2016年11月1日火曜日

しましまライオン

 アフリカはサバンナに暮らす動物たちがもし人として生まれかわったら? ヒロイン縞崎まこは元シマウマの女の子。人になってみませんか? 今よりもきっと平穏な生活が送れますよと神様に誘われて、人になってみたというんですね。慣れない人の暮らし。けれどだんだんと順応してきて、それでも時には出てしまうシマウマ時代の習性、習慣。そんな彼女の隣人は同じく元動物の女の子で、元ライオンの来城いおん。今はもうお互いに人なんだから、狙う狙われるの間柄ではないのだけれど、それでも動物時代の感覚でじゃれあっている。そうしたところがおかしくて、いや、まこにとってはどうも死活問題だよ!?

これ、最初は『まんがタイムきららキャラット』に掲載された読み切りだったんです。基本は同じ。人になったシマウマの女の子が、人間世界で出会った女の子、それが元ライオンだったという話でした。細部に違いこそあれどその趣向はそのままに、多様な元動物の女の子登場させまして、よりにぎやかに、よりはなやかになった連載版。いおんがまこを追って人間世界にやってきた、その理由なんかも描かれましてね、そのもともとの理由、ああ、これいいじゃないの。純情いおんの素直になれないその様。それだけをつぶさに追うだけでも、充分に楽しめよう連載となっているのですね。

元動物の女の子たち。元ワニの和田新菜と元トリの雨野千鳥。このふたりは、もともと共生関係にあったので、人になった今でもすごく仲良し。ここに、いおんのライバル的存在、元ハイエナの灰島えりなが加わって、そしてまこの友達、元キリンの葉月凛奈も加わってと、ほんと、結構なコミュニティでありますよ。それぞれの力関係がね面白いんです。いおん、えりなは、その存在でもってまこにプレッシャーを与えてしまうと思えば、肉食ふたりをも圧倒する新菜の存在感とかね、ほんと、水辺最強! さすがワニだぜ! ほんと、面白い。そして凛奈なんですが、この子、もしかして人として生きていくことにかけては、この中で一番優れてるんじゃないの? 動物時代の習性にもとづくキャラづけあり。そこからはずれたキャラづけもありで、その多彩に展開される行動、魅力は見ていてすごく面白い。絵もきれい、キャラクターも可愛いというのですから、実に魅せてくれるコメディにしあがって、毎月の連載が楽しみなんですよ。

絵が魅力的というの、小柄な千鳥がすごくいいですよね。全身で感情を表現する彼女ですよ。小さい体をコマいっぱいに動かして、その大きな動作、袖余りもあいまって、もう最高、めちゃくちゃに可愛らしい。そんな彼女とクールで大人びた新菜のペアは、対照的ながらとてもお似合いで、ナイスカップリング反応です。とはいっても、百合とかね、そういう感じじゃないんですよ。親密な友達。友情? 家族みたい? うまい表現が見つからないのですが、やっぱり友達なのかなあ。でも普通の人の友達とは違う距離感があるように思います。

これは、彼女らの境遇のためかも知れないなんて思っています。人間世界に親はなく、家族もなく、だから元動物の子らを運命をともにした仲間として過ごしている。わからないことあったら、マニュアル頼りに皆で問題解決しようと頑張る。そうして生まれる近しさみたいなのが感じられる。千鳥と新菜はさらに特別な近しさがあるわけですが、それは長く連れ添ったゆえのものなのだろうなあ。だって、ふたりの人の生を選んだ理由とかさ、すごいよ。切れない縁みたいのがもともとあって、言葉にせずとも大切にしているものがあるってわかる。そんなふたりの関係はやっぱり魅力的なんです。そして、こうした関係の妙は、他の動物たちの間にもあって、なにかと対立しちゃうえりな、いおんにしても、不思議な仲間意識あって団結したりするでしょう? 後から凛奈が加わったのは、ひとりまこだけが草食獣という状況を是正するためなのかな? とか思ったりもしましたけど、こうして肉食の、草食の元動物娘たちの関係が、あちらで生じ、こちらで生じ、そこここでまた見える繋がりや理解がね、ほほえましくも愛おしい。ともに生きてる、暮らしてる、そんな感じがとてもいいんだって思える漫画なのです。

  • はなこ『しましまライオン』第1巻 (まんがタイムKRコミックス) 東京:芳文社,2016年。
  • 以下続刊

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