2016年5月6日金曜日

あそびあそばせ

 『あそびあそばせ』、奇麗な表紙。黒のワンピース、赤い蝶ネクタイ。青い目、金髪の女の子が、手にはけん玉、仰向けにこちらを見上げて小さく微笑んでいる。そんな表紙の素敵さに目を奪われて、ああ、これはこうした美しい娘さんたちが、けん玉やトランプ、そうした昔ながらの遊びに興じて、きゃっきゃうふふと麗しい、そんな漫画に違いない。そう思って試し読み。いいですね、電子書籍の試し読みシステム。冒頭をさらっと見せてくれて、あまりに冒頭すぎても困るんですが、この漫画の場合、どういう漫画であるか、ちゃんと充分わかるだけ試し読みさせてくれまして、ん? あれ? なんかおかしくない? あれ? 麗し……、あれ? 奇麗可愛い……、ことなくなくない? あれー? と思っているうちに買ってしまってました。

いえね、漫画はじまって3ページ目には夢も幻想も打ち砕かれてしまってますからね。あれ? あの表紙の美人さん、そんなえらいことに!? え? 表紙、君よね? 君だよね? 狼狽しつつ答ひとつ返ってこようはずもない漫画に問いかけてしまう、そんな衝撃がありまして、いやあ、なんだこれ、すごいわ。両親が外国人、見た目が外国人、というので、転校初日から日本語わからないふりして、やりたい放題の女の子がいる。真面目でおとなしそうなのに、すごむとやたら怖いし、やるとなったら手加減なしな子がいる。そして、おっとりして、のんびりして、この漫画唯一の良心なのか、ほっと落ち着けるそんな子なのか? と思ったら、やっぱりなんかすごい顔してるし……、けっこうしれっと酷いこといったりするし。

ああ、この漫画に安らぎはないのかも知れない……。

昔ながらの遊びを追求する、そういう漫画を期待しても失敗しますよ。可愛い女の子たちがうんたらかんたら、というのも絶対的に違いますよ。じゃあ、なにを楽しめばいいのか、というと、やっぱり登場人物の酷さなんだと思います。いや、もう、すごいですよ? なんだ、この破壊的なコメディ! 過激な発想、過激な言動! この女の子たちを、破壊的に崩して描いて、その見た目、絵面の強烈さもまたすごくて、な、なんでまたそこまで過剰に!? もうほんと、つくづくすごいインパクトで、ページめくるごとに、コマを追うごとに爆発的な笑いのポイントが畳み込んでくる。いや、ほんと、油断してるとやられる! そんな類いの漫画。かと思えば、笑いの合間にほっとできる、心暖まる、そんなシーンがあったりして、ああ、きれいだ、ああ、なんと可愛らしい、と思ったらやられるから!

油断大敵ですよ。ほんと、あらゆるところに兵が伏せているのであります。

  • 涼川りん『あそびあそばせ』(ジェッツコミックス) 東京:白泉社,2016年。
  • 以下続刊

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