2014年4月15日火曜日

桜Trick

 桜Trick』、アニメになりましたね。って、遅いよ! もう半月も前に終わってるじゃん! って、うん、確かにそのとおりです。見ましたか? いえね、これが始まろうという時にですよ、未見の視聴者は、あの恐慌と狼狽をこれから味わうことになるのだろうなと、非常にわくわくしながら待っていたんです。いやあ、けどそんなには混乱きたすことはなかったようで、無事最終回を迎えることができました。わりと普通に受け入れられてたのかな? いやあ、よかったですよ。最初ですね、ちょっと胸とか脚とか腿とか、いろいろ、性的に描きすぎじゃないのかなあ、そう思ったりしたんですけど、いや実際、最終話に至るまでずっとそう思っていたんですけど、通して見れば、これはいいアニメだったな、そう思えるものが確かにあったのですね。

主人公は高山春香と園田優、これはもちろんそのとおりなのですが、桜舞う季節に、私たちは他の娘たちとは絶対しないことをしようよ、その一言からはじまったふたりの特別な関係。それからの1年間を12話かけて描いて、桜の季節に幕を引いた。ひとつ、大きな山場を迎えて終えようと思えば、こういう構成になるのは当たり前といえば当たり前とも思うのですが、春香や優たちの入学からはじまって、優の姉、美月の卒業を見送ることで終える、そのことが彼女らの置かれた状態をよく浮かび上がらせて、かつ美月の果たした役割、それが春香、優、ふたりの特別であるということ、その関係のベースにあるもの、それをしっかりと感じさせた、そう思うのです。

しかし、原作に忠実、そういっていいアニメ化でした。けれどアニメは原作とやはりその味わいを違えて、それは動きや声、音楽、色、演出もろもろ、情報量の増加もあるのだろうなと思うのですが、ただそれだけでもなかったと思う。見せようとするところが違ったのかなあ。原作だと、自分はより強く春香と優に注目していたように思う。彼女らの、今を惜しむ、そうした感触を強く感じていたように思う。それがアニメだと、美月の存在の強さ、彼女の春香に向けた思い、それが一層に感じられて、ともないその美月の思いの決着、その意味するところが濃密に出た、そんな感じだったのですね。大きなイベントとしての美月たち3年生の卒業、それが山場として終盤に配置されたことも大きいのかも。ええ、表の主人公春香と優があって、けれどそれと同じ重みでもって美月の物語があった。彼女もまたまぎれもないヒロインであった。そうした感触が強いのです。

この感じたものの違い、それはもう物語の行く末を知った上で見ていること、それもあるのかも知れませんね。だからまた改めて原作を読むと、また違った印象を得ることでしょう。そういう意味では、読み返すごとに、見直すごとに、得られるものが違う。読み手の状況が違えば、そこで感じられるものもまた変わるだろう。そうした多面性を持つ、そんな漫画なのかも知れません。ええ、アニメはその多面性に触れ、いくつもの輝きをすくいあげて、また違うありようをもったひとつのかたちとしてくれた。ええ、いいアニメ化だったと思います。

Blu-ray

DVD

引用

  • タチ『桜Trick』第1巻 (東京:芳文社,2012年),17頁。

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