2014年11月3日月曜日

ハルソラ行進曲

 女子4人の工業高校生活を描いた『ハルソラ行進曲』。この女子たちがですね、皆それぞれにマイペースで、見ていてすごく楽しいんですよ。まずね、若乃、工作大好き、作業着ラブの女の子。工作よりも改造が好き。なんでもぱっぱか手早くやっつけちゃうんだけど、じっとしてられない性格がたたってか、やらなくていいことやって、それで結局減点になっちゃうタイプの、とにかく元気な女の子であります。この子に、ちょっと内気? やなぎと、常識人朱莉、そして距離が近いサヤ。それぞれの個性が見事にマリアージュして、この穏やかのんびりで、けれどいつもなにかおこりそうなワクワク感に溢れた、そんな工業高校ライフにすっかり引き込まれるようにして読んでいるのであります。

しかし、巻頭のカラーページ、みんなの出会いの風景終わって、いや、ほんと、若乃、朱莉、やなぎの頼りにならないことっていったら! ここで、すでに皆の基本のところがばっちりわかるんですが、次ですよ、次。皆の人となりを紹介するところ。サヤがですよ、ときどき距離が近い、雑誌ではそうあったのが、ときどき朱莉との距離が近いに変わってて、わーお、ピンポイントだわ、ピンポイントよ。しかも、朱莉への、じゃなく、朱莉との、双方向だわ!? 双方向なのよ! わーお! のっけからいやもう大騒ぎだったのであります。

サヤの朱莉への距離の近さっていうのがですよ、もうね、他の皆に比べて明らかにおかしいの。なんなの? 好きなの? 彼女の席を狙ってらっしゃるの? しかも朱莉がですよ? 男だらけの工業高校にあえて選んで入ってきたというのに、男子が苦手だっていう。ビクビクしちゃうんですね。そんな朱莉を、男たちから守ってくれるのがサヤ! もう、朱莉のナイトですよ。素敵! 朱莉もですよ、最初のうちはサヤの距離感に慣れずビクビクしてたというのに、それが夏休みくらいから? なんか自然にふたりの距離が近くなってる、そんな雰囲気が感じられて、いやもう、ほんと、とてもいい。ええ、みんながちょっとずつ距離を縮め、仲よくなっていく、そうした様子を一番わかりやすく感じさせてくれるのが、このふたりだと思うんですね。

そして若乃とやなぎ、このふたりもいいんですよね。ふたりとも補習仲間なんです。若乃は、最初にいったように、余計なことして、ほんとだったら出なくてよかったはずの補習に呼ばれてしまうタイプ。やなぎはというと、とにかく不器用で、うまく工作できない。若乃も先生も、なんかすごく心配して見守ってる、そんな印象がやたら強いんですが、でもこのやなぎという子、頑張る時には、すごく真摯に、真面目に、真っ直ぐに対象に向きあう、そんなところがあって、実にいいんです。いや、まあ、ぎりぎりまで頑張らないというか、可能なかぎり頑張ろうとしない、そんな子だったりもするんですけど。

ちょっとネガティブなやなぎ。もともと工業には興味がなかった。この学校の吹奏楽部に入りたくて進学先を選んだ、そんな子なんですけど、若乃のポジティブに引っ張られるようにして、工業の面白さ? 魅力? にも気付いていく。その過程は見ていて胸にしみるものがありました。

やなぎに限らないんですけどね、みんな、この学校で出会った友達、その影響受けて変わっていく、そんなところがあるのがすごくいいなって思っています。皆がね、意図するしないにかかわらず、相手の領域に働きかけて、またそれを受けて変化する、そうした余地を持っているんですね。もちろん変わらないところもあります。そうした根っこの個性、その子のらしさは保ちつつ、ちょっとずつ、よりよい、そう思える方向へと変化してく彼女らを見ていると、その将来、その行く末が楽しみになってくるんですね。みんな、自分と工業、工作との関係、そいつをしっかり見つめて、いい技術者に育っていってくれるといいなあ。やなぎは楽器のリペアマンかな? 若乃は工場を復活させるのかな? それとも新たな道を進むのかな? ほんと、いろいろ思う、想像してしまう、そういう気持ちが自然と膨らんでいくのです。

  • そと『ハルソラ行進曲』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2014年。
  • 以下続刊

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