2011年12月16日金曜日

はぢがーる

 こないだ、この『はぢがーる』っていうのはどうですか、と聞かれまして、ええと、そうねえ、女の子が天使だったかに恋愛課題を強いられて、はずかしい目にあうという漫画です。最初のころはそれほど直撃しませんでしたけど、最近は目覚しい。そんな風に答えたんですね。 いや、もう、実際、そんな感じ。最初のころは、おそるおそる、これはどないだろう、ちょっと踏み加減を確かめ確かめ歩いていくかのようにして読んでいたんです。けど、そんな時期は完全に過ぎ去りましたね。今はもう足裏を全部、踏み締めるようにして読んでる。これ面白い、そんな感触をフルに掴むように読んでいるんですね。

そんなわけで、女の子が愛の神様の卵の提示する恋愛課題に心底困りながらも、一生懸命クリアしていくという話です。ヒロインは紗江、見た目にクール、まさしく高嶺の花といった美少女であるのですが、いやはや、実際はちょっと違う。極端な照れ屋さん。男嫌いどころか、恥ずかしくてコミュニケーションもままならない、そんな人であります。話すのさえもままならないのに、やれ抱き付けだとか、やれ間接キスをせよだとか、無理難題が提示されて、期限内に達成できなかったら一生男性に縁のない未来がやってきますから! ああ、そうか、私は知らずこうして提示されていた恋愛課題を達成できなかったから今もひとりなのか!

いや、私のことはどうでもいいんです。

最初のうちは、ちょっと無理矢理かなって思ってたんですよ。いや、実際無理矢理なんです。紗江が卵に選ばれた理由らしい理由もわからない。たまたま? それで将来の縁を賭けなければならない? ええーっ、理不尽だなあ! そんな風にも思ったんです。けど、この子が選ばれたのって、とにかく照れ屋だから、それだよな。神様の卵はドキドキで育つ。ええ、だから男の子に抱き付くだけで、心臓が壊れるんじゃないかってくらいにドキドキしてしまう、そんな紗江がうってつけだったってことでしょう。で、もうひとつ無理矢理っぽく感じたのは、そんな紗江にちょっとでも気の知れた男の子の友達がいるわけないじゃないですか。となると、身近な誰かってことになる。じゃあ、誰? クラスでそこそこ話ができなくもない、それくらいの、特段以前から好きだったり憧れたりしてたわけでもない、気の弱そうな、あるいは優しそうな男の子、本田涼。彼がターゲットになって、っていうか、たまたま目があったからだけだよな。でも、そんな特に特別でもなんでもなかった相手に、そうした恋愛的イベントを起こさせるとか、ちょっと可哀そうじゃん! みたいに思っていたんですね。

けど、違った。全然違った。最初はたまたま目があったから、目をあわせることができるくらいには身近だったというだけで本田くんだったのかも知れないですけど、課題を進めていくことで、どんどん特別になっていくんですよね。これはいいわ。本田くんが無難だから、じゃなくて、他の誰かじゃなくて本田くんじゃないと嫌だ、そうしたヒロインの欲求、意識が育ってきて、わあ、こうなるとめちゃくちゃ面白いな。実際、恋愛とか、こういうもんかもとも思う。最初はなんでもないはずだった相手が、ちょっとしたきっかけから意識するようになって、気付けば好きになってたみたいなプロセスが、恋愛課題のせいで短期間に無理矢理進行させられてるって感じ。で、本田くん、完全に特別になってしまった。誰でもよくなくなってしまった! これはいい! けど、1巻にはまだ収録されてないんか! 2巻が待たれる!

しかし、クールを装ってる紗江、この子、あの照れながらのハイテンションとか、めちゃくちゃ可愛いですよね。実際、こんな子がいたら好きにならずにいられないよな、なんて思ってたら、うわあ、表紙、カバーをめくった下に、下に! これはたまらん! これはたまりません! 完璧にやられてしまいました。

  • みやびあきの『はぢがーる』第1巻 (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ) 東京:芳文社,2011年。
  • 以下続刊

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