2014年10月13日月曜日

機動戦士クロスボーン・ガンダム

  先日、KADOKAWAとDWANGOの経営統合を受けて電子書籍が半額、ってキャンペーンをやってましたが、さすが角川傘下、あれもこれも半額、ってなもんで、どれを買ったらいいかさっぱりわからぬ。そんな時、あ、クロスボーン・ガンダム、あれも角川じゃん、思い出しましてね、調べてみたら確かに半額。けれど結構な冊数。一度は躊躇したのですけれど、冊数があるだけにこの半額セール時に買うべきではないのか。ええ、買いました。まとめて全部、一気に購入しましたよ。

クロスボーン・ガンダムについては、ちょっと誤解があったんですね。まず一点。海賊のガンダム、ドクロの意匠つきというそのデザインから、ずっと色物だと思ってました。そうしたら、ああ、なんと、F91の続編にあたるとか! 知りませんでしたよ。ほんと、読んではじめて知りました。F91、見たことないんですよね。今からでも見ようかなあ。

作者がですね、長谷川裕一だったんですね。これは、電子書籍になった時に、新着案内で見て、あ! 驚いたんですね。長谷川裕一というと『マップス』の人。ああ、じゃあ、漫画としての面白さについては間違いあるまい、この時点ではまだいわゆるガンダムの正史に連なっているとは知らなかったんですが、まったくの別物ガンダムでも面白ければオッケー、そんな具合にまで気持ちが動いていました。

面白ければオッケーっていうの、ずいぶん自分も変わったなあ、というのは、もともとF91周辺に興味を持っていなかったのは、『逆襲のシャア』でシャアとアムロの『ガンダム』に一区切りついて、つまりそれ以降に出てきた『F91』には違和感を抱えていた、という気持ちの問題があったから。こうした前提からしたら、当然『クロスボーン・ガンダム』なんて受け入れられるものではなく、けれどそれが今では抵抗なく読めるようになったんですね。時の流れでしょうか。それとも『∀ガンダム』のおかげ? いずれにせよ、素直に楽しむことができたのは嬉しいことであります。

クロスボーン・ガンダム、昔はジョリー・ロジャー、ドクロマークつきのガンダムなんて! と思ってたのが、今は、これはこれでかっこいい! そう思えるのは、きっと魔王のせいです。胸にでっかいドクロがあしらわれたデザイン。そしてあの活躍に魅せられて、プラモデル欲しいな、なんて思ったりもしてたんですが、そうしたらクロスボーンX1の胸部にはドクロがないのね!? うおー、なんてこった。胸にドクロがつくのはX3か。けど、魔王に比べると地味と感じられて、いや、地味でいいんですけど、いやあ、それだけ魔王のデザインが秀逸だったってことなんでしょうね。

漫画本編について、なんにも書いてないや。海賊をやっているお尋ね者が実は人知れず、地球人類にとっての敵と戦っていたのだという設定。このケレン味いっぱいにきかせた物語。主人公はというと、『F91』から引き続いてのシーブックいやキンケドゥ・ナウ、そして本作の主人公トビア・アロナクス。メインはトビアなんですけど、キンケドゥの存在感はすごいですよね。F91からの因縁、キンケドゥとベラの関係を描きながら、トビアとベルナデットの物語をしっかり語りきる、そのしっかりさ加減はさすが長谷川裕一、そう思わざるを得ない代物で、舞台も木星圏にはじまり、最後には地球圏、そして地球にまで至って、ほんと、こんなのを見たい、そんな場面をどしどし見せてくれるところも見事でした。

個人的に残念だったのは、ネットで名台詞として流布されてたものを見て知ってしまっていたがために、本来なら結構ハラハラさせられる、そんなシーンの先が読めてしまっていたところでしょうか。どことは申しません。そして燃えたのは、カラス先生関連のイベントですね。いけ好かないおっさんでしたけど、この人はこの人で、自分のポリシーというものを明確に持って、表明し、そのポリシーに最後まで従った。そうした一貫性は、この人をただの敵方には収まらない、そんな魅力的な悪漢としていたと思うんですね。この人にはこの人の正義があったわけで、悪漢というのは本来おかしいわけですけれど、でもあのしぶとさ、あのふてぶてしさはたまらぬ魅力を湛えて、ライバルというにはちょっと違うポジションにある人です、主人公が正義というなら、愛すべき悪漢、そういうべきものになっていたと思うんですね。ほら、007にいうジョーズみたいな、ですね。

ちょっと、ネタバレになるかも知れないから、まだ読んでない人は、ここで回れ右して欲しい。捕えられたトビアが決闘させられるあのシーン。普通だったら、そんなのありえない、無茶苦茶だ、そういいたくなるような展開だったのに、それを滅茶苦茶にしなかったのは、事前に描かれたカラス、この人の存在あってのことだと思うんですね。普通に考えたら滅茶苦茶になりそうなものも、その前提にそれが可能と提示されてさえすれば問題なく成立する。ケレン味を荒唐無稽からいける展開に転換する、その見せ方のうまさ。それが、より漫画をスリリングに、燃えるものにしているのだなと、またも実感させられた本作。ほんと、長谷川裕一は漫画名手であります。

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