。

『少女素数』には、そんなふたりを見つめる視点があって、それがこの漫画の質感を決定づける要素となっているのではないか、そう思っています。あんずとすみれの兄。彼の、妹たちを見守る目はやさしくて、そして可愛さ、美しさに対する敬意のようなものを感じさせるのですね。造形作家をしている、そのせいで、あんず、すみれの友人の男の子、ぱっくんからは尊敬の眼差しを向けられたりする、そんな人。ちょっと朴訥としていて、安心できる、そんな包容力感じさせる人なんですが、そのせいで年より老けてみられる。ええ、けれどその兄であり父でもあるかのような態度が、この漫画に浮つきよりも落ち着きを与えて、またその落ち着きが、ややもすれば瞬く間に過ぎさってしまいかねない、そんな少女であれる時代の輝きを一層につのらせるのです。

『少女素数』は、女の子の可愛いが追求される漫画。望むと望まざるとにかかわらず、変化しないではおられない時期。儚さが美しさをより際立たせるのかも知れない。そうした時期特有の美というものを掬いとろうとするかのように慈しむ漫画ではあるのですが、けれどこれがいつ物語として流れ出し、動きはじめるのだろう、そんな予感もしてしまうのですね。作者からすれば、そうした意図も予定もないかも知れないけれど、私はこの人は、ただただその時々の美をスナップショット撮るみたいに保存するだけのつもりでいながら、ついには物語らないではいられない、そうした躍動する思いを胸の奥に抱えてると、そんな風に感じているから、だから今はただ日常的風景のちょっとした描写であるようなものが、気付けば思いもしなかった伏線として振舞うようになったりするんじゃないかって、そんなこと思いながら読んでるんですね。

いつか動くのかな、わくわくですよ。ええ、時よ、今しばしそこに留まっていて、と望みながら、いつか動かないではおられない、そんな予感にふるえる心を自身感じとっています。ええ、すごく期待してしまう、しないではおられない。『少女素数』とはそんな漫画であるのです。

  • 長月みそか『少女素数』第1巻 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2010年。
  • 以下続刊

2010年3月11日木曜日

音楽史の休日 ― 見落されたエピソード

私は、子供の時分、音楽に憧れを持っていたものの、あまり恵まれた環境にいなくてですね、だって、うちには音楽聴くのを趣味にしてる人間とかいなかったんです。だから、学研の児童向け事典の音楽の巻に入ってたレコードを、それこそ繰り返し繰り返し聴いていた、そんな子供であったのですね。これ、クラシックの話。当時はレコードとか高くて、テレビで見て聴いて、みたいなのが一般的だった時代です。そんな私が本格的に音楽に興味を持ちはじめたのっていつだったのかな、って思うと、それはやっぱり高校時分なんじゃないかなって思います。図書館で音楽関係の本をいろいろ借りて読んだ、それで、音楽ってのは面白そうだなあって思った。それまではただ曲が好きだっただけ。それが、曲の背景にも興味が広がった。ええ、大きな転換点だったと思います。

音楽の背景に興味を持つようになったのは、所属した吹奏楽部、それがですね、毎年5月に定期演奏会するんですね。だから、新入生なんてほったらかしだった。下働きというか人足というか、そういう扱いを受けるのが例年のことだったのですけど、私はそんなの興味なかったから、出席だけ取って図書室に入りびたってたんです。本読んで、雑誌読んで、そんな放課後。そこで出会ったのが『音楽史の休日』という本だったんですね。

これ、タイトルにあるように音楽史に関する本です。ですが、正統的な音楽史をがっちりしっかり書いてます、っていうような本ではなくてですね、音楽史の裏にはこんな面白エピソードがあるんですよって紹介する本でした。基本的にエピソード単位で語られるので、歴史的に積み重ねられていくものを把握しようという本ではないのですが、そういうのが知りたかったらちゃんとした音楽史のテキストを読めばいい。この本は、そうした体系的な知識を得るよりも、面白エピソードを通して音楽や音楽家を身近に感じることのできる、そういった類いのものなのです。

でも、ただ面白いだけじゃなくて、結構しっかりしたエピソードもあったです。もう、忘れもしないです。ヘンデルの『水上の音楽』に関するエピソード。これ、ヘンデルが王室においていかに立ち回ったかっていう話なんですが、当時ヘンデルが働いてたのはイギリスの王室なんですけどね、ええと、アン王女の時代です。本職はハノーヴァーの宮廷楽長だったにもかかわらず、イギリスに入りびたってたんです。

面白いのはここからです。アン王女、亡くなります。そうしたら、よりにもよってハノーヴァーの選帝候ゲオルク・ルートヴィヒがイギリス王室にやってくるんです。名前も変わってジョージ1世。このへんは、世界史にも出てくる話。けど、世界史だけじゃ、この出来事の影で右往左往したろう音楽家の姿は見えてきません。ええ、きっとうろたえたんだろうと思うんです。ずっと、お前、帰ってこいよといわれてたのをほったらかしてたんですよ。そうしたら、雇用主がこっちにやってきちゃった。しまった。どうしよう! ヘンデルは困ってしまって、そうだ、王様の船遊びにナイスな楽曲プレゼントして御機嫌とろう! って感じに作られたのが『水上の音楽』だったというような話があったとかなかったとかいうんですね。

この伝説は有名なもので、この時代の音楽が好きという人間なら大抵知ってるんじゃないかと思います。最近の研究では、このエピソードは後に作られたものという説が主流になってたような気もするんですが、けれど当時の私にとっては、ものすごく衝撃的な話であったんですね。音楽というものが、音楽家というものが、歴史的事件に深く関係しているんだって。音楽はまさに社会や歴史に関わりうるものであって、また歴史というものはただ出来事の羅列されるようなものではないんだって。その影にはこうした個人の生きて思って動いている、そういうようなものなんだって、実感的に理解したのはこの本のおかげでありました。ええ、歴史観まで変化させてしまったのです。

この本、絶版して随分たつのですけど、復刊して欲しいなって思うんですけど、最新の研究からしたら古い記述があったりするとかなんでしょうかね、リバイバルする気配はなくて、古書で入手するしかないというのが残念なところです。私も、これ、買っておかなかったのは失敗だったと思っています。ネタ本としても優秀なので、折に欲しいなって思うことがあるんですね。

2010年3月10日水曜日

まんがタイムきらら:系列3誌についての印象

ついこないだ、『まんがタイムきららキャラット』について書いていた時のこと、好きな漫画が多すぎるせいで感想が長くなって、書いても書いても終わらない、みたいにいってたんです。沢山書くのもしんどいし、かといって好きな漫画を飛ばすのもまた辛い、そんな感じの話。そうしたら、『きらら』と『キャラット』の違いってなんでしょうっていう質問をうけたんですね。ああ、なんとなく違うって思ってる、でも実際のところ、どこがどう違ってるんだろう? 考えれば考えるほどわからなくなりまして、とりあえず宿題にしてもらったのでした。

けど、本当にどれだけ違いがあるんだろう。『MAX』は結構違うかなっていう印象はあるんですよね。これは雑誌創刊時の印象のせいかも知れないのですけど、『きらら』よりも『キャラット』よりも、より先鋭化された雑誌としてスタートして、けれどそれが微妙に当初路線から逸れたせいで、なんともいえん独自色が残った、そんな感じにとらえています。色物っていったら失礼ですけど、自らカテゴライズされることを拒否するかのような自由さを持って展開する、そんな漫画が多いのが『MAX』という印象があるんですね。

じゃあ『きらら』と『キャラット』は? というと、『キャラット』はもともとファンタジー色の強い漫画を集めてみました、っていう雑誌だと思うのですが、そういう色はもうなくなってるように思うんですね。じゃあ、どんな色なのさ、といわれるとはたと立ち止まる。厳密に見ようとすれば、『きらら』はこうで、『キャラット』はこう。こういうところが特色で、こういうところが違います、といえるほどに違ってはいないと思うのです。さらにいえば、『MAX』も同様なんだと思います。だから、ここは考えてはいけない。考えるのではなく感じたことをそのまま言葉にしたらどうなるだろう。

昨日、『まんがタイムきらら』について書いてみた時に、ふと思ったんですね。私にとって『きらら』とは、オーソドックスながらも結構アグレッシブに毛色の違う新作を開拓しようとしてる雑誌かなって。対して『キャラット』はというと、大幅に逸脱することを避ける、おとなしい、そんな印象があるんですね。この逸脱を避けるという印象は、一時期の『キャラット』の印象によるものかもなって。えっ、『火星ロボ大決戦!』とか載ってたのに? 『雅さんちの戦闘事情』とかも載ってたのに? っていわれたら、たしかにそのとおりなんですけど、けれどキャラクターの心情や物語を追おうとする、そんな漫画が記憶に色濃く残ってる、そんな気がするんですね。

オーソドックスなのは『きらら』なんだと思います。だから、『キャラット』もオーソドックスから逸脱しようとする、そんな傾向を持ってるんだとは思うのです。けれど、その逸脱は私の傾向にあっている。だから、おとなしい、なんて感想が出てくるのでしょう。水があっている、同じテンポで踊れる、っていうだけの話。きっと一般化はできない、そんな極めて個人的な感想でありました。

2010年3月9日火曜日

『まんがタイムきらら』2010年4月号

『まんがタイムきらら』2010年4月号が発売です。いやあ、今日は朝から一日雨でした。私がいつも四コマ誌を買っているいきつけのコンビニでは、これまで袋いりませんといい続けてきた甲斐あって、なにもいわずとも袋がつかなくなるまでに顔パス状態であるのですが、しかし今日はさすがに袋をくださいといいました。いやね、コンビニは駅前にあるんですけど、そこから駅までのわずかの距離で濡れてしまいそうだったの! 濡れたらショックじゃないですか。表紙は『けいおん!』。青空のもと、ジャンプする唯と梓であります。

けいおん!』は、和ちゃんが扉に登場。ああ、なんという可愛さだろう、という前にちょいとイラストコンテストについても書きたい。いやね、中野梓賞が素敵すぎる。もちろん、他のイラストが悪いなんていいません。けど、中野梓賞の力抜けて、けどそのゆったり加減が可愛くて、これはほんと素晴しい。愛があふれてるなって、楽しさもまたすごいなと思ったわけですよ。

ということで本編です。受験直前の状況。D判定のふたりが、受験を目前として特訓するっていう展開、唯は和ちゃんに、律は澪にそれぞれ頼るんですけど、そんな最中、ひとりあぶれた紬が梓に接近するっていう、これは1月号掲載の裏側? 続き? なんか一気に広がったぞ。そんな感じでした。しかし今回は、甘える憂や、意外にしっかりしてる唯など、メインキャラクターひととおり登場させて、また違った側面描く、なかなかに面白い回でありました。

ふおんコネクト!』、ああ、プラモデル作りたいなあ。これ、MG Vガンダム ver.Kaだと思うんですけど、実際すごい出来らしいですね。稼動範囲の広さ、また変形等のギミックについての解説見たときには、本気で欲しいと思ったものでしたよ。けど、同じ作るなら色塗りたい。そうなると、すごい手間。時間が足りな過ぎる。ということから見送りまして、けどこうしてまた意識させられると、素組みでもいいから作りたいかな、なんて思えてきて危険です。しかし、プラモデルの技術とか、すごいことになってるなあと、新しいのが出るたびに思わされてるように思います。

『チェリーブロッサム!』、ゲストです。園芸部漫画、でもってちょっとお色気系? と思ったら、見た目お嬢様、実質変態セクハラ娘がものすごいインパクトで迫ってきて、ごめん、ちょっとどころじゃなく面白かったです。次回掲載あるなら、その時にどう思うか、それで評価は決まってくるんじゃないかって思うのですが、今回の勢いからすれば、きっと面白いと思ってしまうんじゃないかな、なんて思っています。なんか、くやしいぞ。あと、ちょっと肉感的な絵はあんまり好みじゃない。でも、面白いぞ。

『R18!』は、これ、コンピュータで作業してる人なら、多かれ少なかれ共感するんじゃないかなという話。ええ、私も昔はよくこうした目にあったものでした。私の作る文書は主にテキストなので、サイズも小さく、ゆえにトラブル時の破損なんてのも少ないわけですが、それでもやっぱりあるわけですよ。一文書くごとに、手が自動的に保存コマンドを叩くとはいえ、ソフトウェアの異常? により失われることもあるわけで、数日かけたAccessデータベースが再起不能になったりとかね。帰りたいと思う、その魂の抜けたような状況、ほんとわかります。で、そうしたトラブルを同僚同士で起こりますようにと願う。悪い人たちだなあ、とは思うのだけど、本当に仲が悪かったら洒落にならん発想ですよ。それがこうして冗談ごとで済むというところ、いい職場、仲のいい人たちだなって思います。

『シネマト・パラダイス』、これ素晴しい。変わった娘らの漫画だなあ、と思ってたんだけど、いや、まあ今回も変わってるんですけど、もう最高。あやかちゃん可愛すぎ。どんだけマイペースやねん。でもって、どんだけわずらわしいねん、君。もう、めちゃくちゃ可愛いです。あやかちゃんとさきの学校にえみもやってきて、それでもって一緒に街歩き。無理矢理手を繋ごうとするあやかちゃん。映画館にいって、中に入らなくってもいいっていう、パンフレット好きのえみ。もう変すぎる。個性的すぎる。それも無理に作った個性っていうより、ほんとに自然というのかな、身近にいそうって感じはまったくないくせに、いてもおかしくないような、実際いそうな、そんな個性の押し出しが最高です。私の好きなタイプでいうと、きっとえみです。でもあやかちゃんが可愛くてしかたありません。

『うさかめコンボ!』、2回目にして、しっかりと面白い。露天風呂から親睦会、寮の状況描いて、キャラクターを紹介していくんですけどね、みながいい感じに動いていて、実に楽しかったです。もちろん、まだまだ顔見せといった段階です。きっと、続いて個性がよりしっかりと描かれるようになれば、もっと面白くなるだろうな、なんて予感してしまう。そんな回でした。

『アイオーンコード』、ゲストです。ラノベ的といったらいいのか、中二的といったりするんですか? 特殊な能力を持った生徒の集められた学校が舞台。過去を見ることのできるヒロインが、未来予知をする少女や強烈な幸運を持ったクラスメイトとともに過ごす日常? を描いていく模様です。でも、結構面白かったです。超能力があることを当然としながらも、そればかりに頼らない。けれど、ここというところで超能力を生かしてる。悪くないです、よかったですよ。

PONG PONG PONG!』、もう大好き。祐太がついにくじけた? いや、もちろん江上さんの手紙のせいなんですけど……。しかし今回は、高坂を利用するすべを覚えたリコや、説得が通じない、しかも誤解しまくる江上さんといった強烈キャラクターが相互にぶつかりあって拮抗するかのような状況描かれて、スリリング! 最高でした。しかし、リコが祐太と暮らしてたっていう事実を知って、リコに嫉妬する江上、祐太に敵意募らせる高坂、もうどうもこうもない状況成立してしまって、そこに飛び込む主人公ですよ。どうなるんだろう。どう考えても、酷いことにしかなりそうにない。そんな終わり方に、次号がもはや楽しみになってしまっています。

『99s』、ゲストです。ファンタジーとあるけれど、和製RPG的世界をベースにした冒険者四コマって風情であります。で、99sとあるように、冒険者が全員レベル99、カンストですかね? 魔王よりも圧倒的に強くて、魔王の城で好き放題に暴れちゃうっていう、結構夢も希望も、血も涙もない感じの漫画でありました。正直なところをいいますと、もう一味欲しいという感じです。RPGパロディものとしては、ストレートな展開だなという感想であったのでした。

メロ3』、わあ、素敵。花粉症の話であります。残念ながら、私は花粉症は発症してなくて、だからそんなに共感的ではあれないのですが、しかしそれにしても木ノ子が可愛い。ちょっとでも可愛く見られたいと思う、その気持ちが健気ではありませんか。でもって、ポン太の妹、真都もすごくいい子。いや、しかしあの場面を目撃して、そういくのかと驚いた。いやもう、陸前君のことですよ。きっと、妹を彼女と勘違いするとか、好きになっちゃうとか、そういうのだろうと思ったんです。したら、全然違ってた。陸前君、眼鏡かけるとなかなかいい感じ。それはそれでよろしくてよ。

My Private D☆V、ととねみぎです。ネコミミ、そしてロリが萌えであるとのこと、って、それはつまり『ねこきっさ』のヒロインがクゥである理由ですか! 私は獣耳についてはピンとこないのですが、でもロリ巨乳がダメというのはよくわかる気がします。ええ、なんだかわかってしまう気がします。

  • 『まんがタイムきらら』第8巻第4号(2010年4月号)

2010年3月8日月曜日

ただいま勉強中

 ただいま勉強中』の第3巻が発売されて、これでもって完結とあいなりました。個性的な女子高生たちのお話。なんだか要領の悪い由良と、元気というかちょっと乱暴? な飛鳥、このふたりがメイン中のメインで、そしてバレー部一年、元気なんだけれどちょっとのんびりしてる葉菜子、オカルト大好きの千里。第3巻では、恋する美術部員、山田初音も加わって、他には担任やら理事やらと、にぎやかでちょっと癖のある女性たちが、本当に魅力的な漫画であったのですね。もともとからして私は辻灯子の漫画が好きであるわけですが、それにしてもこの漫画、好きでした。

第3巻で気になった登場人物、山田初音、彼女のエピソードは妙にセンチメンタルでありまして、学校の先生に恋をしてる。けれど、それをはっきりとは口にしない。先生に会いたい一心で、イーゼル持ち出して土手で絵を描いたりしているっていう健気さ、いじらしさはもうたまらんものがありましてね、辻灯子という人はあまり恋愛の要素を前面に出したりしないという印象があったのですが、そうした考えなど一度に払拭されてしまうほどに素敵なエピソード。ああ、あんな娘に恋されるだなんて、どんなにか仕合わせなことであろうかと思ったのでした。

けれど、そうした情を描いて、ただ単なるラブコメの展開にならないのが辻灯子らしいともいえまして、素直じゃない山田初音。恋愛はなかなか簡単には成就しなさそうで、そのやきもき、めちゃくちゃ可愛くて、そして面白い。実に乙女であるんですけど、乙女一色ではあれないというところ。目の前の状況、その時々の楽しみや自分の興味、そうしたもろもろに対して素直である、そんなところがシリアスに水をさして、また逆に乙女の表情を際立たせたりもして、ほんと、きらきらと多彩に色を変えて美しい、万華鏡のような娘たちなのであるのでした。

そんな彼女らの興味は、どことなくはみだしているっていうか、一般的な興味や関心、ありようとはちょっとずれてるようでしてね、そのずれてるってところが本当に素敵であったのでした。優しい世界であると思います。はぐれもの、変わりものが、そのありのままで過ごしている空間。私が辻灯子の漫画が好きで好きでたまらないという時は、このはずれものの楽園といった雰囲気にやられちまってる、そんな状態であるのかも知れません。『ただいま勉強中』もそう。他の漫画もそうだったなあって思って、ええ、はずれものである私の憧れてしまう、そんな世界が辻灯子の漫画にはあるんだなって思って、だからもう好きだっていうんですね。

『ただいま勉強中』は、生徒たちが一年生から進級することなく終わってしまいました。もし続きがあるなら、読みたい。彼女らのこれからがあるなら知りたい。そんな風に思えるのは、やっぱり彼女らのことが好きだったからなんでしょうね。魅力的で、ちょっとあやうくて、心配だったりもする、そんな彼女たち。でも、ほんと、いい子たちでした。

  • 辻灯子『ただいま勉強中』第1巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2008年。
  • 辻灯子『ただいま勉強中』第2巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2009年。
  • 辻灯子『ただいま勉強中』第3巻 (まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。

2010年3月7日日曜日

ヒツジの執事

 『ヒツジの執事』、連載中は『子うさぎ月暦』というタイトルでした。作者はナントカ。ええ、『新釈ファンタジー絵巻』を描いてらした方です。『子うさぎ月暦』は、『新釈ファンタジー絵巻』の続編とでもいいますか、『絵巻』のヒロインかぐやの婚約者であるミニ様を主人公とした漫画の四コマ編であったのですね。ミニ様の幼少のころ、まだ物心もつかない、それくらいの時期を描いて、執事のサフォークをはじめとするお屋敷の皆がミニ様を育てつつ、屋敷を切り盛りする、そんな漫画であります。それがこうして単行本となるにあたって、ミニ様よりもサフォークにメインのスポットがあたるよう、エピソードが抜粋されたのでした。

おそらく、面白さという点で、お屋敷で働く皆に注目した方がより面白かろうという判断がなされたのでしょう。ええ、実際めちゃくちゃ面白いです。サフォークは羊。羊毛を刈られてしまったり、またサフォークの思い人であるメイド長ミセスコリーはその名のとおり牧羊犬であり、ここに立場を超えた弱肉強食的関係が成立するという面白さ。いや、もう、弱肉強食って比喩じゃないよな。マトンとかいってるくらいだもんな。いや、食べたりはないですけどね。

この漫画には、サフォークをはじめとするお屋敷の皆が幼い当主ミニ様に注ぐ、愛情があふれんばかりにあって、働く人たちの助けあいながら自分たちの仕事に誇りをもって取り組む、そんな姿が魅力的に描かれて、そして見ればどうにも笑わずにはおられないような、強烈なユーモアが生き生きとしているのです。私は、それらの要素、どれもが好きでした。思いやりを持って幼い主に接するも、毛を刈られてしまえばミニ様の興味は羊毛へいってしまう。中身、食肉っぽい方はどうしようといった切ないネタさえ面白く、またそうしたエピソードに浮かぶサフォークの哀愁がとてもいい。読むごとに好きになる。サフォークが、みなが好きになって、そしてナントカの漫画が好きだなと確認するかのようなのです。

『ヒツジの執事』には、職場ものとしての面白さがあるのですね。誰もが自分の仕事をまっとうしようとしている。そこに擬人化動物ものとしての面白みが加えられ、また月面に生活するというSFっぽい要素が加えられ、そしてもちろん、私たちの日常にも起こるようなこと、共感を持って受け入れられるものもたくさんあって、あの新車納入から初心者ドライバーに振り回される話とか、もう死にそうに面白い。ほのかな恋の要素なんかもあったりする。サフォークの恋はなかなか成就しそうにないけれど、でもなんか応援したくなって、これはサフォークの人柄あってのことかも知れません。

そして、人情ものとしての味わい、それが素晴しい。基本的にはコメディなんです。でも、折に、自分を引き立ててくれた先々代先代への恩や敬意が表されて、ああ、彼らの仕事に対する誇りの源はこれであるかと思わされるのですね。先代の恩あればこそ、ミニ様への深い愛情も理解できる。事故で亡くなった先代。ただひとり残された子供、それがミニ様でした。『子うさぎ月暦』は悲しみを底に隠しながら、明るく楽しいお屋敷の様子を描いて、情は深く、暖かで、やさしく、ええ、そうしたもろもろがサフォークというヒツジの執事に凝集されているのかも知れません。

ナントカはシニカルな笑いをもって、情愛の豊かにあふれる様を表現する。私の愛してやまない作家です。抜粋とはいえ通して読んだ『ヒツジの執事』。笑って、笑って、時に涙につんとなって、けれど最後にはきっと暖かな気持ちで読み終えることのできる。そんな一冊。広く読まれて欲しい、心からそう思っています。

  • ナントカ『ヒツジの執事』(まんがタイムコミックス) 東京:芳文社,2010年。

2010年3月6日土曜日

『まんがタイム』2010年4月号

『まんがタイム』2010年4月号は本日発売です。表紙はメインに『おとぼけ課長』がどーんと配されて、ワンカップ片手にお花見の風情ですね。他も概ね同様で、『みそララ』は花見で酒飲んで泣き上戸なのか謝り上戸なのか、おかしなことになっていますし、『ひまじん』は花は花でもチューリップを見てる。これ、多分、アパートの自室だな。そして、『だって愛してる』は、夫、妻ふたりが寄り添っている。あたたかな情景ですね。春、花見といえど、いろいろな楽しみ方、かたちがあるってことなのでしょう。

『マチルダ! — 異文化交流記』が『タイム』でも連載開始です。もともとは『オリジナル』での連載であったのですが、人気があったのでしょうか、こうして二誌連載となりました。私としては大歓迎。『マチルダ!』、好きなんですよ。いや、茶崎白湯の漫画が好きといったほうが正しいかも知れません。今回は第1回ということもあってでしょうか、あやとマチルダ、ふたりだけの状況。日本の昔話に憧れる? そんなマチルダが、全部わかったうえであやを困らせるといったところがよく出てまして、このマチルダのちょっと理不尽、けれど最後の一本なんかに出てると思うのですが、理不尽でありながら、なんだか詩情のようなもの感じさせたりもするっていうのね、ちょっとそういうところが好きみたいですよ。でも、最後のも理不尽ですよね。この困らせて楽しんでいるっていうの、マチルダ流の愛情表現なのかも知れません。気に入られたら最後だな……。

すいーとるーむ?』は、少々固まりつつあった状況が揺り動かされて、また少し初期のころの味わいが取り戻されてきているなという感じです。かつて永井くんがやってたこと、秋さんが再びなぞっているとでもいいましょうか。けれどそこには、永井くんだったから駄目なんでしょという見下しがあったり、また秋さんの戦略が有効だったりするという、ちょっとゆかりさんを巡る状況が変化するんじゃないか、などと思わせる展開があって、けれど結局ゆかりさんを攻略することはできないという、そのお定まりが快感であります。

『わさんぼん』のオリジナル菓子はずいぶん長い取り組みになってます。焦らず腐らず、しっかり取り組んでるってのは、旦那の感想ではないですが、たいしたものだと思います。しかし、今回は萩くんが素晴しい。可愛いもの好きっていうのがね。しかもツンデレ風とでもいったらいいものでしょうか。草太に可愛いもの好きと思われたくないんだっていうね、それでも可愛いものを愛でる気持ちは抑えられないんだっていうね、その様子がとにかく面白いのでした。女の子ふたりも可愛いのだけど、今回は萩くんが上回った、そう思います。

『プチタマ』が最終回でした。あらら、好きだったんだけどなあ。最終回の話題は進級テスト、というか補習なのですが、たまりがどうしようもないのはいつもと一緒。でも、ひとつ目的ができたことで、いつもよりもゆるさは少なかったように思います。ともあれ、これで終わりです。お疲れさまでした。

そして『ひまじん』が移籍連載開始です。この漫画もずいぶん長いですが、面白さを維持していることに関しては、さすがの一言であります。ヒロインふたりにサブキャラ数人という基本を維持しつつ、話を膨らませて、けれど膨らませすぎることもないという、その塩梅がとてもよいと思います。とりあえず、これがまた読めるようになったのは嬉しいところです。

PEACH!!』は、広能は岩井のことが好きで好きで、というのは長く描かれてきたことですが、今や武田が相原のこと好きで好きでというエピソードが旬である模様です。あの、寿司とかね。すっかり岩井が忘れられてるっていう。描かれるのは、武田が寿司を握る、その手付きばかりであったというのに、けれどそれが不思議と味わい、武田の真剣さを物語るのだから面白いものだと思います。またエビのエピソードなども、不思議な物悲しさ、そしてちょっとしたさわやかさがあって、よかったなって。武田は店を救ったのか、エビを救ったのか、それは読むもの次第と思われますが、いずれにしても、ちょっとした清涼が心地よいと思える、そんな話でありました。

  • 『まんがタイム』第30巻第4号(2010年4月号)

2010年3月5日金曜日

『まんがタウン』2010年4月号

『まんがタウン』2010年4月号、発売されました。臼井氏の手になる『クレヨンしんちゃん』が終わってから、はじめての刊行となる号ですね。表紙には、今作られてるのかな? 映画のしんちゃんが載っているけど、メインは『かりあげクン』、『そんな2人のMyホーム』、『派遣戦士山田のり子』の3タイトル態勢である模様です。実際、人気のあるというのはこのへんなのかも。『タウンオリジナル』があったころは、『山田のり子』表紙でしたっけね。時間はずいぶんたったけど、今でも人気があるのかな。私が『タウン』を読むようになったのは、『山田のり子』のためでした。

そんな2人のMyホーム』は、ついに輝くんの娘離れが意識されはじめたようで、大きな進歩ですね。けれど、これは実際必要な話で、舞の将来のためにも、それから輝くんのためにも必要なことなのだろうなって思えます。ひとりの男がきっかけとなって、これまで父ひとり娘ひとりという小さな世界で暮らしてきた彼らの関係が変わる。その変わりゆく様、しっかりと見よう。そんな気持ちでいるのでした。

『70's 愛ライフ』は、70年代において夢見られた21世紀の未来についての話ですが、いや、もう、全然予想どおりではありませんでしたね。漫画の中では、銀色の服が出てましたけど、多くのSFが夢見た未来はレオタードスタイルとかビキニスタイル。でも、そういう方向に時代は向かいませんでした……。テレビ電話は可能になったけれど普及しているとはいいがたく、宇宙への進出も思っているほどではなかった。食事も、チューブ型とか錠剤型とか、けどそういうものはあるけれど、一般化はしなかったですね。などなど、かつて夢見られた未来と現実の今を比較してみると面白いものです。コンピュータや通信技術は想像以上に発達しましたけど、その他は思ったほどではないんですよね。懐かしくも面白い話題でした。

『蝶のように花のように!』、男性よりもてる男前の女性の漫画ですが、わりとパターンにはまった展開がされるにもかかわらず、結構悪くないなって。それは、ロックオンされながらも抵抗を続ける西野彩香の存在がためかも知れません。この人のなんか困ってる表情、なんだか癖になってきた模様です。常識的で魅力的なお嬢さんです。でもって今回面白かったのは、Tシャツのエピソード でした。あの葛藤ぶりが素晴しいです。

『かしこみっく』が、なんだか一気にこなれたように思えて、でも面白さは変わらない。いや、より面白くなったと思います。あのこっくりさんとかね、落ちのコマ、ナンセンスな地口落ちなんですけど、思いもしなかった方向に展開させて、かつ絵としても可愛いという、なかなかに理想的なのではなかろうかと思える、そんな感じであります。もともとあったナンセンスなのり、勢いは残したまま、うまく変化していっているという感じがあるのです。

『龍天寺夫妻の生活』が終わりました。前回娘さんが生まれて、それでいきなり大きく育って、これからどうなるんだろう、と思ったら最終回。やっぱり夫妻の生活ではなかったからか? どちらにしても、娘をめぐるエピソード、面白かったです。このへんをふくらませても面白かったかも知れないななんて思える、そんな最終回でした。特に、娘が母親と同じ傾向に向かうっていうのね、それで父親がショック受けてるっていうのね、こういうの、自分もやったことだから否定はできない、けれど、みたいな葛藤がこれからあったりするのかななんて思って、だからちょっともったいない。けど、もったいないって思うくらいがちょうどいい引き際なのかも知れません。好きな漫画でした。

『みねちゃんぷるー』、雅の婚約者の続きです。で、この少年のこと、雅は知らなかったんですね。意外。でもって、少年の片思いなのか。でも、調査書はやりすぎだ。そりゃ、雅も敬遠することでしょうよ。という話。しかしこれで峰と雅がけんかすることになったわけですが、これはどういう方向に展開するんだろう。仲直りするだろうことはわかる。その過程で、少年と峰が接近するのか、いややはり少年と雅が接近するのか、後者だろうと思うのですけど、どちらにも進みうる、そんな状況に立ってるなあと感じています。

ところで今回は、雅の怒ってる顔、たくさん見られてちょっと嬉しかった。いや、別に怒られたい願望とかあるわけじゃないです。表情のね、豊かなるところ、笑顔だけでなく怒っているところなども見たい、そんな気持ちってあるじゃないですか。というわけで、私はやっぱり雅ファンであります。そうか、72か。あんまり急いで育っちゃいやよ。

  • 『まんがタウン』第11巻第5号(2010年4月号)

2010年3月4日木曜日

『まんがタイムジャンボ』2010年4月号

『まんがタイムジャンボ』2010年4月号、発売です。表紙には新生活を応援しますとの文言ありまして、ああ、もう4月号、新生活がはじまる、環境がかわるという方もいらっしゃることでしょう。でも、私はあんまりそんな感じじゃないなあ。表紙は中央に『じょしもん』、まわりには『朝倉さん』、『太陽くんの受難』、そして『レーカン!』が描かれて、確かに新生活、新しい環境に順応しきれていない、そんな様子が描かれています。

さて、そんな『ジャンボ』の新生活、新環境でありますが、ゲストは『ひめとりものがたり』、『ハコベエ』、『トラウムメディカル8.5』、『すいーとプロミス』、『ナイショのひめねこ倶楽部』、『恋する猫は爪を隠さず』、『剣道ガール』、『放課後のアインシュタイン』、『女の子定食』、『アイスボーイズ!』、『委員長がいるからね』。

多すぎる……。

でも、比率でいえば、1/3というところで、そう考えればそんなに多くはないですよね。上記ゲストの中で新登場のものは『ナイショのひめねこ倶楽部』だけでしょうか。杏仁女学院に転校してきた中ノ瀬桃がヒロイン。幼なじみ? の生徒会長が突然生えてきたヒゲに困ってるという。その原因、生徒会室の主、猫の神さま? 花梨の呪い? 嫌がらせ? だというんですね。ヒロイン桃にだけは花梨が見える。ゆえに、生徒会からも花梨からも請われて、生徒会に入ることになった? みたいな話であります。可愛いキャラクター、学園学院ものの花形といえば生徒会。そして、キュートな神さま。面白くなるかは、これからかと思います。

新連載は『太陽くんの受難』、最終回は『ひかるファンファーレ』。『気分は上々』は次号最終回が予告されて、『Boy’sたいむ』も、ひろむの正体が置島にばれてと、佳境であります。

『ひかるファンファーレ』は、音楽ものが次々と登場してきたなかでの生き残りでした。チューバに配属されてしまった女の子の話で、ああ、希望どおりにいかないというのは実に吹奏楽部らしい、でもって、吹いているうちにだんだんその楽器のこと好きになっていくっていうのもらしくって、結構好きだったんです。やっぱり、なんのかんのいいながらも、自分の楽器、好きになって、それで一生懸命練習したりっていう、そういうの見るのはいいものですよ。最終話は、チューバがもう一台増えて、そして新入生を予感させる、そんな広がりをもったものでした。悪くないなって、だってひかるの成長が描かれているからと、そんな風に思ったんですね。吹奏楽部の青春、楽しかった。そんな彼女らの様子を引退まで見届けることができなかったのは残念だけれども、最後にいい笑顔で終わったというのはとてもよかったなと思っています。

『中2限定!?ガールズトーク』、先生に恋している女の子の話ですが、これがわりと嫌いじゃありません。今回は百合子先生がブルマで登場。なんか飛び道具っぽいんですけど、百合子先生が気になるヒカル先生、しかしその思いは一方通行っぽくて、という、そんなところなどが気にいっている模様です。

『でり研』もなかなかにいい感じ。今回は中国茶が取り上げられたけど、でもメインという感じではありませんでした。メインは大仏くんと海原さんの関係が誤解されるという話。いや、でもこれ、全部海原さんが悪いよ。お茶こぼしたのはしかたないとしても、その前のはもうね、自業自得ですよ姉さん。しかし、部長南和穂、彼女の微妙な警告、そして落ちの落ちが番外編ではたされるというの。こういうのも面白い。だんだんとキャラクターが舞台が暖まってきて、動きが出てきたなって。面白くなってきました。

『ちょいのり。』も結構気にいってます。なんと今回はレース。いのりを取り合って、右橋さんと左河さんが競争する。姉と兄に頼ってっていう、その微妙さがいい感じ。というか、左河さん。兄貴が自宅で警備を仕事にしてること、簡単にいっちゃっていいのか? レースといっても、法定速度厳守とか、こういう微温的なところがよくてですね、それで結局仲よくなるんだろうなって思える、そんなところがいいのでした。

『みちるダイナマイト!』のせいだとはいわないけれど、ちょっとSGが欲しい。いや、買いませんけど。でもって今回、ライブ中にテレビがきますとのアナウンス。これはやられました。私も騙された。でも、これ、ただ騙したってだけじゃなくて、あとに繋がってるっていう、そのもっていきかたがよかったです。

ところでさ、あのみちるの舞台が怖いっていうのね、あんなのあるの? っていうと、いや、実際あるらしいですね。私の知ってるケースはオペラ歌手なんですけど、世界的な人なんだけど、名前はちょっと思い出されないだけど、もう俺は駄目だ、っていって、舞台に出られないのを無理矢理押し出すんだそうで。そうしたらきっちり演じて歌って帰ってくる。で、また駄目だ嫌だってなって、でまた無理矢理舞台に押し出したら、またちゃんと演じて帰ってくる。面白いものだと思います。みちるもおそらくはその口なんでしょうね。

『あまぞねす?』、これ気にいっています。うん、ブログは、自分の書いてるのが面白いかどうか、わからんようになるよね。というか、これ面白い、きっと読者も喜んでくれるね! とか思ったこと一度たりともないね。でもいいねん。ブログはなんの役に立たなくてもいいらしいから。

今回はブログというよりも、日記で自分を振り返るというような回でした。なんで今の会社、業種を選んだのかというようなこと描かれていて、これいいかげんに見えるけど、でも実際はこんなもんだったりしますよね。それでいい会社にめぐりあえたっていうんだから、幸いですよ。ああ、私もこんな会社にやとわれて、天才小学生の先輩とか欲しいよ。忙しくても容赦なくお茶の時間がくるとか、こういうのも面白くて、なんか理想的職場の漫画なんだけど、理想的だけに憧れてしまうのかも知れませんね。で、どうにも書くことがないときの対処法。ああ、それは私も知りたいです。切実に知りたいところです。

『トラウムメディカル8.5』、気にいってる漫画です。抱き締められるアルバちゃん。でもって、否定的なこというと夢がドロドロになるんだ。父と娘の話。ちょっと気持ちが通った? でもすぐにすれ違った? なんだか切ない話でもあるけれど、反発していても父親は大切、父親からしても娘は心配。どちらも素直になれないのかなあ。そしてそれはアルバにとっても同じなのかなあと、その素直になるっていうことの気恥かしさみたいなのね、じわじわ伝わってきて、よかった。でもって、面白かったです。

『パドラーズハイ』、学校を出て、ラフティングの専門店にいく話。パドルにチーム名いれるという、そのチーム名を決めるところからはじまって、自分たちに必要なのはなんだろうと考えて試してみる、そういう段々に深みに入っていくところ、楽しいです。なんでもそうなんだけれど、やっぱり楽しげにものごとに取り組んでいる様子というのは、見ていて嬉しくなるものだと思います。それでこの漫画には、楽しそうな態度、気持ちがあふれていて、だから好きなんだと思うのですね。自作のパドルケース背負った三人の姿、それもまた溌剌として魅力的でありました。

『すいーとプロミス』、従姉がやばいっていうね。子供のころにかわしたケッコンの約束を真に受けて、ストーカーまがいの活躍見せるという綾姉。素敵すぎます。でもって、学校で再開。これは、なかなかに強敵で、それこそ36番的な味をかもし出してくれるのかと、ちょっと期待してしまう展開でした。

『コミカプ』、なんだろう、ちょっと感動してしまった。今は「地味だけどいい話」を守れるだけのゆとりがないっていうのは、多くの雑誌、出版者に共通の事情なんだろうなあ、というのはいいとして、トリッキーな手段に訴えようというチーちゃんに、皆が、私が求めているものは違うんだよって真正面から告げるういちゃん。そしてチーちゃんの選んだ展開の、その場面に、前段となる様子はほとんどなかったにもかかわらず、ぐっと感じるものがあって、それはその場面を選択する彼の心情が思い起こされたからなんだろうなって思います。なんだかいい話。きっといい方向に動いて欲しいな、そんなこと思わせる話でありました。

『Boy’sたいむ』は、やっぱり置島、気付いてたんですね。ショックだったのは、男のひろむが好きだったのに、ってわけじゃなかったんですね。でもって、今回は置島のうろたえ、どたばたするそんな姿がこっけいで、でもひろむを守ろうとする、ほんといいやつですよね。これ、結局は置島の純情がひろむに通じるんでしょうか。どうなるんだろう。この状況で続くなら嬉しいこと。でもって、置島の恋が成就するといいなあなんて思っています。

『放課後のアインシュタイン』、他誌からのゲストですが、キャラクターひとりひとりの個性や状況説明するのに、今ではなく、過去の話を持ってきた。三人が出会ったころの状況。まだ友達ではなかったころの話。先生ともまだ出会っていなかった。そんな時分の話は実に新鮮で、今とは違う関係の温度、態度もろもろに、なんだか違った横顔見るような、そんな気持ちになりました。

『レーカン!』、これ、怖い、怖いから。幽霊が見えてしまう女の子、天海の話。踏切に引き込まれたり、脚つかまれたり、幽霊もいいもんだなあっていう気にはなれない、実に怖い状況ですよ。でも、それでも怖いばかりでない。ちょっとの怖さはアクセントとなって、ヒロインの人となりや、(結果的に)彼女を見守って手助けした井上の活躍を彩ってくれています。その印象が鮮かだから読んでいても面白い。そんな風に思っています。

  • 『まんがタイムジャンボ』第16巻第4号(2010年4月号)

2010年3月3日水曜日

はなまる幼稚園

 はなまる幼稚園』、アニメになりましたね。って、はじまったのはもうずいぶん前のこと。すでに第8話が終わって、つまり折り返しはとうに過ぎてしまっているのですね。さて、このアニメ、うちでは好評です。今私が見てるアニメはこれと『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』だけなのですが、3歳児がふんふんいいながら見るのは『はなまる幼稚園』。いや、『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』も見てるのかも知れないけど、やっぱり年代が近い子供が元気に走りまわってたりする『はなまる幼稚園』のほうが楽しいのかも知れません。でもって、これ、穏当な表現、罪のない感じにあふれているものですから、安心して子供に見せられる。そういうところがじいさんばあさんにもうけているみたいです。

漫画がアニメになるときって、結構おそろしいものがありまして、ええ、『はなまる幼稚園』がアニメになるって聞いたとき、ちょっとおそれたわけですよ。制作はGAINAX。ああ、それならアニメの質においては心配なさそうと思ったけれど、なにぶん私はアニメからはなれて長い。よくわからなくなってるわけです。はたしてGAINAXは原作を大きく変更するタイプなのか。変更するなら、どんな変更がされるのか。でもって実際はじまってみれば、原作の雰囲気を大切にしたもので、ああこれはすごくありがたい。作りも丁寧だし、遊びのようなもの、ほら世界が終わるって時にセカンドインパクトとかいってたでしょ、ああいうのもほどほどに抑えてくれてるし、これはいいなって思ったのでした。

でもって、アニメでは幼稚園の先生が増えました。いやね、川代先生ですよ。あれ? 原作にいたっけ? アニメオリジナル? いやあ、それ実にいい仕事! そう思ってたら、いたんですね、あらー。実は原作、買ってるんですけど、全部読みきれてなくて、最近、ここ一年二年くらいですかね、買っている漫画の消化ができなくなってしまっていて、こないだ7.5が出たのを知って、買ってきて、全巻ひと揃いにしてみて、ああ、読んでないのがあるなって。それで今読むと漫画の復習をアニメでするみたいになってしまうから、再読はちょっと待とう。新鮮さをもってアニメに取り組みたい。

今、私はアニメをほとんど見なくなって、けれど視聴時間はわりと多めです。『ソ・ラ・ノ・ヲ・ト』についてでもいってましたけど、ちょっと暇ができたら見てる和声の実施するときなど、頭が煮えてしまうので、BGVっていうんでしょうか、いろいろ流しているのですが、そういうときにアニメはなかなかによいものです。で、『はなまる幼稚園』もそんな感じに見ていて、ちょっとした合間に、作業のおともに。で、こうやって見てると、ただ一回だけさらっと見るのとは違う、じっくりと見て感じて、楽しいな、好きだなと思えてくるのです。

私は、漫画に関しては手を広げすぎてしまいましたね。昔は、好きだな、いいな、と思った漫画は折に読み返して、よりいっそう好きになる、好きを深めていく、そんな感じであったのにと、今の自分のありようを省みて、さみしく思っています。『はなまる幼稚園』とかね、たくさん積み上がったものを片付ける、そんな読み方の似合う漫画じゃないわけです。それこそ、折に読み返したくなる。読んでほっとして、いいな、そう思って、もっと好きになる。そんなテイストの漫画。私は、こういう漫画の方がきっと好きだな。だなんて思うものですから、漫画を粗末に読んでしまっている今のスタイル、ちょっとそいつを変えないといけないな。なんて思ったりしているのでした。

ところで、本日3月3日は小梅ちゃんの誕生日だそうです。おめでとう!

  • 勇人『はなまる幼稚園』第1巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2007年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第2巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2007年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第3巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2008年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第4巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2008年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第5巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2009年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第6巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2009年。
  • 勇人『はなまる幼稚園』第7巻 (ヤングガンガンコミックス) 東京:スクウェア・エニックス,2009年。

CD

Blu-ray Disc

DVD

2010年3月2日火曜日

『まんがホーム』2010年4月号

『まんがホーム』2010年4月号、発売です。今月号、今の『ホーム』はかなり面白いのではないかと思える、そんな誌面でありました。中盤がですね、充実しているなと思えるのですよ。新しく始まった、そんな漫画も落ち着きながら定着して、安定して読めるようになってきてるなという印象です。実際、中盤といってるそこには、他誌からのゲストがあったり、まだ連載にいたらないゲストがあったり、いや、これは厳密には中盤を過ぎたあたりなのかな? けど、それらも充分に面白くて、今の『ホーム』はよいなと、そんな感想を持った4月号でした。

さて、今月はゲスト多めです。『うのはな3姉妹』が他誌からのゲスト、『ゆとりの手もかりたい』と『こむぎみっくす』、『じゃじゃプリ!』が連続ゲスト! そして『天国のススメ!』、『ときめけ!女塾』がスペシャルゲストです。で、『まりかちゃん乙』が新連載なのかな。これらゲストのうち、『天国のススメ!』、『ゆとりの手もかりたい』が連載に昇格するそうです。

今回のゲスト、全部好きで楽しみに読んでいます。『うのはな3姉妹』は安定して面白いし、『ゆとりの手もかりたい』、『こむぎみっくす』はそれぞれ違ったキャラクターの可愛さ打ち出して、そしてそこにちょっとシニカル、人の悪さみたいな味を加えてるところがよくてですね、そしてなにより皆仲がいいっていうところが素晴しい。『ゆとりの』は、天の声とでもいったらいいんでしょうか、ゆとりやお嬢様のすることにつっこみが入る、そのテンションや見守ってるような様子が気にいっています。『こむぎみっくす』は、めーぷるがめちゃくちゃ可愛い! これは家族を描いてあたたかで、読んでいてちょっと仕合わせな気分になれる。いい漫画であると思います。

『じゃじゃプリ!』は、よく飼い馴らされた亮の健気に世話を焼く様子が見ていてすごく心地よい漫画です。背のちっこい暴れものふみかも当然魅力的で、ガキ大将だった、今も元気はつらつ。その元気や活発に振る舞う原動力はなになのか、それが自然と語られた今回、とてもよかったです。また、眼鏡をかけた一コマ、おおっと間違えた、一度だけ泣いたという、その一コマ、ぐっと胸に迫るものがあって、なんかこういう感情に訴える強い表現があったかと思えば、静かながら多くを語るような表現もあり、そのバランスがとてもよいです。

『天国のススメ!』は緑の妖精が登場して、なんかすごい一発ねたっぽいキャラクターでありますよ。けれど、この妖精をもって、太一の特殊能力、十子の強烈なアプローチ、お婆ちゃんの可愛さ描かれて、そしてほのぼの人情ものとしての味わい、これがこの漫画最大の魅力である、ひいては作者の持ち味であるのだろうと思わされる展開でした。

『ときめけ!女塾』は、最後に、続くとあったのを見て、おお、続くのか。ちょっと嬉しく思っています。これ、ナンセンスではあるんだけど、ちらりと夫婦仲のよさみたいなの描かれたりしてたでしょう。そういうところいいなって思ってまして、結構気にいってるのです。と思ったら、今回はナンセンス一辺倒だった。でもって、塾長交代の危機ときた。これ、息子の塾長返り咲きはないのかな。しかし、この息子の扱われ方の酷さ。これがもう最高に面白かったです。現金な人たちといいますかね、その変わり身のはやさ。見事でありました。

さて、以前から芳文社では眼鏡がブームだったりするのか、みたいなこといってましたが、今回のホームは眼鏡多め? 『紫乃先生美録』みたいにレギュラーで眼鏡があるかと思えば、『となりのなにげさん』扉で眼鏡、『つくしまっすぐライフ!』はレギュラーで眼鏡ですけど、続く『東京!』が扉で眼鏡、『じゃじゃプリ!』劇中で眼鏡。なんということでしょう。一応断っておきますが、眼鏡が魅力的だから、今月の『ホーム』が素晴しいといってるわけではないです。

『三日月の蜜』、台詞を軸に展開される、そんな感じかと思えば、だんだんに言葉少なになっていって、表情の変化、間、それらが伝えるふたりの思いが切々として、佐倉のわだかまり、対して桃子は底が知れず、そのふたりの様子にはどきどきさせられっぱなしです。この漫画、辛気臭いといえば辛気臭いのですが、その辛気臭さがたまりません。もう大好きです。

『横浜物語』、ああ、これは面白いよ。隣に住んでいる女。雨の日にベランダを越えて布団を取り入れてくれた、そんな変な女なんだけれど、主人公はなんだかちょっとずつひかれているようで、しかしそれは相手の思う壺なのか? 変な隣人ものかと思ったら、危ない隣人ものなのではないかという今回のラストに、興味ががぜん高まって、これは面白いよ。一気に評価逆転です。

つくしまっすぐライフ!』は、クマの着ぐるみパジャマ、可愛いな! と思ったら、それ本編にちゃんと関連がありまして、なるほど。なずなはすっかり五行さんと仲良くなってるんだなっていう、しかし片や社会人、片や学生というジレンマ? ちょっと年の離れたカップルもの、しかもものすごく健全な、その素朴なお付き合いの様子がいいのだと思うのですね。ホワイトデーのお返し。クマのかっこうで一緒に歩く。そのいちいちがおかしくて、けれどおかしいながらもよいのでした。

『東京!』は、いや、もう、扉が、扉が。今回は、ちいさなたまが大人っぽく見られたいと思う、そんな気持ちをぐーっと一本続けて描きながら、その合間合間に他の登場人物のエピソードも盛り込んで、このにぎやかさが好きです。秋葉原正親。渋谷とともに電器店にいく、それってデートなのか? 仲がいいなあ君ら。この渋谷の秋葉原に対する懐っこさがもう大好きで、でもって秋葉原、美少年だなおい。美少年大好き。本編のラスト、皆にかまわれたたまですけど、そのままがいいよという、そのあるがままがいいよという、こういうのもまた好きなんですよね。楽しく、そしていい話でありました。

  • 『まんがホーム』第24巻第4号(2010年4月号)

2010年3月1日月曜日

クイズマジックアカデミー — マジカルダイアリー

 先日書店に寄ったときのこと。書棚を眺めていたところ、なんと『クイズマジックアカデミー』のコミックスが出ています。わお、漫画になってたんだ。手にとってみれば、表紙になにやら見覚えが。あああ、作者が荒木風羽。これは買うしかない。買うんですね。今はもうプレイしていないのだけれど、興味のあるゲームであることには違いなく、ゆるく情報収集もしています。特にせんだって『クイズマジックアカデミーDS — 二つの時空石』が発売されたところときています。欲しいかな、でも遊ぶ時間ないよな、どうしようかな、と思ってた。ええ、漫画くらいなら即座に買っちゃう。それだけ気持ちが暖まっていたのですね。

それでもって、荒木風羽でありますから。『スキっ!キライっ!』が好きだった。『そして僕らは家族になる』も楽しみに読んでいたし、『はなまるっ!』も読んだ。ええ、作者の名前で買う、それくらいに好きな作家であるのですね。

そして、漫画本編です。主人公はルキア。けれど彼女の物語が描かれるというよりも、むしろルキアは狂言回しとしての役割りを担っていまして、ルキアが他のキャラクターに関わることで、アカデミーの生徒や教師の個性が描かれていくというような構成であるのでした。基本的に小さなエピソードの積み重ねです。印象に残るキャラクターはシャロン。対してサンダーズやタイガ、ラスクあたりは影が薄い。なんて風に感じたのですが、これは私の偏見込みの意見かも知れません。第1話から登場のクララ、なかなかにいいポジションにつけてるじゃん、みたいには思ったのだけど、偏った私は、どこかクララはもっと描かれて当然だと思っているような節があったのでしょう。ゆえに、クララ出てこないなあという印象を持ってしまった。やはりどこか偏見があるようです。

実際に数えてみたわけではありませんが、キャラクターはバランスよく出てきているとは思うのですね。どのキャラクターのファンでも満足できる、そんな見せ場が用意されているというような感じです。でも、読者層がそうなのかな? 女子キャラクター、それからアメリア先生の活躍は目立っていたような気はします。で、私にとって特に印象深かったのがシャロンであったと。ええ、シャロン大好きです。作者もシャロンのこと好きなのかな? なんて思ってしまうのもやっぱり偏見のなせる技かも知れません。

キャラクターについての説明に紙数はついやされておらず、だからQMAを知らないという人には少々とっつきにくいかも知れません。けれど、そんなにわかりにくいキャラづけされてるわけではないし、読んでればわかってくるんじゃないかな。だから、QMAは知らない、でも荒木風羽は好きという人にも楽しめる余地はあると思います。QMAものとしての楽しみと、荒木風羽の漫画としての楽しみ、それぞれにそれぞれの魅力があるから、どちらかが好きなら楽しく読めると思われて、そして両方が好きならなおさらというものでしょう。荒木風羽風味のQMA。ええ、大変楽しく読めました。