2011年6月12日日曜日

田中さんちの白米ちゃん

 こんな漫画も描いてらしたんですね。『田中さんちの白米ちゃん』。作者は池尻エリクソン。ちょっと個性的な絵柄、そしてネタがよく練れている。最近はやりのラインではないんだけど、漫画としては抜群に面白い。そんな漫画を描く人と思っていたものでしたから、単行本が出てるとなれば買わないわけにはいかないですよね。どんな漫画であるか、表紙を見てもちょっとわからないのだけど、池尻エリクソンなら間違いあるまい。それくらいの安心感ある作家であります。だからぜひ売れて欲しい。これを足掛かりとして、ぐーっと伸びていただきたい。そう思っているのです。

さて、『田中さんちの白米ちゃん』、これすごくいいですね。食卓擬人化ものとでもいったらいいのかな。主人公は、田中さんのうちに住んでいる白米ちゃん。秋田のお米。スーパーで超特価で売られてたことが決め手になって、田中さんに選ばれた。なんていうと、ちょっとわびしい感じもしますけれど、読んでみれば白米ちゃんが明るくいい子で、そんなわびしさなんて、まったくもって皆無なんですね。白米ちゃんは、みそ汁ちゃんと仲良しで、食卓に並ぶみんなは、おいしく作ってくれる田中さんのことが大好きで、というほのぼのとした味わいがすごくいい。で、さすがは池尻エリクソンといったところでしょうか、やっぱり可愛いだけじゃない。ちょっとシュールだったり、ちょっとナンセンスだったり、そしてシニカルだったり。いや、面白いですよ。表紙、カバーをとっぱらった下にあるおまけの漫画、その時点で笑っちゃったくらい。全然内容もキャラクターも把握してない時点でおかしいっていうんですから、漫画としての基本的な面白さ、それはもう揺るぎないものがあります。

これまで何タイトルかこの人の漫画を見てきましたけど、キャラクターの可愛さという点においては、この漫画が一番だなって思います。万人に通じる、そんなマスコット的な可愛さがあって、子供が見ても喜びそう。内容もシンプルだし、するするとスムーズに読めて、そんなところに気の利いたネタが投入されるものだから、くすりと笑ってしまうんですね。しかし、納豆の威力がすごい。あの絵柄の強烈さでもって、どんな状態からでもオチに持ち込める、そんなキャラクター。白米、みそ汁はじめ、他のキャラクターは可愛かったりするのに、納豆だけなぜこんなに!? と思うくらいの扱いで、でも納豆の特徴というかはよく表現されてるようにも思うのですね。

この漫画の登場人物は基本食べ物なので、食べられてしまう運命にあるというのがなんだかシュールで、まあたまにこぼれてしまったりもするんですけど、みそ汁ちゃーん! でもそんな不幸な事故があろうとも、次の食卓にはちゃんと帰ってくるっていうのが面白いんですね。いや、たまにシチューに汁物の座奪われたりして、食卓にのれないこと、悔しがってたりするんですけども。ともあれ、こんな風に自分がおいしく調理されて、食べてもらって、ということをしあわせと感じている食べ物たちの様子、それは子供のころに聞かされた、お米には神様がいるから大事に食べないといけない、そうしたことを思い出させてくれまして、ええ、なんだか、そういう日本の感性みたいなものが通じてるなって思ったりもするのですね。

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