2013年8月16日金曜日

『まんがタイムきららミラク』2013年10月号

『まんがタイムきららミラク』2013年10月号、発売されました。表紙は『桜Trick』、海ですね、水着ですね、春香を中心に優と美月が水の底。手をとりあって、屈託なく笑っている春香と優、対しなんだかちょっと困ったような表情の美月。この表情の微妙さに、この人の肝心なところでの押しの弱さ、あるいは好きな人、春香と手を繋いでることへの嬉しいんだけど素直になれない、そうした気持ちがにじんでます。大変に可愛い人であります。

今月はゲスト、新作が多めです。

『ゆずりはコーポーレーション』。明日から高校生という柚莉葉に父が託した一千万。これ、ただのお小遣いではなく、起業ないしは資産運用を実践し学ぶための元金だっていうんですね。十倍にするまで帰ってきてはならない。きびしいなあ。柚莉葉は、これを父の会社を継ぐための試練と受け止めて、起業するつもりでいる。友達の薫と彩音を引き込んで、そう考える柚莉葉は、ちょっと寂しがりやだったり、あるいはちょっと弱気だったり、ええ、なんでもかんでも前向きというわけではない、そうしたところなどチャーミングでよかったです。彩音の得意とアイデアをもとに、起業をすることを決意。経理は薫に頼もう。そうしてきあがったのがゆずりはコーポーレーション。はたしてどんな風に展開していくのだろう。堅実というより、ちょっと冒険、一筋縄ではいかないんじゃないか。そうした予感させるところもよさそうです。

『あすみが丘SPS!』、『Lisa Step!』の奄美あまゆの新作ですね。今度は婦警さんですよ。あやとたまお、ふたりがヒロイン。真面目そう、というか常識のあるあやと、非常識といっていいと思う、天真爛漫ないしはやること無茶苦茶なたまお。けどたまおが不快と感じないのは、可愛げがあるからなんだろうなあ。いい大人だけど、決してすまして良識人ぶったりはしない、そういうところが魅力的。あと、やっぱり『あずまんが大王』的なるもの感じられて、ええ、きっとこの人は『あずまんが大王』、さらにいえばにゃも、ゆかり的なもの、それが好きなんだろうなあ、そう思わされたりもしたのでした。

『青春過剰Sisters』、女の子たちのこじらせ系青春物語、なんだそうですが、これ、姉妹もの。2年目という中弛みの時期に差し掛かった七草家の娘たち。主人公は三女の桔梗、高校2年生、川崎さんとやらに恋しちゃってるんですね。妹五女撫子は小学2年生、四女葛葉は中学2年生、いわゆる中二病的要素が一番強いのが葛葉ですね。姉ふたり、次女尾花は大学2年生、長女萩乃は社会人2年目。さすがに姉は余裕があって、けどそれはそれで桔梗の恋愛状況を面白がってるんですね。姉妹皆で桔梗の恋愛を応援する、というかむしろ邪魔してない? そうした中弛み姉妹の日常? 微妙にうまくいってる、いやいってないか、その微妙さがおかしかったです。

『アンネッタの散歩道』、これ面白いですよ。ダブリンに住むお嬢様、アンネッタ。病弱とのことで、自室から出られない。メイドのメアに監視されていて、ずっと横になってないといけない。ちょっと遊んでも駄目、口笛吹くのさえ駄目、退屈な暮らしが耐えがたい。そんな彼女が外の世界を垣間見るための手段が文通。そして文通の相手、メイヴは妖精だっていうんですね。妖精たちは人間との遭遇を怖れている。人と関わることは禁忌なんでしょうね。けれどメイヴは人と仲良くしたい。それが面白くないのが幼なじみのモリー。メイヴをがみがみ叱るんですが、それはメイヴが禁忌をやぶろうとしているから? あるいはアンネッタにひかれているメイヴに嫉妬してしまっている? いずれともとれる、そうしたところ、実にいい感じでした。

しかし、なにがいいかというと、ある種閉じた世界、発展や変化を嫌う妖精たちの社会で、異端者であるメイヴが自分の興味の広がっていく、その思いのままに新しい風を妖精社会にもたらそうとするところ。異端者である彼女を追放しながらも、彼女に学びの機会を与えてくれた長老。ただただ流されていくだけじゃない、自然のなりゆきと諦めるのではなく、自らの意思で危機を克服しようとするメイヴに、いわば妖精の世界の明日を託そうとしたのでしょう。自由を求めるアンネッタとメイヴ、状況は違えどどこか通じているふたりの気持ち、それが出会う時におこるだろうこと、それが楽しみでしかたありません。またふたりの手紙に綴られた思い、その詩的で夢や希望の込められた強さを感じさせるところなども素敵で、ええ、大変にロマンティック。なんだか泣けてくる、静かながらもしみじみ伝わるものがありました。

『ちとせ中トゥルーパーズ』、20年前に現われたAFS、異星人による浮遊構造物からやってくる害獣、というかムシ。それを駆除する係に所属する猪上さん。ムシが苦手で怖くて、なのに駆除係なんてのに立候補したのは、内気で引っ込み思案の自分を変えたかったから、というんですが、あんまりうまくいってなかったみたいです。そんな時に出会ったのが、浦川さゆり、新しく駆除係になったんですが、駆除技術小学生大会で優勝したという経歴の持ち主。けれどどうも実態は穏かでなくて、トリガーハッピー? いやちょっと違うっぽい。むしろもっと危なっかしい人でした。そんなふたりが秘密を共有して、バディになっていく? この出会いをきっかけに猪上さんも変わっていくのかも知れませんね。

『シロクロコミュニティ』、土砂崩れに巻き込まれて死にかけた少年、南森悠馬。死にかけたのは実際で、それが助かったのは奇妙な生物のおかげというんですね。真っ黒なやつ、それが胸に寄生していて、互いに死にかけていた悠馬とそいつが、命を繋ぐために、両者の命を共有したっていうんですね。その謎の生物は、とりあえず生物を見たら食おうとする? 物騒なやつだな。で、こいつの存在を知ってしまった金山奈央、そして加々美良子、食うの食わないのとやっぱり物騒、けどこれをきっけとして、悠馬はふたりの所属する超常現象研究サークルに入ることになるんですね。笹時雨未与、この人に興味持たれて、そして謎の生命体、UMAからウーマと名前も決まって、これからの奇妙な同居生活、そしてその観察がはじまるっていうんですね。

『まんなかノート』、女の子ふたりが交換日記をするっていうんですね。お隣同士のみちるとえーり。なるほど、違う学校に通ってるふたりの情報共有手段、それが交換日記、隣同士、向かい合わせのふたりの部屋のまんなかに位置するノート、だからまんなかなんですね。完璧といっていい、そんなえーりは生徒会で活躍、ラブレターもたくさんもらって、みちるはというとえーりに対して見栄を張ってしまうんですね。かと思ったら、えーりはえーりで、やたら泣き虫で寂しがり屋という、そういうところ可愛いですよね。学校でのみちるは、アイドル大好きの冴子、クールなのか単に人付き合いが苦手なだけなのか、茶川。ふたりとの学校生活、それをそのままに綴れずに、かくして後ろめたさは続く。けどいつか素直に自分のありのまま、伝えられる日がくるのかも知れませんね。

  • 『まんがタイムきららミラク』第2巻第10号(2013年10月号)

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