2015年10月31日土曜日

ダ・ヴィンチ系女子高生

 そうでした、思い出しました。私が駒倉葛尾という作家と出会ったのは、『教師諸君!!』という漫画が最初で、その時も、趣味でおっさんや爺さんが罵り合う歴史まんがを描いていた旨、書かれておりました。ということ踏まえれば、この漫画こそは、作者の表現のルーツに立ち返る、そうしたものに他ならないのではないだろうか! ある意味、得意ジャンル? それだけに生き生きとしたおっさんたちの生態見て取ることができて、そのおっさんっていうのもレオナルド・ダ・ヴィンチやミケランジェロといったビッグネーム。ところが、これ、美術やなにかの大家というより、その当時の変わりものと出会いましたといった風。面白くってですね、そして時にちょっと感心させられるところなどあるのですね。

この漫画は、先にもいいましたように、レオナルド・ダ・ヴィンチなど、ルネサンス期にその才能を発揮した大芸術家探訪といった風味のある漫画であります。とはいえ、けれど、学習漫画といったような感じはなく、むしろかつての中世を脱し、文化芸術の花開かんとする時代の人々、その時代の風物に出会い、知る、そうした感触の方がより強く感じられて、そうしたところが面白いといった漫画なのでありますね。

主人公、黒中みどり、この子のキャラクターがいいのかも知れませんね。特段、ルネサンス期の事情に詳しいわけでなく、また美術、芸術に造形が深いわけでもない。今風、といっても、駒倉葛尾漫画の登場人物なので、本当の今風の女の子って感じでもないのですけど、なんのかんのいっても真面目で、なんのかんのいっても知的よね。ともあれ、普通の子みどりが、なんだかぷいっと昔のイタリアにタイムスリップしちゃって、そしてレオナルドと出会う。壮年のレオナルドに出会ったかと思えば、青年の、少年の、老年のと、時代もなにも飛び越えて、結構ランダムな感じで出会っていく、その時々のレオナルドのキャラクターの違いよう。若い頃の方が偏屈って、なんやねん、君! でもそんなレオナルドも、何度となく出会っているうちにクロナカと打ち解けて、なんだか年の離れた友達みたいになって、その関係、ちょっと気の置けないみたいな? それが悪くないんですよね。というか、レオナルドからしたら、クロナカはオカルトそのものだよなあ。

ルネサンスの頃には、ナイフもフォークもなかったとか、そういう当時あるあるネタ、なんか嬉しかったですね。そうなんですよ。昔の時代のもろもろ、女性というものの扱われ方とか、時代時代で変わる常識の違いも効いている。レオナルドの若い頃には認められなかった解剖が、ソフォニスバの時代にまで下れば、男ならできるようになっているとか、けれどそうなってくると、女だからと許されないことやら画題やらが問題になってきて、ほんと、こういうもので伝えてくれる時代時代の意識の違い、面白いし刺激的で、しかも出会う人、経験したものについて、クロナカ、持ち帰って調べるでしょう。その調べてる時にアドバイスくれる高階先輩とか司書教諭の若桑先生とかがまたよくって、しっかりした知識や当時のこと教えてくれたかと思えば、あるいは先生に顕著なんですけど、乙女ゲームの知識とか盛り込んでくれたりしましてね、なんだろう、結構カオス? けど、こうしたやりとりがあってこそでしょう、簡単に割り切ってわかったつもりになってはいけない、そうした過去と今の前提となるものの違いやら、同じように感じ、思うこともあるってことが、自然と伝わってくる、そんな風に思えてくるんですね。

しかし、クロナカ、この子が本当に魅力的。さっぱりしてて、度胸があって、そして男装がめちゃくちゃ可愛いの! ほんと、クロナカ、最高だと思う。そんなクロナカが直面する本当の貴婦人の実際とかね、このネタもほんと最高で、いや、もう、そらそうだよなあ! そして驚愕のカバー下。あ、なんか面白小ネタきちゃった? とか思ったら、違うのか! 最初はこういう設定だったのかー! まさしくヒロイン下剋上物語! いや、でも、若桑先生ならぬ高階みどり(仮名)、彼女も実に魅力的だと思いますよ。

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