2011年6月14日火曜日

魔法少女おりこ☆マギカ

  魔法少女おりこ☆マギカ』、完結しましたね。アニメよりも陰鬱で、アニメよりも残虐で、癖のある絵柄、タッチに多少の読みにくさを感じつつも、一気にラストまで読み切ってしまって、いや、このあたりはさすがだと思います。魔法少女殺しをしている謎の魔法少女。その理由はなんなのか。第1巻ではそれが明かされないままに、そしてこの第2巻で織莉子の行動の根幹にあるもの、それが語られて、なるほど、織莉子にも充分に理があるわけだと知らされて、しかし、それでわかりあえないというのが悲しい。いや、相手の思いをわかってしまったからこそ、歩み寄ることができない、そういう話だったのかも知れません。

魔法少女になったことで、世界の滅びる瞬間を予見してしまった織莉子。彼女なりにこの世界を救う方法を考えた結果、鹿目まどかの抹殺が選択された。仲間のキリカとともに、まどか抹殺に動く織莉子。対し、まどかを死なせないために戦う暁美ほむら。この対立は見事であったと思います。まどかというひとりの少女の命よりも世界の存続することを重視する織莉子と、この世界の存続よりもまどかひとりの価値を重く見ているほむらと、完全に違っている価値観がために、ある種誰よりも近しく問題を共有しあえているというのに、ともにその問題に対することができないんですね。こうした価値観の対立は、物語を劇的に盛り上げて — 、どちらかが正義ではないんです。大切に思っていること、優先するものが違っているだけで、対立する必要なんてないのに、対立してしまう。そして、そのどちらもが、少しずつ方法を誤っている。目的のためになりふりかまわないふたりのかたくなさ、それが物語を悲劇的な結末に向けて後押ししていた、そう思うのです。

しかし、このわかりあえないということ。アニメにもこうした要素はありましたが、それをより一層に強く押し出していたのが『おりこ☆マギカ』であったと思います。そのわかりあえなさは、ほむらと織莉子に顕著で、そしてほむらとまどかの間にも見ることができて、このまどかの、そしてさやかの思い動いたことが生んだ結末 — 。その直前に、これまでわかりあえることのなかった魔法少女たち、彼女らの共闘し、ともに問題を乗り越えることのできた、そうした様子が描かれただけにショッキングで、ああ、なんでまどか、あなたはそう足手まといなの。私が絶望しそうになってしまったのでした。

けれど、こうして足手まといにもなってしまうところ。それぞれに、それぞれの動因、彼女らを動かす意識があるいうことが、この漫画、『まどか☆マギカ』のシリーズの面白さを支えているのだな、そう思わされました。この『おりこ☆マギカ』の物語は、ほむらの旅の途中、ひとつの可能性に過ぎない。そうでありながら、この一回を生きる織莉子たちにとっては、唯一の可能性であった。それだけに、最後に悲願を遂げた織莉子の後悔は痛ましく、それだけに最後の場面、一種救いと感じさせる明るさは、読者にとっても救いとなった。そう思わずにはおられないのですね。

  • ハノカゲ『魔法少女まどか☆マギカ』第1巻 Magica Quartet原作 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2011年。
  • ハノカゲ『魔法少女まどか☆マギカ』第2巻 Magica Quartet原作 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2011年。
  • ハノカゲ『魔法少女まどか☆マギカ』第3巻 Magica Quartet原作 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2011年。
  • ムラ黒江『魔法少女おりこ☆マギカ』第1巻 Magica Quartet原案 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2011年。
  • ムラ黒江『魔法少女おりこ☆マギカ』第2巻 Magica Quartet原案 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2011年。

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